第45話 探索前

昨夜は早めの就寝をし、早朝に目を醒ます。


俺は隣で寝ているレオンを起こさぬように、テントから出て行く。


すると、焚き火の前で座っているカレンがいた。


「カレン、おはよう。随分と早いね?」


「ユウマさん、おはようございます。少し慣れない環境だったので」


「ああ、そうだよね。王都から出たこともないもんね」


セリスはお嬢様だけど、あちこちに出かけたりしている。

野宿こそないけど、王都に来るときに旅はしてるし。

カレンの場合は王都の孤児院で育ち、王都の伯爵家に引き取られたので外は緊張するだろう。


「はい、そうなんです。実は父にも、今回の校外学習は反対されまして……」


「ふむふむ、良いことじゃない。養子だけど、それだけ可愛がってるてことだし」


「えへへ、それはそうです。ただ、それだけじゃないみたいで……身の回りには気をつけろって言われました」


「……あぁー、なるほど」


多分、襲撃者のことを言っているのかも。

結局、なんで襲われてるのかは知らないけど。


「何か知ってるのですか?」


「いや、何も知らないよ。ただ、伯爵は俺を知ってるって話は聞いた事ある」


「あっ、そうなんです。父が言っていました。もし何かあれば、ユウマ殿を頼るが良いと」


「へぇ? もしかしたら、父上の知り合いなのかも」


あの人、王都によく行ってるし。

意外と交流関係が広かったりするかもしれない。

そもそも、あんなんだけど……英雄として有名らしいし。


「英雄エルバード様ですね。よく孤児院でおとぎ話を聞いてました。敵陣に切り込み、一騎当千の力を持ってして粉砕すると」


「そうらしいね。最近では、全然戦わないけど」


「それはユウマさんみたいなできる息子さんがいるからですよっ」


「それなら良いけど……まだまだだね」


「よかったらどうぞ」


「おっ、ありがとう」


カレンが温めたカップを渡してくれた。

まだ冷たい空気の中、ミルクを飲む。

おそらく、昨日のシチューに使った残りだろう。


「ズズー……はぁ、美味い」


「用意しておいてよかったです」


「……まあ、伯爵にはそのうち話を聞くとして、カレンのことは守るから大丈夫」


「えっ? そ、それって……」


「もう友達だしね」


するともじもじしてたのに、急に落胆した表情になった。


「はぁ……セリスさんも苦労してそうです」


「どうしてセリス?」


「ううん、なんでもないです。でも、嬉しい……光魔法っていう希少な力に目覚めて、貴族の家に引き取られた時、正直言って嫌だったんです」


「それはそうだろうね。今までの生活が一変するわけだし」


「はい、突然知らない世界に来て、自分だけが幸せになって……でも、ここに来れて良かったです。わたしは、わたしにできることをやります」


「それは何かな?」


「えへへ、まだ内緒です」


そう言い、可憐に微笑む。


青髪が朝の光を浴びて、綺麗に輝いていた。


よくわからないが、彼女も迷いが晴れてきたみたいだ。






その後全員が起きて、朝食を食べ終えたら、いよいよ校外学習の本番だ。


「みなさん、おはようございます。 今日丸一日を使って、皆さんには色々と学んでもらいます。 パーティーでの行軍や連携、自然の中での過ごし方、魔物や魔獣との遭遇。自分達で食事などを用意することなど。最終的には目的地を目指して到着することが今日のメインです。それでは、各班の代表はこちらにきてください」


その後、話を聞いたセリスがやってくる。

この広い森の中には自然があり、それを使って色々と学んでいくことになってるようだ。


「セリス、どうだった?」


「さっきも言ってたけど、最終目的は森の奥にある祠みたい。そこにある証を、制限時間内に持って帰ると夕飯が豪華になるそうよ。冒険者や兵士の方が間引きはしてくれたけど、弱い魔物や魔獣はいるらしいわ。自分達で休憩を取りつつ、それらを排除して目指すことになるわね」


「なるほど、持って帰れなかったら最悪の場合飯抜きか……それは嫌だね」


「昨日の飯が美味かったから尚更のことだ」


「お腹空かして寝るのは苦しいですから……」


その時、三人の心は一致した。

美味しいご飯を食べたいと。


「もう、貴方達ってば食べ物のことばかりじゃない」


「そういうセリスはご飯なくて良いの? 俺の記憶では、セリスは食いしん……ナンデモナイデス」


「ふふ、良かったわね? さあ、準備をして待機するわよ。それぞれの班が、時間差で出発するみたいだから」


ふぅ、なんとか難を逃れたみたいです。


俺は独断専行しがちって言われたし、その辺りを気をつけないとかな。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る