第3話 白金佐倉と村林由美 2


 8月も終わり、9月に入ったがまだまだじとっとした空気がまとわりつく中、俺と村林さんは千葉の街中に遊びに来ていた。

 きっかけは村林さんがシフト変わってくれたお礼にラーメンを奢ると言い出した事だった。

 村林さんは華奢な体からはまるで想像できないが、ラーメンがかなり好きらしく仕事終わりによく食べに行っていた。

 ちなみに豚骨が彼女のイチオシだ。

 普段は全く食事という食事をしているところは見たことないのに、ラーメンは胃に入るらしい。ちなみに普段は賄いを食べないで、フルーツやお菓子をちまちま食べている。リスみたいでとても可愛らしい。

 職場近くや家の周りにあるラーメン屋はだいたい2人で行ってしまってせっかくなら遠くに食べに行こうという事で千葉の街中にある豚骨ラーメンを食べにきていた。

「ここかな?」

 不安そうな声で問いかけてくる。まあ気持ちはわかる。ネットで人気な豚骨ラーメンを調べてここまできたわけだがいかにも老舗感が強く、入っていいのかもわからない。

「まあ地図見る限りここだな。一応やってるがここでいいか?」

 「まあここまで来たしね!しかもこういうお店ほど美味しいっていうじゃん?」

 まあ彼女がいいと言うのならいいのだろう。

 中に入ってみると外見とは裏腹にやけに小綺麗な内装だった。いや、綺麗なわけではない。ただ外見から見たら綺麗に見えるだけだ。

 カウンターに座り、2人共普通の豚骨ラーメンを頼む。ちなみに俺は味玉をトッピングした。彼女の奢りなのだ豪勢にしてやろう。

 世間話を始めてすぐにラーメンが来た。本当にあっという間だ。俺らがくる前から茹でてるのかと疑いたかった。

「いただきます」

 俺は彼女と料理に対して敬意を払いいただきますをし、一口啜った。

 いやはや、なかなかどうして、見た目は普通の豚骨ラーメンとかわりないのだ。なのにどうだこの口に広がる旨味の暴力。

「こいつは、傑作だな」

「いっただっきまーす!ん!やば!」

 ラーメンが提供されてきたスピードに負けないくらいの速さで言葉が口から飛び出していた。

 おい、若いレディが口に物を入れながら話すな。

 と言う言葉と共に口の中のラーメンを飲み込んだ。言葉にしたらめんどくさいことになるのは見えている。口喧嘩もわざわざしたくないし、なったとしてもわざわざ勝とうとしないから、負けは必然。負ける戦いはしないのだよ。

 それからはお互い黙々と食べ進めた。途中彼女がチャーシューを渡してきた。毎回の如く受け取る。脂身が苦手らしい。美味しいのに。

 追いご飯をするか悩み、やめたところで2人で店を出た。

「ごちそうさん。なかなかうまかったな」

「それな?やばかったね!」

 さてこれからどうするかだ。まだ昼の1時だ。もし解散になったら茶店にでも行って本を読もう。

 と模索しながら歩いていたところ、彼女が後ろから声をかけてきた。

「どーしよっかこの後」

「んーどうするか。どっか行きたいところあるのか?」

 全て相手に任せられる質問をした。

「しろは?」

 困った全く同じ事をリターンしてきた。ちなみにしろとは俺のニックネーム的な物だ。白金だからしろ。安直。

 ちなみに俺は姫と呼んでる。呼び始めたか。今日行きの車で決めた事なのでまだ慣れていない。お姫様みたいにわがままだから皮肉を込めての姫と呼んでいるのだが。相手は下僕をゲットした感覚らしい。まあ執事みたいに振る舞うのは慣れているし俺も納得しているからこれに関してはなんとも思っていない。

 さて行きたいところか。

「喫茶店は行きたいけど、姫行きたいところないの?」

「じゃあ喫茶店とりま行こ!おすすめな店あるの?私は喫茶店の次を任されることにするよ」

 なるほど。なら文句はあるまい。

 そして俺は千葉に行きつけの喫茶店がある。いつものでって言えばキリマンジャロとトーストが出てくるくらいに通っていた喫茶店だ。味は東京や、有名どころを巡った俺が保証できる。

「最高の喫茶店が近くにあるよ」

「おおっ!しろさんおすすめ喫茶店!ちなみに私はコーヒー紅茶のめないからね?」

「大丈夫ジュース類も豊富だから」

「ちなみにタバコは?」

「俺が通うところだぞ?」

「理解した。そこ大事だから」

 お互いタバコを嗜むから割とカフェ選びはそこ重要になってくる。ちなみに俺はマルボロを、姫はピアニッシモだ。

 と、まあ俺は昔からタバコを嗜んでいたのでカフェより喫茶店の方が好きだった。

「じゃあ道案内よろしく!」

「かしこまりました。姫」

 格好つけて返事をし、道案内を始める。

 車をショッピングモールの駐車場に止め、喫茶店まで歩いた。

「おばちゃんこんにちは〜今日はいつもお世話になってる人連れてきました」

 ドアを開けいつも出迎えてくれるおばちゃんに声をかけた。

「いらっしゃいませ。あらそうなの?ゆっくりしていきなね〜」

 おばちゃんと軽い挨拶を交えてマスターにも会釈をする。姫はなんか少し緊張してる風に見えた。

「同じお店の子?」

 おばちゃんが席に水を持ってきてはなしかけてくる。

「はい!しろ、白金と同じレストランで働いてる村林です!白金がおすすめしてくれて今日はきました!」

「あらそうだったのね。これメニューね。佐倉くんは今日も同じのでいいの?」

「はい。お願いします。後今日は生チョコをつけてくれるかい?」

「はいよ〜お嬢ちゃんもゆっくりきめていいからね」

「はい!ありがとうございます!」

 元気に返事をしてメニューをペラペラめくり始めた。

「コーヒーってこんなに種類あるんだね」

 と感心しながら聞いてきた。そして、

「なんかわからない飲み物がめっちゃある」

 ジュース類もわかりやすいものもあるのだが、カクテルみたいな名前の飲み物もたくさんあった為、姫が困惑していた。おそらくだが紅茶ベースのページなんだよな、そこ。

「無難にココアにしようかな?どう思う?他に何かおすすめある?」

「俺はいつもコーヒーしか飲まないからな。ココアが飲みたいならいいんじゃねえか?」

 タバコに火をつけながら悩み始めて、長くなりそうと予感したが案外すぐ決まった。

「アイスココアでお願いします!後レアチーズケーキもお願いします!」

 と、おばちゃんとマスターがカウンターの奥で作業してるところに叫んだ。うんまあ聞こえるだろうしそれでいいか。こちらとしては少し恥ずかしかったが、それは置いておこう。姫が楽しめてるならそれに文句は言うまい。

 

 

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