大きな出費 /三題噺/剣/皿/サイン

雨宮 徹

大きな出費

 和美は目の前の皿を目にしながら、うっとりとしていた。マイセンのマークである交差した剣が和美の心を満たす。

 正直、今回の出費は痛かった。でも、ご近所さんとの交流会でこのお皿を披露すれば、優越感に浸れる。

 そう思うと購入するのに躊躇はなかった。気づいたら、サインして購入していた。

 そんなふうに考えていると、飼い猫のタマが部屋に入ってきた。うちの子は少々やんちゃ。

 皿を丁寧に包装し直している時だった。タマが机に乗ってきた。

「タマちゃん、危ないから降りなさい」

 タマは降りる気配がない。それどころか和美に向かって飛びかかってきた!

 向こうはじゃれているつもりかもしれないけれど、今はそれどころじゃないわ。

 その時だった。避けようとした和美は皿を取り落とす。

 ガッシャンという音が部屋に響き渡る。

「せっかくのお皿が……」

 でも、タマを責める気はそうそうない。

 独身の和美にとって、唯一の家族なのだから。

 

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大きな出費 /三題噺/剣/皿/サイン 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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