第51話 休息と助言
食べ終わったら、片付けを済ませる。
ちなみに、腹は六分目くらいにしておいた。
お腹いっぱいだと眠くなるし、動きも鈍くなるからだ。
「じゃあ、行くわよ」
「セリスさんや、少しのんびりしていこうよ」
「な、何を言ってるの? まだ演習中なのよ?」
「だからこそだよ。まだ先は長いし、地図を見る限り余裕はあるし。休憩を取れる時に、しっかり休憩を取ることも大事だと思う」
優秀な戦士は、休める時に休むとも教わってきた。
人は長い間、緊張の糸は続かない。
一度解いて緩め、また締め直す感覚だとライカさんは言ってたっけ。
何より……多分、カレンはまだ疲れてる。
「うむ、我も同意見だ。戦士の休息という本で読んだことがある。力を出すべき時に出す、そのための作法だとか」
「へぇ、二人が言うなら間違いなさそうね。カレンはどう思う?」
「その……まだ少し足が痛いので、休めると嬉しいです。ごめんなさい、大したことしてないのに」
「あっ……これは、気づかなかった私が悪いわね。それに、そんなことはないわ。そもそも回復役っていうのは、いざって時に魔力を温存するって習ったもの」
「そうそう、使わないに越したことはないってこと」
「でも、わたしも役に立ちたいですっ」
うーん、気にすることはないけど本人は気になるか。
カレンがなるべく魔力を使わずに攻撃をする方法……あっ、あれがいいか。
「カレン、後で少し試してほしいことがあるんだ」
「ユウマさん?」
「それができれば、カレンの望みは叶うかもしれない。でも、それはしっかり休憩を取ったら話……いいかな?」
「……はいっ、わかりました」
「決まりね。それじゃ、各自……三十分の休憩を取りましょう」
そして、それぞれ離れないように休息を取る。
俺はカレンの足を川につけるように言い、その隣に座った。
レオンは木に寄りかかり、セリスは温かいお茶を飲んでいるようだ。
「うぅー……冷たくて気持ちいいです」
「慣れない森での歩きだから疲れたよね。傷ならまだしも、疲れは魔法では癒せないし」
「そうなんですね……あの、さっきのって」
「うーんと、魔法ってどういう風に習った?」
「魔法ですか? ……自分の中ある魔力を具変化することって教わりました」
「そうそう、そういうこと。つまりは、想像することが威力や効率に繋がるわけなんだ。ちょっと見ててね」
俺は立ち上がり、小さな木の前で腕を前に出す。
「ウインドカッター」
俺が放った風の刃は小さな木を切り裂いた。
「今のは普通の魔法ですよね?」
「そうそう。例えば、今のが魔力を十使ったとしよう。次に——風刃剣!」
刀に風を纏わせ、同じように木に向けて放つと……風の刃で木が切断された。
「今のは……魔法ですか?」
「厳密にいうと、魔法剣って感じかな。使える人は、あんまり見たことないけど」
「す、すごいですっ……あれ? それと何の関係があるんですか?」
「今のは、さっきの三分の一くらいしか魔力を使ってない。刀が斬るというイメージを補完してくれたからだ」。
刀は斬るものという認識が俺の中にある。
それにより、魔力を効率化してくれた……ということらしい。
俺自身もエリスから教わっただけで、実は良くわかってない。
「……魔力が発動する際に、刀が具現化の手伝いをしてくれたってことですか?」
「おっ、俺より全然分かりやすいや。うん、その認識で合ってると思う。さて、俺が何が言いたいかわかった?」
「えっと、武器を使って魔法の補助を行う……そうすれば魔力の消費が減ったりする……あっ! わ、わかりましたっ!」
「そしたら、後は実戦で試すだけだね。幸い、これは演習なんだから気楽にいこう」
「はいっ、ありがとうございます!」
そう言い、晴れやかな表情になった。
さてさて、上手くいくと良いな。
その後はゆったりとし、休憩時間を終える。
「みんな、準備はいい? ……良さそうね。じゃあ、また私が先頭になるわ」
「よし、後半戦も頑張ろー!」
「おー!」
俺が拳を振り上げると、カレンが追随した。
それを見て、レオンがおろおろしていたが……意を決したらしい。
「お。おー?」
「ふふ、レオンは無理に合わせなくていいわよ」
「えへへ、そうですよー」
「あぁー、そういうものか」
俺はともかく、 いつの間にかレオンと二人の間に硬さがない。
きっと、こういうのも実習の狙いなんだなと思った。
国王陛下は、異種族間の関係を良くしようとしてるみたいだしね、
その後は順調に進んでいく。
たまに脱落してる生徒に出くわしたり、罠にかかった生徒を発見したり。
それらには、見回りの先生や冒険者がすぐにきて救助をしていた。
「結構、脱落者も多いのかしら?」
「そうみたいだね。多分、休憩とか取ってないんじゃない? 俺たちより後の班の人もいたし」
「急ぐあまりに失敗したってことね。ユウマの言う通りにして良かったわ」
「まあ、俺の場合は受け売りだから。俺の手柄ってわけじゃないよ」
それを教えてくれたのは師匠であり、先達である現場の兵士達だ。
それを伝えていくことが、教えられた者の役目だと思う。
「ふふ、そういうところは相変わらずね」
「ほんとですっ」
「ふっ、自分の力だと誇示しないか……見習わねばならんな」
「……何だかなぁ」
どうにも気恥ずかしくなり、俺は頭をぽりぽりとかくのだった。
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