第43話 野営地にて

 今回は少し西に行ったところにある、国が管理している野営地に向かう。


 近くに森があるが簡易的な建物もあり、冒険者や旅人の休憩地にもなってるとか。


「今回は冒険者の方もいるみたいよ」


「おおっ、是非とも話を聞きたいね」


「ただ、基本的には関わらないようにするって話ね。そもそも、あっちが嫌がるだろうし」


「そうなの?」


「彼らにとって、貴族の印象はあまり良くないのよ。無茶な依頼をしてきたり、不都合なことをもみ消したりするから」


「あぁー……なるほど。じゃあ、尚更のこと俺達が頑張らないとね」


「……ふふ、そうね。相変わらず、ユウマは前向きだわ」


 そして休憩を挟みつつ、十六時頃……野営地に到着した。


 建物がいくつかあり、テントとかも張ってある。


 高さ二メートルくらいの柵があり、あれなら小型の静物なら簡単に入ってこれないだろう。


「おおっ、割ときちんとしてるね」


「一応、国が管理してる場所だもの」


「ふむ、我々が住んでいる環境に近いな」


「そうなの?」


「ああ、我々は草原のど真ん中に小さいな家を作って暮らしている。それらが集まって一つの集落となっているのだ。ドワーフ達はきちんとした建物に住んでいるので、人族に近い生活をしているが」


 そんな会話しつつ、生徒達の列に並んていく。

 すると、ノルン先生が生徒達の前に立つ。


「みなさん、お疲れ様でした! 今日から二泊三日でこちらの施設にお世話になります! 今日は日が暮れ初めていますし、みなさんお疲れですね! 休憩をしたのち、夕飯の準備をしてもらいます!」


「別に疲れてないけど」


「あなたと一緒にしちゃダメよ」


「そうなの? でも、レオンとか……あれ?」


 何やらプルプルしているレオンがいた。

 そういえば、馬車から降りる時ふらついてたような。


「ふむ……足が痺れて尻が痛い。馬車など乗り慣れていないのでな」


「わ、わたしもお尻が痛いです……」


「ちなみに、私も痩せ我慢してるだけだから」


「……回復魔法をかけようか?」


「我はお願いしよう」


「了解。それで二人は?」


「「結構です(わ)っ!!」」


 険しい目つきで二人に睨まれてしまった。

 なんとまあ、息がぴったりでしょうか。


「今のはお主が悪い」


「えぇ……別に触るわけじゃないのに」


「ユウマ? 貴方には女性の扱いを教えるべきですわね?」


「もう、ほんとですっ」


 すると、左右からほっぺを引っ張られる。


「あひゃい……二人してほっぺを引っ張らないでよ」


「全く、仕方ないんだから」


「そもそも、わたしにもできますから。セリスさん、後でやりますね」


「ええ、お願いするわ」


 その後、それぞれに回復魔法をかけ終えたら、まずは野営の準備をする。

 俺とレオンはテントの準備、セリスとカレンは食事の準備をしていた。


「それにしても、お主の体は頑丈だな? ずっと座りっぱなしだったというのに」


「うーん、一日中座らされたりしたからなぁ。しかも、重石付きで」


「なっ……そんな激しい鍛錬をしてきたのか。道理で、我と生身で渡り合えるわけだ」


「体幹訓練とか、忍耐力を鍛えるためとか言ってたね」


 今思うと、アレは異常だった。

 魔物や魔獣がいる森に放置されるは、敵陣のど真ん中に放りだすし。

 あの時の俺は母上が死んだことを考えたくなくて、とにかくがむしゃらに鍛錬してたっけ。

 あとは、母上の願いである誰かを守れるような男になって欲しいって。


「……ふむ、我も負けていられないな。今度、一緒に鍛錬をしても良いか?」


「うん、もちろん」


「それと、お主は婚約者とかはいるのか? あのセリス殿とカレン殿とは、どういう関係なのだ?」


「急にどうしたの? あっ、もしかしてセリスとかカレンに興味あるの? うんうん、良い子だもんね」


 すると、レオンが目を見開いて固まる。


「……お主は一回殴られた方がいいかも知れん。いいか、絶対に二人にはそんなこと言うなよ?」


「はい?」


「いいからわかったといえ」


「わ、わかった」


 あまりの威圧感に俺は頷くしかない。


「全く、なんで我が心配を……でも今のでわかった。つまり、特定の相手はいないということだ」


「まあ、そうなるね」


「そして、お主は貴族……ふむふむ、何人いても良いわけか」


「ねえねえ、さっきから話が見えないんだけど……」


「気にせんで良い。ほれ、さっさとテントを設営するぞ」


 そして、日が暮れる前にどうにかテントを設営するのだった。












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