第41話 カイル王子

数日経ったけど、結局部活が決まらない。


槍とか斧もやったけど、相手よりうまく扱ってしまい戦意喪失をさせてしまった。


文化系にいったは良いけど、基本的にのんびりは好きでもじっとしてるのは苦手だ。


このままだと、俺は放課後暇になってしまう。


「はぁ……どうしよう?」


「まだ時間あるから平気よ」


「セリスは返事したの?」


「ええ、校外学習が終わったら正式に入らせて頂くと」


「そっか……おっと、先生来たね」


そして、朝のホームルームが始まる。

そして、一頻り話が済んだ後……。


「みなさーん! 既に知ってる方もいると思いますが、来週から校外学習が始まります! 明日までに四人一組になって班を作ってくださいね!」


「おっと、来たね」


「ええ、そうね。カレン、予定通りに貴女も一緒でいいかしら?」


「はいっ、嬉しいです」


「ふふ、私もよ」


この二人は中々一緒にいる時間が取れない。

方や貴族達に人気者のセリスと、方や平民や獣人から好かれてきたカレン。

まだ派閥こそないけど、全員一緒に仲良くってわけにはいかないみたい。

だから、今回みたいのは貴重な時間だ。

二人が楽しめるように、俺も頑張らないとね。


「それで、後の一人はどうするの? 貴方が選ぶって言ってたけど」


「レオンに頼んでおいたよ。セリスは、あまり関わってないし」


「わかったわ。それじゃ、その四人で決まりね」


話し合いが終わり、そこでホームルームも終わる。






その後、いつも通りに講義の授業を受け……昼休みを迎える。

そして昼食を食べているが、最近は慣れ親しんだメンバーに新たに一人が加わった。


「そう! 男友達のレオンです!」


「えへへ、念願でしたもんね」


「これで、僕の肩の荷も降りたよ。ずっと、男友達と思われてたし」


「それについてはごめんって。レオン、助かったよ。おかげで、女の子だらけにならずにすんだ」


下手すると、校外学習の班も男一人で過ごすところだった。

そもそも、女の子の扱いを良くわかってないから難しい。

……近くにいた女性達はまともじゃなかったし。


「お、おう? いや、自分で言うのもあれだが、俺と友達だと男友達も出来にくいぞ?」


「そんなことで嫌がるような友達はいらないよ」


「……そ、そうか……」


「あっ、出ましたよ。これが、ユウマさんの天然タラシですね」


「ほんとですっ」


「我はたらされてなどいない!」


そんな会話をしていると、カイル様が近づいてくる。

その目は真剣で、真っ直ぐに俺を見つめていた。

これは、ただ事じゃないな。


「ユウマ殿、少し良いか?」


「ええ、構いませんよ。どうやら、場所を変えた方が良さそうですね」


まだ昼休みが終わるまで時間があるので、そのまま中庭に行く。

ひと気がないのを確認して、風の結界を張る。


「これで、外には漏れません」


「なんと……このような魔法まで。俺を殺すつもりならすぐに出来るというわけだ」


「そんなことしませんって。それで、話はなんでしょうか?」


「セリス殿のことだ……お主は彼女とどういう関係なのだ?」


「どういう関係ですか……幼馴染の女の子で、大事な女の子でもあります」


しばらくは会ってなかったし、男の子だと思ってた。

それでも、幼き頃の思い出に偽りはない。

共に剣を振り、遊び、食べ、一緒に過ごしてきた。

たとえ女の子であろうが、大事な幼馴染であることに間違いはない。


「本人にも聞いたが、別に婚約者ではないと?」


「ええ、そうですね。カイル様は、彼女を婚約者にしたいのですか?」


「ああ、俺は強くならねばならない。だから、そのためには力がいる」


「なるほど……つまり、彼女を好きとかではないと」


「我々貴族は、好きとか嫌いとかでは結婚できない。それは、我が父が証明している。父には妻が二人いるが、別に恋愛結婚というわけではない」


「それはそうですね」


貴族に生まれたからには、相手を選べない。

ただ、個人的な感情で言えば……セリスには幸せな結婚をしてほしいかな。


「そういうお主は、セリス殿を好きではないのか?」


「好きですか……好きって何ですかね?」


「……いや、俺も分からん」


「「………」」


俺たちの間に、虚しい沈黙が漂う。

成人もしたというのに、何と情けないことだろう。

いや、可愛いとかドキドキとかはわかるんだけど。


「それってどうなんです?」


「う、うるさい! お主こそどうなのだ!」


「いや、俺は同じ年くらいの女の子が近くにいませんでしたし……セリスは男の子だと思ってましたし」


「俺とて、幼き頃より女性とは遠ざけられてきた」


「あぁー、そうですよね」


下手な女性と仲良くなると、その後が大変そうだ。

何より、王位争いに関係してくるし。


「と、とにかく! ……俺は俺の目的のために、彼女を利用する。お主には言っておこうと思ってな」


「それ自体は否定しませんが……個人的には、セリスを守れないような男にはやれません。あの子は、ああ見えて無茶をしますから」


「ほほう……ならば、俺は尚のこと戦果を上げねばなるまい」


「戦果ですか?」


「いや、何でもない。言いたいことはそれだけだ……ではな」


そして、足早に去って行った。


やっぱり、何か焦ってるような感じがする。


……一応、気にかけておきますか。








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