第18話
ヘビーな1日だった。
結局、僕は莉緒のお父さんの車で家まで送ってもらった。自転車は折りたたみ式なので、車のトランクに入れてもらった。
ちょうど父がいたので、家に招いて莉緒の両親とうちの両親と居間で少し話して行った。僕はすぐに自分の部屋に戻った。
お腹が空いていたので、キッチンの棚にあった買い置きの菓子パンを部屋に持って来て食べた。夕食は、莉緒の両親が帰ったら食べよう。
僕は菓子パンを食べると、ベッドに横になった。
今日はいろんな人から、他の人には言ってない打ち明け話をされた。そのすべてを自分の心の中にしまって鍵をかけておかなければならない。
それに追い討ちをかけたのが、莉緒のお父さんの言葉だ。莉緒は心臓移植をしなければならないかもしれない。
莉緒がそんな状態だなんて知らなかった。そう思うと、悲しくなった。
莉緒の件も含めて、今日僕に話されたみんなの秘密は、どれもみんな本当に大事な話だ。軽々しく誰かに話したら、僕の人間性が疑われてしまう。穴を掘って叫んでも気は晴れないだろう。王様の耳はロバの耳ではない。
僕は気をまぎらわせようと、スマホでYouTubeのザッピングをした。料理の咀嚼音や、スケボーのX Gamesのスーパープレイ、怪しげな未来予想や都市伝説などを見ていても、なんだかちょっと気持ちとズレてるような、精神的に不安定な状態になる。
心がくたびれているのだ。
そうしているうちに、いつの間にか寝てしまった。LINEの通知音で目が覚めた。胸に落ちていたスマホを拾って見てみると、莉緒からだった。
お父さんたち、亜土の家行ったんだって?
うん、俺を車で送った
ついでに寄った
どうしてうちの美容室に行ったの?
虹公園に翔人に
会いに行ったから
なんかあった?
なんで?
珍しい行動を取るから
たしかに僕の今日の行動は珍しい。自転車でK町まで行ったり。僕はそんなにアクティブなタイプではない。
ほんの気まぐれだよ
ふーん
なんか用あったの?
用がないとLINEしちゃだめ?
そうじゃないけどさ
また火曜から入院なんだ。
だからノートお願いって
いつものことじゃん
感謝してるんだよ
これでも。顔合わすと
言えなくなるからさ
そうなんだ
ありがと
僕は莉緒のお父さんが言った言葉を思い出していた。
心臓移植をしたら20歳過ぎても生きられるようになる。それはもし出来なかったら生きられないということなのか?
わからないし、莉緒に聞くわけにもいかない。胸がなんだか締めつけられたように痛い。LINEの返事に間が開いてしまった。
どうしたの?
なんでもない
ありがとなんか言ったから
びっくりした?
まあ、ちょっとね
One heart着けて
くれてる?
うん、着けてる
僕は嘘をついた。
自撮りして
LINEに貼って
莉緒にそう言われて、僕はベッドから飛び起きて、机の引き出しにしまっていたネックレスを出して、あわてて首に着けた。
そしてハートの片割れが見えるように服の上に出して、スマホで自撮りしてLINEに貼った。
すると同じように部屋着の莉緒がもう半分の片割れのハートのイヤリングを自撮りして貼った。
これでひとつの
ハートだね
そうだね
僕は晴希に言われたことを思い浮かべた。莉緒とのこと、ちゃんとしないと。
もし莉緒が僕のことを好きだとしたら、美笛の存在で傷つくことになってしまう。莉緒と距離を置いても、よそよそしくしても傷つけてしまう。
どうすれば幼なじみの距離を保っていられるのだろう。わからない。
じゃあ今日疲れたから
そろそろ寝るわ
そだね
おやすみ
おやすみ
僕は急いで下に降りて夕食をチンして食べて、風呂に入った。そして自分の部屋に戻り、ベッドに横になると、まるで待ち構えた半魚人に首根っこをつかまれて、眠りの深い海に落ちていくように爆睡してした。
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