第2話・都市伝説ラーメン店【ル】
相手が指定した日時に公園に行くと、ベンチに太めの男性が座っていた。
顔に噴き出た汗をタオルで拭いている、男の汗線から出ているのは背脂ではないかと思うほど変な脂ぎった汗が出ている。
オレは背脂の汗をかいている、男に話しかけた。
「はじめまして、あなたがマヨイガ麺【ル】の、コトを少しSNSに書いていた常連客の方ですか?」
ラーメン太りの男は、オレを一
「悪いことは言わない……あの店のコトに触れた書き込みは忘れろ、あの店のラーメンには近づくな、書き込みは削除した」
「マヨイガ麺【ル】は、実在したんですね……教えてください、どうしても伝説の店のラーメンが食べたいんです。店はいつ開店するんですか? どこにあるんですか?」
「どうしても、忘れるコトはできないか……あのラーメンは、一度食べたら後悔するぞ」
「自己責任です、あなたには迷惑はかけません……店が開店する日時は、どうやって知るんですか?」
男は説得を諦めたような口調で、苦笑しながらオレに言った。
「頭の中にラーメンの方から、連絡してくる……オレは、もう利用価値がない用済みらしい」
(ラーメンの方から連絡してくる? 用済み? なんのコトだ)
ラーメン太りの男は、オレにポイントカードのようなモノを差し出してきた。
「それを持っていれば、ラーメンから連絡が入る……店に行く行かない、食べる食べないは。あんた次第だ」
◇◇◇◇◇◇
次の日──会社のデスクで、マヨイガ麺【ル】のラーメンのコトを考えて窓の外を眺めていたら。
机の上に、コトっと何かが置かれる音がした。
見ると栄養ドリンク剤の小ビンが置かれ、アラフォーの女性上司が、上から目線で睨んでいた。
ドリンク剤は部下を気遣う優しさから置かれたんじゃない。
これ飲んでしっかり仕事しろの、無言の圧力だった。
(はいはい、わかりましたよ……仕事しますよ)
オレは女性上司の、最近ポッコリ出てきた下腹部を横目でチラッ見しながら、ドリンク剤のキャップを開けて茶色の容器の中に入っていた炭酸液体を飲んだ。
◇◇◇◇◇◇
その日──会社が休みだったオレが、美味いラーメンを探し求めて街をブラついていた時。
突然、頭の中に言葉が流れ込んできた。
その現象を表現するのは難しいが、イメージのテレパシーとか天啓といった感覚だった。
(もしかして、これがあのラーメン太り男が言っていた。マヨイガ麺【ル】のラーメンからの連絡? わかる、店の場所がなんとなくわかる)
オレは頭の中に浮かんでいるイメージに従って、街の目立たない路地裏にあった住宅が店舗改装がされた場所へと導かれてやって来た。
以前、誰かが何かの飲食店をやっていたのだろうか。
よく見れば、店舗らしき外装も少ししてあるが普通なら、気づかずに通り過ぎてしまうような場所だった。
かろうじてラーメンの香りが外に漂っているので、ラーメン店だとわかった。
店の前には簡単な丸イスが置かれ、すでに数人の客が開店するのを待っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます