第5話同室同衾
「へぇ〜。ここがマリスの家なのか…。良い所住んでるんだな…」
マンションの一室に案内された僕は広すぎる室内を眺めて息を吐く。
「その…私…錬金術も出来るから…」
「なるほどな。金を錬成して売ったお金で生活しているってことか?」
「そう。こっちの世界の常識とかわからないから。働けるわけ無いし」
「だよな。僕も同じ様な手段でお金を集めて生活しているから。気持ちは分かるよ」
「どんな方法でお金を集めているの?」
「いや、マリスと殆ど同じ方法だよ。土遁の術で色んな鉱石を作って売って生活しているんだ」
「鉱石?」
「そうそう。こっちの世界では宝石って呼ばれるものを作り上げて売るってこと」
「あぁ〜。じゃあ結構高価な値段で売れるんだ?」
「まぁね。お金にはしばらく困らないけれど…節約は大事だから」
「そうだね…」
そんな他愛のない会話を繰り返しながら僕らはリビングのソファに隣り合って腰掛ける。
「お酒でも飲む?」
マリスは唐突に立ち上がると冷蔵庫の方へと歩いていく。
ガチャっと冷蔵庫を開けたマリスは中からビールを二本持ってやってくる。
「とりあえずビールで乾杯しよ」
「ありがとう。じゃあ乾杯」
軽く缶をコツンと合わせると僕らはそのままお酒を飲んでいくのであった。
そこからしばらくマリスの家でお酒を酌み交わすのだが彼女は顔を赤くするだけで酔っている雰囲気はまるでなかった。
「仁は酔わないね…」
少しだけ残念そうに口を開くマリスに苦笑すると一つ頷いた。
「妖怪はお酒で酔わないから」
「それってつまらなくない?」
「つまらなくはないよ。お酒は好きだから」
「ふぅ〜ん。つまんないの…」
「そういうマリスだって酔ってないだろ?」
「私も酔わない体質だから」
「なんだ…同じじゃないか」
「変わらないなら意味なかったね…」
「意味?お酒を飲むのは純粋に楽しいだろ?」
「………。仁がそれで良いなら別に良いけど…」
マリスは意味深な言葉を残して、その後もお酒を楽しむのであった。
朝日が昇りだした頃、僕はマリスの家を後にすることになりそうだった。
「眠くなってきた…」
マリスの一言により僕はソファから立ち上がった。
「じゃあ帰るから。また今度な」
そう別れを告げて片付けを始めるとマリスは唐突に甘えたような言葉を口にする。
「帰っちゃイヤ…」
「そう言われてもな…僕もベッドで休みたいし…」
「じゃあ一緒のベッドで寝て?」
「眠くて思考停止しているだろ?大胆なこと言ってるぞ?」
「そんなことないもん。一緒に寝よ?」
「………」
そこで言葉に詰まった僕の手を引いてマリスに自室へと連れ込まれる。
そのまま流れるようにベッドに潜り込むとそのまま同衾の流れへと発展していく。
「何もしないからな」
そんな言葉を口にしてもマリスは返事をせずに静かな寝息を立てて眠ってしまう。
自分の思い過ごしだと感じると目を瞑って眠りの世界へと誘われていくのであった。
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