第11話
ハロウィンの当日、僕らは学校が終わると衣装やメイク道具を持って、莉緒の家に集まった。
莉緒の両親は当然、美容室で仕事をしている。
だからいくらでも騒げるのだ。
家からはハロウィンの格好をして行けない。
ここは北海道の◯◯市で、渋谷ではない。
そんな格好をしていたら、かなり目立つ。
だから莉緒の部屋で女子チームが莉緒の部屋で、男子チームが居間で衣装に着替えた。
僕がワンピースのチョッパーの被り物をすると、
「それ、メガドンキで買った?」と翔人が言った。
「いや、Amazonだよ」
「顔はどうするの?」晴希が言った。
「これを付ける」僕は仮面舞踏会でするような金ラメ付きのアイマスクを出して付けた。
「すげー、変態度アップ」と翔人が言った。
「変態じゃないよ」
「チョッパーの被り物して、金ラメのアイマスクしてるのが変態じゃなかったら、変態なんていない」晴希が言った。
「じゃあ翔人たちはどんなの用意してんの?」
「俺か、俺はこれだ」
翔人はメイド服とカツラを出した。
「これを着て、後はメイクは莉緒に頼んでしてもらうことになってる」
「すげー、手が込んでる」
「バカの上にはもっとバカがいる。際限がない」晴希が言った。
「俺の女装に惚れるなよ」翔人が言った。
「惚れねえから」僕は即答した。
「激しく同意」と晴希が言った。
「じゃあ着替えるかな」翔人が学生服を脱ぎ出した。
「おい、ここでか?」晴希が言った。
「ここじゃなきゃ、どこで着替えるんだよ」
翔人は秒で学生服上下とワイシャツを脱ぎ、トランクス一枚になった。
その間、晴希は顔をそらして見ないようにしていた。別に男同士だからいいっしょ。僕はそう思った。
そして顔をそらしてる晴希に、「晴希は何にしたの?」と聞いた。
「おっ、俺はこれだよ」
晴希は赤いロン毛のカツラと、赤に縞模様の入った浴衣と帯を持って来ていた。
「もしかして、るろうに剣心?」
「そう、緋村剣心。実写映画全部観てるからね」
晴希は学生服のブレザーを脱ぐと、ワイシャツとズボンの上から、その浴衣を着た。そしてカツラをかぶり、腰に締めた帯にプラスチックのおもちゃの刀を刺した。
「顔の傷は後で莉緒に書いてもらう手はずになってるでござるよ」
「語尾がもう剣心になってる」
そうこうしてるうちに翔人がメイド服に着替えて、カツラを付けていた。
それを見て僕と晴希は驚いて声も出なかった。
あまりにもかわいかったのだ。
元々、韓流アイドル系の顔で下地は良かったにしても、こんなに女の子になってしまうとは。
これで化粧をしたら、本当に惚れてしまうかもしれない。それくらいクオリティが高かった。
「なによ、そんなに見つめないで。恥ずかしいから」翔人が女の子のノリで言った。
「すごいよ、翔人」僕が言った。
「うん、俺、初めて翔人で感動した」晴希が言った。
「何よ、それ。失礼ね」翔人はもう女子になりきっている。
「そろそろ、莉緒の部屋に行こうか」僕が急かした。
「うん、私もメイクしてもらわなきゃだし」
「俺も顔に傷を描いてもらうでござる」
チョッパーとメイド服と剣心は莉緒の部屋の前まで行って、僕がノックした。
「入って大丈夫?」
「うん、いいよ」
僕は莉緒の部屋の扉を開いた。
「おお」僕は思わず声を上げてしまった。
そこには魔女とゾンビが2人いた。
魔女の美笛は黒くてとんがった幅の広い帽子をかぶり、下は首周りや肩の辺りが透けて見える黒いワンピースを着て、魔女が飛ぶ時に使うような、杖みたいなホウキを持っていた。
莉緒は血のついた破れかけたセーラー服と赤いチェックのミニスカートに、血しぶきが飛んだような色が付いた、白いロングソックスを履いていた。
顔も口の周りに屍肉を食らったような赤いメイクをして、目の周りをダークな色で塗っていた。
紗奈は囚人服を着たゾンビで、頭には青い横ストライプの帽子に血が付いていて、下もストライプの入ったミニのワンピースを着て、胸の辺りに大きな血の跡が付いていた。
そして莉緒と同じような血しぶきの飛んだ白いロングソックスを履いていた。
顔も莉緒みたいなメイクをしていてた。
僕がまず部屋に入り、その後に晴希が入り、翔人が部屋に入った途端に、女子たちが色めきだった。
「か、かわいい、翔人」莉緒が叫んだ。
「すごいよ、翔人。私たちよりかわいい」紗奈も見惚れて言った。
「うん、ほんと。かわいい」美笛も感心したように言った。僕は美笛の魔女姿の方がかわいいのにと思った。
後は翔人が女子たちのおもちゃになった。
ソファーに座らされて、化粧道具を持った莉緒が翔人にメイクを施していく。他の2人もこうしたらいい、ああしたらいいと盛り上がっている。
そしてファンデーションを塗って、唇に試供品のリップスティックを小さなハケで赤く塗っていくと、翔人のメイクが完成した。
「翔人マジかわいい」莉緒が言った。
翔人が渡された手鏡を覗き込みながら、
「これ、ほんとに私? 信じられない」
「ほんとかわいい。地下アイドルにいそう」紗奈が言うと、
「地下じゃなくて、フツーにアイドルで良くない?」翔人が唇をとがらせた。
「うん、TWICEにいてもおかしくない」美笛が言うと、
「ほんとに? そうよね、いそうよね、いてもおかしくないわよね。もしかしているかも。私、TWICEにいるかも」テンション爆上がりした翔人が美笛の両手を握って言った。僕はちょっと妬いた。
そして晴希の頬にさっきのリップとハケで赤く傷を作り、みんなのメイクは終わった。
さて、これからハロウィンパーティーだ。
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