第7話 いい人だった

「おそらくね…その受付の人…

 いい人だったんだよ…」

「そうなの…」

「うん…」



 もうすぐいくつかの映画の予告は始まるころだ…

「その人さ…パパのこと心配して…違うスクリーン案内してしまったかも…って思ったんだよ…」

「なんで…」



「なあ…りほ…考えてもみろよ…」

 神妙に聞いている娘。

 真面目な性格はいくつになっても変わらない。



「五十過ぎのおっさんがさ…」

「うん…」

「五十過ぎのおっさんがね…」

「うん…」

「今人気絶頂の…」

「うん…」

「若い男性アイドルグループの映画を…」

「うん…」





「観るか……しかもお一人で…」




 右も左も前も後ろも…

 年齢は若い人が大半ですが、年配の人もいます。

 おそらく…

 私以外…

 みなさん…

 ほぼ…

 ほぼ…


 女性でした。





「観ないね…」




「だろ…

 案内ミスしたって…

 思ったんだよ…彼は…

 だから確認してくれたんだよ…」



「うん…」



「でも本当に五十過ぎのおっさんが…

 この映画のチケット…

 持っていたんだな…」



「そうだね…」



 娘のあきれたような表情も意外と好きなのです。


      了

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