第12話 無自覚ハーレムからのラッキーすけべ?
そして、三人で仲良く話していると……。
カツカツと音を立てて、ミレーユさんがやってきた。
その姿と雰囲気は、相変わらずの美女である。
「おや、ここにいたのか」
「ミレーユさん、どうもです。俺に何か用ですか?」
「ミ、ミレーユ様でしょ!?」
「イタっ!?」
急に、セリスに頭を叩かれた。
セリスを見ると、その表情は驚愕に染まっていた。
「えっ? なに? 知り合いなの?」
「し、知り合いもなにも……もう! 貴方ってば!」
「で、でも、わたしも知らないです……ごめんなさい」
「ううん、カレンは仕方ないわよ。あのね、この方は……」
すると、ミレーユさんが手を出してセリスの言葉を遮る。
「セリス、自分で自己紹介をするから平気だ。もう少し引っ張りたかったが、流石に可哀想だ。改めまして、ミレーユ-アストレイという。一応、王家の血に連なる公爵家の者だ」
「……これは失礼いたしました」
「いや、私も敢えて言わなかったしな。まあ、少し寂しい気もするが」
「じゃあ、こっちの方がいいですかね?」
「ほう……そうしてくれると助かる」
すると、セリスが俺を引っ張り顔を寄せてくる。
あの、どうでもいいけど……顔が近くて困るんですけど。
俺は今だに、男の子だと思ってたギャップがあるし。
「ちょっと? 何を考えてるの? 相手は我が国に二つしかない公爵家の、それも紅蓮のミレーユと言われる有名な方なのよ? それを、普通の先輩みたいに扱うなんて」
「だって、ここでは身分は関係ないんでしょ? それに、本人が良いって言ってるし」
「い、いや、それはそうなんだけど……それは建前というか」
「そうなの? でも、一番偉い先生が言ったってことはそっちが正しいよね?」
「……そうなのよね。うん、本来ならユウマの言ってることが正しい」
「まあまあ、二人とも。ひとまず、こっちを向いてくれるか? ふふ、仲がいいのはわかったけど」
その言葉に反応し、俺とセリスが飛び跳ねるように離れる!
今更だけど、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
「べ、別に仲良くなんか……」
「ふむ、初々しいことだ。それより、ユウマ君のいう通りだ。ここでは身分が関係ないと言っているのに、いつの間にかこんな風になってしまった。ユウマ君さえ良ければ、学校にいる時くらいは普通にしてくれるかな?」
「はい、俺でよければ」
「感謝する……本当に面白い子だ」
「別に普通ですよ。そういえば、何か用があったのでは?」
今更だけど、ここにめちゃくちゃ注目が集まっているし。
美少女と美女がいるから当然といえば当然か。
……あれ? 俺、今のところ女の子しか知り合ってなくない?
「ああ、君に用がある。試験が始まるからついてきてくれ」
「あれ? まだ呼ばれてないと思うんですけど」
「君は特別だからね。私が直に見ることになってる。だから昨日、また明日と言ったのだ」
「あっ、なるほど……では、お願いします」
「うむ、こちらに来るといい。そこの二人も見たいなら見て良い」
すると、二人が頷く。
そして四人で、体育館の横にある扉から、広場に出る。
そこは平地になっており、四方にはポールが設置されていた。
「あれは知ってるかな?」
「ええ、師匠と鍛錬するときに使いました。魔法の障壁を作る装置ですね。あと、魔法を食らってもダメージを軽減できるとか」
「なら説明はいらないか。君は私と魔法戦をしてもらう」
「わかりました。ルールはどうしますか?」
「別に戦闘が目的ではなく、君の力を測るだけだ。なので動かずに、その場で魔法の撃ち合いをする。君は私の魔法を防いだり、打ち消したりすれば良い」
「なるほど……いつもより楽ですね」
俺はエリスと魔法の打ち合いをしてから、ライカさんと近接戦闘の鍛錬をしていた。
魔力と体力が空っぽになるまでやらされていたなぁ……自分が頼んだこととはいえ。
よく見ると、バリアの外に校長先生がいた。
「ふむ、観客も揃ったようだね。では、英雄バルムンクの末裔の力を見せてもらおうか……行くぞ!」
「そう言われたら引くわけにはいかないですね。ええ、いつでもどうぞ」
「ならば! いでよ炎の玉——ファイアーボール!」
俺に向かって、人の頭くらいの火の玉が迫ってくる。
ふむふむ、その髪の色と同じ炎属性ってわけか。
「いでよ水の玉——アクアボール」
「ふむ、相性の悪い属性とはいえ、私の炎を打ち消すか。四大魔法の相性については?」
「知ってますよ。水が火に強く土に弱い、火が風に強く水に弱い、風は土に強く火に弱い、土は水に強く風に弱いでしたっけ」
「ああ、それであっている。あとは特質系である光、闇があるな。では、これはどうかな? 言っておくが、これを防げれば上等だ。炎の矢よ敵を射よ——フレイムアロー!」
これは貫通力が高そうな魔法だ。
相性が悪くとも、魔力の質の高さで防ぐのはきつそう。
そうなると……これかな。
「水の壁よ、我が身を守れ——アクアウォール!」
「ふふ、それで私の魔法を防げるとでも……なに?」
俺の水の壁は、炎の矢に貫かれつつも、最後の一枚で防ぎきった。
「ふぅ、二枚目を抜かれるとは思わなかったなぁ」
「なんと、あの短い間に三枚の水の壁を作ったというのか。その詠唱の速さと判断力、そして防ぐ魔力の質の高さ……なるほど、あの方が推薦するだけのことはある」
「推薦? そういや、俺って国王陛下に頼まれてきたんだっけ」
「ふっ、そのことを含めて後日きちんと話をしよう。さて、本来なら文句なしで合格なのだが……それではつまらない。もう一発、受けてもらえるかな?」
「ええ、良いですよ。俺も久しぶりに楽しいですし」
「それは良かった。では、参る………炎の槍よ、敵を燃やし貫け——フレイムランス!」
中級魔法であるランス系だけど、魔力量から察するにかなりの威力を持ってそう。
おそらく、普通の水魔法だと防げない……こっちも本気で行きますか!
「荒れ狂う水よ、敵を飲み込め——
「なっ!? 水の龍!?」
俺の放った龍をかたどった水が、炎の槍を飲み込み——ミレーユさんに直撃する!
でも、ダメージはないから平気なはず。
「……これは参ったな。まさか、上級魔法とはいえ撃ち負けるとは」
「いえいえ、属性的な問題もありますから」
「やれやれ、これでも学校ではそれなりの腕前だったのだが……」
「へぇ、ミレーユさんでそれなり……あっ」
「どうしたのだ? ……っ〜!?」
そこで同時に気づいた。
俺の魔法によってダメージこそないが、ミレーユさんがずぶ濡れだということに。
下着が透け、その豊満な身体のラインが出てしまっていた。
「す、すみません!」
「い、いや、これは不可抗力だ。何より、最後の勝負を仕掛けたのは私だ」
「と、とりあえず、これをどうぞ」
俺はなるべく見ないようにして、自分の上着をミレーユさんにかける。
なんというか、目に毒すぎるし。
「ふふ、紳士なのだな?」
「い、いえ、普通ですよ」
「ふむ、男ならチャンスだとばかり見ると思っていたが……本当に興味深い男だ。これは責任を取ってもらわねばなるまいか」
「いやいや! 無理ですって!」
「ははっ! 振られてしまったか……今日は楽しかった。では、これにて試験は終わりとしよう。あとは、明日の結果を待つと良い。ちなみに、これを借りても? 明日には返すと約束する」
「こちらも楽しかったです。はい、どうぞご自由にお使いください」
「感謝する。それでは、また後日改めて」
そして、校庭側に向かって歩いていく。
……めちゃくちゃエロかったと思ったのは内緒です。
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