第5話
姫と出かけてから3日経ち柏木からラインが来ていた。
〈飲み行かね?〉
久しぶりだしまあいいかと思い返信する。
〈いつ?そしてどこで?〉
〈明日あいてる?船橋でどう?〉
〈空いてる。なんでそこ?〉
〈彼女がそこで飲むらしいから俺らもそこでいいかなって。なんかクラスの女子会やるらしい。〉
〈まあいいよ。何時集合?〉
〈彼女が6時からだから俺らもそれに合わせよ。〉
つくづく彼女に合わせる野郎だなと思い、断る理由を探したが見つからなかったので行くことにするか。
柏木の彼女は専門時代俺らと2年間同じクラスで俺経由で柏木と仲良くなった人だ。
名前を大山佳苗と書いておおやまかなえと言う。
佳苗は1年生の頃俺と仲良くなり、両親の仲がとても悪かったらしく心を病んでいた。
俺は半年毎日相談を聞いて夜中に会いに行ったりして励ましていた。
最初は死んだ目をしていたが徐々に元気になっていき、色んな人に心を開いていき、2年生になる頃には、クラス内でも友達がたくさんできていた。
その流れで俺と仲良かった柏木と出会いよく3人で遊びに行っていた。
学校終わりに飲みに行ったり、休日休みをそろえて日帰り旅行に行ったりとだいぶ楽しんだ。
たまには学校をサボってカフェに行くことなどもした。
そして卒業前の1月に佳苗から柏木が好きだと相談された。
俺は多分佳苗のことが好きになっていたんだと思う。相談された時に気がついたが。
モヤモヤを抱えながら相談に乗り、嘘つくこともできたが、柏木が好きな歌手や食べ物、どういう髪型、服装が好きか色々教えてあげた。
そして3人で行った卒業旅行で告って無事付き合えた。
俺は少し気まずかったが、佳苗が元気になったことを素直に喜んだ。
柏木も佳苗も俺が好意あったことを知らないし責める気にもならなかったが、少し会いたくなくなっていた。
その中で2人といやでも会いそうな飲み会に誘われあんま楽しみになれていなかった。
それなら姫と飲んだほうが楽しいに決まっている。
だが、吐いた唾は飲めないのでいくことにした。
船橋駅待ち合わせで6時ぴったりに着いたがなかなか来ない。イライラしてきたのでタバコの吸えるカフェに入った。
遅れるなら連絡のひとつくらいよこせないのかな。と思いながらタバコに火をつけコーヒーを嗜んだ。
やっと連絡きたのは15分たったあたりだ。
〈ごめん佳苗送ってから行く。どこにいる?〉
〈カフェ〉
〈おけ〉
もう少し詫びの言葉があってもバチは当たらねえぞ。
そこから10分たって柏木がやっと姿を現した。
どこに行くかを話して軽くご飯食べてからBARに行くことに決まった。
少し小洒落た洋食店にはいり、柏木はハンバーグセットを、俺はビーフシチューのセットを頼みワインを各々頼んで食事が始まった。
「最近どうなの?戻ったんでしょ?」
と柏木に問われる。戻ったとはきっと俺らがバイトしていた頃のレストランなって意味だろう。
「うん戻った。やっぱチーフも副長もあったかい。それと最近村林さんと仲良くやってるよ」
「へえ。俺話したことないかも」
「そうかい。まあ俺も戻ってから初めて話した。そっちは?うまくやってるのか?」
「うん。2人で住もうと家探してるところ」
「そうか。まあ頑張れ」
そっけなく返して料理を口に運ぶ。
んーそんなにだな。期待しすぎたかな。
「あんまり美味くないね」
柏木もそう思ったらしい。お互い料理人の為少し評価が酷になる。
「まあ値段通りなんじゃん?少し安かったし」
「まあ確かにな」
「ビーフシチューもそんなに。酸味が目立ちすぎてて独立してる」
「こっちはデミグラスソースがいまいち。もったいない気がする」
「だな」
お互いの少しずつ分け合って食べたが確かにその通りだった。
「よし行くか」
お互い食べ終わり店員に伝票をもらう。
「佐倉さん奢ってもらっていいですか?」
少しニヤついて行ってきた。なんとなく想定はしていたが、お前働いてるよな?俺は辛い中すごい頑張って働きに行って、行けない日もあるのに奢らせるか。
「お前金ないの?」
「2人暮らしに今金貯めてて」
「ちっ、まあいいわ」
「あざっす!」
俺は元好きな人とその好きな人を取ってっ行ったやつの2人暮らしのためにここを払わされた。
まあいいや。怒っても仕方ない。
そして2人で夜風と酔っ払いの騒がしさが混ざった夜道を歩き、近くのBARに来た。
「俺はジョニーウォーカーのブラックラベル、ロックで」
「サングリアで」
席につくなりメニューを見ずにお互い言った。
大体のBARは置いてあるだろうお酒だ。
「まだサングリア好きなのか」
と柏木に言った。
「お前決めるの早すぎるから頭にパッと浮かんだやつ頼んだだけだわ」
早かったらしい。まあ席につくなり頼んだからそりゃ早いか。
「どうせ俺の奢りなんだろ。ならつべこべ言うな。それに俺は女性にしかそういう気は回さない」
「あざっす佐倉さん」
空っぽの響の感謝を受け入れ運ばれてきた酒を一口煽った。
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