第11話 入学式
うーん……寮を出て、すぐ近くにある学校に来たのはいいけど。
やっぱり、知り合いがいないからぼっちだね。
新入生が集まった体育館にて、ぼけーと突っ立っている。
周りの皆は知り合いらしく、わちゃわちゃと話してるけど、そこに入る勇気がない。
……そうか、俺って意外と人見知りだったのか。
そんなことを考えていると、壇上に先生らしき人が現れた。
「みなさん、静粛に……はい、よろしい。ひとまず、入学おめでとうございます。本日、八十名の新入生が入りました。これから三年かけてともに研鑽を積む仲間ですので、親睦を深めていきましょう。自己紹介が遅れましたが、私が理事長のモーリスと申します」
この人が理事長先生か……白い髭に白髪が似合う初老の男性だ。
優しそうな雰囲気をしているが、内蔵してる魔力は相当高そう。
エリスまでとはいかないけど、凄腕の魔法使いの気配がする。
「長々と話すのもあれですから手短に……ここは選ばれた生徒が通う学校です。そして身分や種族関係なく、実力主義の学校です。ですが、身分を振りかざすような真似はしないことです。もちろん、強くても偉そうにしないこと。あとはそれぞれが、当たり前の節度を守って学園生活を送ってくださいね」
ふんふん、別に当たり前のことしか言ってないね。
身分や種族によって価値観や考え方が違うから、そこは折り合いをつけないと。
それより……なんか、俺の方を見てる気がするのは気のせいだろうか?
「私からは以上となります。さて、次に生徒会長の挨拶で終わりにしたいと思います。生徒会長ミレーユ-アストレイ、お願いします」
「はい、理事長先生」
……あれ? ミレーユさん? 寮長だけでなく、生徒会長もやってるんだ。
そりゃ、寮でもみんなが注目するわけだね。
アストレイ……どっかで聞いたことあるような気もする。
「ご紹介にあずかりました、ミレーユ-アストレイと申します。この学校の生徒会長を務めさせて頂いております。主に生徒間の揉め事やお祭り行事、そして部費の予算などを担当しておりますので、何かご相談がありましたらお気軽にどうぞ……それでは、楽しい学園生活を送ってくださいね」
最後にミレーユさんが微笑むと、周りから息が漏れる。
そして、相変わらず優雅に歩いて壇上から降りていく。
その際に目が合い……ウインクをされる。
っ!? なんつー破壊力……美人、恐るべし。
「お、おい、今のって俺?」
「はぁ? おれにきまってるじゃん!」
「違う違う! 俺でしょ!」
……危ない危ない、俺も勘違いするところだった。
今のは俺じゃなくて、他の人にやったんだね。
◇
そのまま軽いテストがあるらしいので、呼ばれた者から順に体育館の外に出て行く。
俺はその間に、知り合いでも作っておこうかなと辺りを見回していると……。
「あっ! ユウマさん!」
「あれ? カレンさん?」
タタタッと、昨日助けた女の子がかけてくる。
白のブレザーが初々しく、よく似合っていた。
「わぁー! 同じ学校だったんですね!」
「そうみたいだね。しかも、同い年だったとか」
「えへへ、偶然って凄いですね……ううん、これは運命?」
何やら下を向いてもじもじして呟いている。
さっきから、ほんのりと頬が赤い気がするし……心配して、俺は彼女のおでこに手を当てる。
「顔赤いけど大丈夫? 風邪でもある?」
「ひゃぁ!? へ、平気です!」
「そう? それなら良かった」
「うぅー……」
「……貴方、何をやってるの?」
「あっ、セリス」
振り返ると、今度はセリスがいた。
こちらも制服姿がよく似合っている。
「ユウマ、物凄く目立ってるわ。もう、公衆の面前で女の子に触れるだなんて」
「あっ、そうなんだ。ごめんね、カレンさん」
「い、いえ! わたしは平気です!」
「仲よさそう……むぅ」
「あのー、セリス?」
「と、とにかく! ユウマには色々と教えることがありそうですね! 貴女も一緒に来なさい」
「「は、はいっ!!」」
その迫力に、俺とカレンは同時に返事をして、端っこの方に連れて行かれる。
物陰に隠れたので、俺たちを見る人も減った。
「ユウマ、また会ったわね」
「はは、そうだね。カレンさん、この方はセリス-ミルディンさんだよ。侯爵家の人だけど、優しい人だから安心していいよ」
「は、はじめまして! カレン-エルランと申します!」
「はじめまして、カレンさん。なるほど、エルラン伯爵家の……娘はいなかったような」
「わ、わたしは養子で……」
「ああ、そういうことなの。それじゃ、わからないことがあったら言ってね」
「……へっ?」
その言葉に、カレンがぽかんとした表情を浮かべた。
俺はといえば、自然とそう言える彼女が幼馴染で良かったなと思った。
「カレンさん、セリスは優しいから平気だよ」
「べ、別にこれくらい普通よ」
「そ、そうなんですね……はい、よろしくお願いします!」
「ええ、任せて。それじゃあ、これから学校でもよろしくね」
「はい! わぁー、知り合いとかいないから不安だったんです」
「ふふ、それなら良かったわ」
二人が握手をして、微笑み合う。
うんうん、この二人は仲良くできそうで安心だね。
それに三人でいれば、俺とセリスが一緒にいても変に思われないし。
仮に婚約者がいても、問題はなさそうだ。
「それじゃ、俺も教えてもらおうっと」
「ユウマ? 貴方は生粋の貴族なんだから覚えてないとまずいでしょうに」
「はは、どうにも苦手でして……」
「もう、相変わらずなんだから」
「ふふ、ユウマさんは貴族っぽくないですもんね」
二人からそう言われ、俺は頭をぽりぽりとかくのだった。
んなこと言われても、貴族っぽくってよくわからないし。
……俺の父上、あんなんだしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます