第46話 探索開始

 そして、俺たちの番がやってくる。


 入り口もバラバラで、ルートは特には決まっていない。


 貰った地図を元に、印があるところを目指していけばいい。


 ちなみに護衛の騎士や巡回の兵士がいるが、それらを頼ったり助けに入られた時点で失格となる。


 ただ罠があったり、この先入ってはいけないなどの警告はされるらしい。


 そんな説明を受けた後、最後に十分だけ時間を与えられる。


「決まりはそれくらいよ。つまり、ある程度の安全が確保された行軍みたいなものだわ」


「いずれやるであろう予行練習ってことだね」


「ふむふむ、我々の国でも似たようなことはある。獲物を生かして森に放ち、それを捕まえるという訓練がな」


「わ、わたしも足手纏いにならないように頑張りますっ」


 カレンが、両手の拳を握りしめて気合を入れている。

 本人には悪いが、とても可愛くて和んでしまう。

 そして、それは二人も同じ気持ちらしい。


「「………」」


「ど、どうして三人して見てくるんです?」


「「「なんでもない」」」


「はわっ!? うぅー……わたし、何かしたかな?」


「平気よ、カレン。むしろ、緊張がほぐれて助かったわ」


 その後、隊列を決める。

 隊長であり、土魔法と剣を持ったセリスが前衛。

 魔法剣士である俺が、中衛として遊撃に回る。

 魔法特化にして回復役であるカレンが三番手になり、しんがりをレオンが務める。


「我が最後でいいのか? 正直言って、前衛に回されるかと思ったが。個人的には、女性の後ろに隠れるのも……いや、女性も強いのだった」


「そういうことよ。私達だって、守られるばかりじゃないわ。ただ、カレンは戦闘能力は高くないから、いざって時は守って欲しいけど」


「俺もとレオンでカレンを守る形だね。後、気配や音に敏感だから後ろから声をかけてくれると助かるよね」


「なるほど……わかった。カレン殿、安心するがいい」


「お、お願いしますっ。でも、わたしも戦えますから」


「ええ、わかってるわ。とりあえず決まりね……それじゃ、行くわよ」


 すると、森の入り口にいる教師に時間だと告げられた。

 俺達は隊列を組んで、森の中へと入っていく。




 ◇


 うん、懐かしいや。


 森の中を歩きながら、師匠達に森の中に放置されたことを思い出す。


 あの時は位置もわからず、次々と襲ってくる魔物や魔獣を倒していたっけ。


 すると、ガサガサと音がする。


「きゃっ!?」


「わわっ!?」


「はい、二人共落ち着いて」


 ……落ち着くのは俺!

 びっくりした二人が、腕にくっついてきて大変!

 弾力の違うモノが当たってます!


「ご、ごめんなさい」


「す、すみません」


「カレンはともかく、セリスは前衛なのに腰が引けちゃだめだよ。大丈夫、俺達がいるから。それに、レオンのことを信用しよう」


 何かあっても俺はセリスを守るつもりだ。

 それに、獣人の気配察知能力はライカさんでよく知ってる。

 俺はそれを信用して、風の結界を張っていないほどに。


「そ、そうね、彼に失礼よね。ごめんなさい、レオン」


「いや、気にしないでいい。ユウマ、感謝する」


「はい? どういうこと?」


「くく、わかってないなら良いのだ」


「そう? まあ、良いや。とにかく、せっかくパーティーを組んでるだから俺達を信頼して」


「ええ、わかったわ」


 セリスから恐れが消え、キビキビした動きで前を進む。

 慣れている俺やレオンと違い、彼女は初めてのことだ。

 できる限り、サポートできれば良いね。






 そして、進むこと二十分が経過した。


 すると、後ろにいるレオンの気配が変わる。


「セリス殿! 何かが来る!」


「わかったわ! みんな、その場で停止! カレンを真ん中に、三人で囲うようにして! 敵が見えたらすぐに報告!」


 セリスの指示に従い、俺とレオンが動く。


 俺も刀に手をかけ、辺りを警戒する。


 ちなみに、今回は自分に魔法を使わないという縛りをつけた。


 何かあっても、そこらにいる兵士や冒険者がいるからだ。


 俺は魔法に頼りすぎる癖があるので、ちょうど良い機会だ。







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