第50話 和気あいあい
ひとまず、これで昼飯も確保できたので、昼食の準備を始める。
すでに下準備は出来ているので、あとは作って行くだけだ。
道中で手に入れた山菜やキノコなどもあるし。
「そういや、火属性を使える人はいないんだったね。いつもは魔石があるから忘れてたけど」
「今回は魔石も使っちゃいけないし、人の手でやるしかないわ」
「えっと、確か木の摩擦とかでやるって授業で言ってましたよね?」
「くく、ようやく我の出番というわけだ。そこで見ているが良い」
そう言い、レオンが数ある中から木を選び、ナイフを使ってサクサクと工作を行う。
そして木の棒を穴に入れて、レオンが勢いよく回すと……すぐに煙が出てくる。
「ウォォォォォォ!」
「おおっ! 流石は獣人の力!」
「よし、これで……ふぅー」
種火を用意していた場所に移し、息を吹きかけて行くと……火が燃え上がった。
「わぁ……早いです!」
「レオン、感謝するわ」
「ふんっ、我にかかればこんなものよ。ユウマにばかり良い格好はさせん」
「ぐぬぬ……流石に力では負けちゃうしなぁ」
「ふふ、どっちも凄いで良いじゃない。全く、これだから男の人は」
「えへへ、男の子ってそういうところありますよねっ」
俺とレオンは顔を見合わせて……少し気不味くなる。
そういや、こういう感じも俺にとっては初めてのことだ。
なるほど、友達っていうのも悪くないね。
「と、とりあえず、焼いていこうか」
「では、真ん中の火で野菜やキノコを炒めるわよ」
「魚は塩を振ったら串に刺して、周りを囲むようにしましょう」
そして、四人で協力してぱぱっと準備を済ませる。
炒め物はすぐに出来たので、後は魚が焼きあがるのを待つだけだ。
「では、今のうちに作戦会議でもするかしら?」
「後は、反省点とか」
「わたしは少し動きが硬いので、午後はそれをなくしたいです。ずっと怖くて……臆病でごめんなさい」
「それは私もよ。ようやく、力が抜けてきたけど」
「カレンはともかく、セリスの心配はいらなそうだね。大分、肩の力が抜けてきたし。カレンにしても、そもそも後衛だから臆病なことは悪いことじゃない」
どう考えても、猪突猛進だけのパーティーなんて怖すぎる。
一人が突出したなら、それを冷静に見れる人物も必要だと思う。
「そうなんですか?」
「そうそう。体が硬いのはともかく、恐れる人がいるのも大事だって教わったよ。そもそも、言い換えれば慎重って意味でもあるし」
「うむ、我も同意見だ。何より……パーティーを組んでいるのだから、そこは補えば良いのではないか」
「二人とも……えへへ、ありがとうございます。そっか、直したほうがいいけど無理することはないんですね」
「そういうこと。レオン、良いこと言うじゃん」
「う、うるさい!」
「そうよね、パーティーなんだから頼れば良いのね……よく覚えておくわ」
そんな会話をしてると、パチパチと良い音と香ばしい香りがしてくる。
それは、もうすぐ出来るという合図に間違いなかった。
「おっ、良い感じだね。レオン、食えそう?」
「ふむ……後、数分といったところか」
「それじゃあ、先に山菜とキノコ炒めを食べましょう」
皿に取り分けて、先に炒め物を食べる。
醤油を垂らしただけだが、キノコの味が出て美味い。
こういう探索では、上等な食事だ。
「……よし、良いだろう。もう、焼けたから食べて良いはずだ」
「やったぁ! 俺、これが良いかな!」
「むっ! 我が狙っていた物を!」
「ふふ、早い者勝ちなのだよ」
「ぐぬぬっ」
すると、二人から呆れた視線を向けられる。
「またやってるわよ」
「懲りない二人です」
「まあ、ユウマが獲ったから良しとしましょう」
「えへへ、でもこういうのって楽しいですね」
「ふふ、確かに。普段食べる時とは、また違ったものがあるわ」
「「……食べるか」」
そんな仲の良い二人を見て、俺達も言い争いを止めて食べ始める。
ちなみに、魚はほくほくでめちゃくちゃ美味しい。
きっとそれは味だけでなくて、この場所や食べる相手がいるからなんだと思った。
こういう感じなら、冒険者生活も悪くなさそうだね。
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