第42話 出発
それから一週間が経ち、あっという間に校外学習の日を迎える。
この一週間は忙しく、あちこちの部活を見学したけど……。
「うーん、どれも微妙だなぁ」
「ふふ、全滅したみたいね?」
「そうなんだよ。文化系の部活に入ろうかと思ったけど……やっぱり、じっとしてるのは性に合わないみたい」
「仕方ないわ、貴方は昔から活発だったもの。別に強制ってわけでもないし、無理に入らなくてもいいんじゃない? 貴方は良い成績をとれば、来期には冒険者登録できるだろうし」
「それはそうなんだけど……父上から学生生活を楽しんでこいって言われたしさ。だから、何かしらの部活には入りたいかなって」
文化系の部活だと入れる場所もあったけど、あんまり興味を惹かれなかった。
戦術部とか良さげなのもあったけど、エリスやライカさんから習ってた身としては物足りないし。
「それは私も言われたわ。学生生活は一度しかないから楽しみなさいって」
「へぇ、あの人が……意外」
「ふふ、そうよね。ただ、それは伝えとくわ」
「やめてぇぇ! あの人、怖いから!」
どうして文官なのに、エリス並みの動きしてるの!
しかも、座ってる時の圧はライラさんみたいな歴戦の勇者みたいだし!
「お父様ったら、ユウマには厳しいものね」
「なんでだろう? やっぱり、壺を割ったことを根に持って……」
「そんなわけないじゃない。た、多分……私の所為っていうか」
「エリスの所為? どういう意味?」
「そ、それは……あっ、みんな来たわよ」
ふと前方を見ると、待ち合わせ場所である校門前にメンバーがやってくる。
というか、露骨に話を逸らされたんですけど?
……今更、聞ける雰囲気でもないや。
「カレン、レオン、おはよう」
「おはようですわ」
「おはようございます!」
「うむ、おはよう」
予定通り、この四人が校外学習における班のメンバーだ。
遊撃タイプの魔法剣士の俺、前衛もこなせる中衛のセリス、完全な前衛であるレオン、後衛の魔法使いであるカレン。
物理タイプの遠距離がいない以外は悪くないバランスだと思う。
「これでメンバーは揃ったね。それじゃ、リーダーよろしく」
「……それ、本当に変えなくて良いのかしら? 私は、貴方がやった方がいいと思うけど」
「いやいや、この間も言ったでしょ? セリスには、そういうのが向いてるって。それを試す機会だと思ってさ。二人も、良いって言ってくれたし」
「ああ、俺はユウマが認めたなら言うことはない。お主のことを褒めていたしな」
「わたしもですっ。セリスさん、いつも色々と教えてくれて助かってますから」
「……ふぅ、わかったわ。それじゃ、ノルン先生に報告してくる」
そして、それぞれのリーダーが報告を済ませたら……学園長による挨拶がある。
「皆の者、昨今の魔物や魔獣の発生と、他国の動き。 どうやら、色々ときな臭いことが起きているようじゃ。それに伴い、諸君にも実戦と言う名の訓練を行ってもらう。無論、旧友との仲を深める意味合いもある。種族や身分に関係なく、できれば協力して事に当たって欲しい……それでは、行ってくるがよい!」
その声を受けて、それぞれ指定された馬車に乗り込む。
俺たち四人も馬車に乗り、王都を出発するのだった。
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