第4話 誕生日会
私が九頭龍学園幼等部に入園してから1週間がたった。
「今日、4月15日は俺たちの知識担当、国士水斗君の4歳の誕生日だよ」
週初めの朝礼が終わって教室に戻って早々、久慈先生が誕生日ケーキを2つ持ってきた。
ってかなんで担当分けされてたんだよと今となっては思うね。
「なんでふたつもあるの?」
同じクラスの女の子が先生に聞いた。名前は確か、
「良い質問だね。猩華(しょうか)ちゃん」
仁佐猩華(にざしょうか)ちゃん。名前の猩は濃い赤色を、華はそのまま花を表している。
赤い花、つまりは真っ赤な薔薇のように可憐で美しい子になって欲しいとの願いでつけられたそう。
「実はね、この前の4月1日は煌羅ちゃんの3歳の誕生日だったんだよ。だからそのお祝いもって思ってね」
「なるほどね、おしえてくれてありがとう。でもなんで?」
「ん〜と、それは水斗君からそうしてって言われたからで」
「わがままおうじ」
「猩華ちゃん、そんなことは言ったらダメだよ。水斗君がダメージを受けてしまうよ」
そんなやり取りの中、案の定、水斗は心にダメージを受けた。それは「ぐはぁっ」と言いながら血反吐を吐くかの如く状況だった。
「みなとくん、きららちゃんのことすきなの?」
またまた水斗にダメージ。やめてあげて猩華ちゃん。彼のライフはもうゼロよ。
「さあ、誕生日パーティーをはじめよう水斗君、煌羅ちゃん、誕生日おめでとう」
久慈先生の合図とともにみんなが「おめでとう」と、続けて復唱した。そしてポツリと
「けーきにゅうとう」
というつぶやきが聞こえた。まぁ、犯人はだいたい予想が着くけど。
誕生日パーティーはケーキを食べるだけではなかった。入園1週間ということで、親睦を深めるためのレクリエーションも兼ねていた。
「さあ、4人1グループになってください。」
久慈先生の声がクラス中に響く。私は水斗と猩華と一緒になった。
「あとひとりはだれにする?」
「そうだね、きららちゃんはだれがいい?」
「うーん」
「あのー、そのー、ぼくもいっしょのぐるーぷになっていい?」
私と猩華が話しているとある男の子が話しかけてきた。
「良いよ。2人とも良いよね?」
即決の水斗。確かにこれを断って他を当たるよりかは効率的だとは考えられるけど、園児だった私たちは何も考えずにOKした。
「じゃあ仲良くなるためにグループでゲームをしよう。隣のとなりって言うんだけど、みんな知ってるかな?」
「知らなーい」
久慈先生のといにみんなが答えた。みんな知らないに決まってるよ。だってまだ3歳なんだもん。水斗だけは4歳だったけど。
隣のとなりというゲームはその名の通りである。まず円になり、1人が自己紹介をする。そして隣の人が『○○の隣の○○です』と言う。そしてそのまた隣の人が『○○の隣の○○の隣の○○です』というように続いていく仲を深めるためのゲーム、もといレクリエーションなのだ。このレクリエーションはあとの方になればなるほど覚えなければ行けないものが多くなり難易度が増すある意味鬼畜ゲーである。
「それじゃあ、お題は名前と将来の夢にしよう。グループでじゃんけんして勝った子から時計回りでいこうか。さあ、楽しい楽しいゲームのはじまりだァ」
「デスゲームかよ。まぁええわ。こっちもやるぞ。最初はグー、じゃんけん」
水斗✊
??🖐 煌羅✊
猩華 ✊
「ぼくからだ。ぼくのなまえは、あるね あおい。しょうらいのゆめは、ほいくえんのせんせいです。よろしくおねがいします」
「将来の夢が保育園の先生の歩音葵衣の隣の国士水斗。将来の夢は芸能マネージャーです。」
「しょうらいのゆめがほいくえんのせんせいのあおいくんのとなりの、しょうらいのゆめがまねーじゃーのみなとくんのとなりの、てんせいきららです。しょうらいのゆめは、おかあさんみたいなじょゆうになることです。」
「しょうらいのゆめがほいくえんのせんせいのあおいくんのとなりの、しょうらいのゆめがまねーじゃーのみなとくんのとなりの、しょうらいのゆめがじょゆうのきららちゃんのとなりの、にざしょうかです。しょうらいのゆめは、しょうせつかです。」
多少は言い淀んだり、詰まったりしたが何とかノーミスでクリアした。
「終わったかな?それじゃあみんな立って。さっきのじゃんけんで勝った子を前にして発表した順番に並んで、前のこの肩に手を置いて。」
しばらくの沈黙の後、
「チキチキ、じゃんけん列車〜。イエーイ、ドンドンパフパフ〜。」
それから隣のとなり→じゃんけん列車のレクリエーションが始まった。はっきりいって疲れた。人が増える度に自己紹介に言うものが増えていったから。
長くなりすぎて2days開催となった。まぁそのおかげで好きな物や将来の夢が一緒だったとかで仲良くなって行ったから結果オーライかな。
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