第3話超能力者?(笑)

本日もエルフの魔法使いであるマリスとともに過ごす約束をしているのだが…。

「ごめん。風邪引いた…。家で休むから今日は中止でいい?」

待ち合わせ場所で待っているとマリスの魔法により使者として使われたカラスが僕のもとにやってきて口を開いた。

「問題ない。ゆっくり休めよ。それよりも一人で大丈夫か?」

「大丈夫。備蓄もあるし…風邪薬のストックもあるから」

「一人で心細くないか?」

「うん。大丈夫。一人のほうが休めるから。気にしないで」

「わかった。じゃあまた風邪が治ったらな」

「うん。また今度ね。今日はごめんね」

「気にするな。ゆっくり休みな」

「ありがとう。じゃあまたね」

会話を繰り返したカラスは用事が済むと我に返ったのか素知らぬ顔で空高くへと飛んでいく。

「今日は暇になるなぁ…何するか…」

待ち合わせ場所である大きな公園のベンチに腰掛けると遠くに飛んでいったカラスの後を目で追っていた。

「そこのお兄さん!」

空を眺めていた僕に唐突に声を掛けてくる女性に気付いてそちらに目を向ける。

「なんでしょう?」

目の前の女性に目を合わせると彼女は何も持っていない掌をこちらに見せてくる。

「今、掌に何も有りませんね?それではいきますよ?3・2・1…」

そうして掌をくるっとひっくり返した彼女の掌には一輪の薔薇が現れる。

「じゃーん!どうですか!?このイリュージョン!」

「うん。よく訓練されたマジックだな」

拍手をして淡々と感想を口にすると目の前の女性は目をカッと開いて噛み付いてくる。

「な…!?マジックって言いましたか!?これはイリュージョン!超能力です!種も仕掛けもないんですよ!?」

「ふぅ~ん。じゃあどうやって薔薇を出したんだ?」

「それは…秘密です…」

「言えないんだろ?種も仕掛けもあるじゃないか」

「いや…あるにはあるんですが…」

「なんだ?言ってみろよ」

軽く鼻で笑うような態度で接していると彼女はムキになったらしく手品の種を口にする。

「服の袖に薔薇の種が入っているんです…」

「ん?それで?」

「えっと…掌をくるっと返す時に袖の種に超再生を掛けるんです…」

「ん?何だか話がファンタジーになってきたな…」

「急成長した種が一輪の薔薇になって…急に掌に現れるって寸法です」

「ほぉ〜。魔法的な話なのか?」

「それに近いです…超能力っていうんですよ。他の人には秘密にしておいてくださいね?」

「そうか。なかなか良い設定だな」

呆れたわけでもなく。

なりきっている彼女を微笑ましく思っての感想だったのだが…。

「設定!?何を言っているんですか!私は本当に超能力者なんです!信じてください!」

「分かった分かった。信じるから。ほら。千円あげるから…もう行きな」

「な…!?貰いますけど…!」

「これからも精進しろよ。負けるな」

「余計なお世話ですよ!さよなら!」

顔を真赤にして千円札をふんだくった彼女はそのままノシノシとした足取りで先へと進んでいくのであった。


エルフの魔法使いであるマリスのいない暇な一日はこうして過ぎ去っていくのであった。

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