海3

「見とけよ~~~」


僕はそう言うと、口から種を思いっきり連発して袋に飛ばす。種マシンガンだ。


「え、すごい!私もやりたい!コツとかないの?」


「こういうのは見て覚えて身体で実践するのみ!」


僕がそう言うと、アリスは僕の真似をして種を飛ばそうとする。しかし種は全然飛ばすアリスの下の砂浜に落ちる。


ひゅっと空気の音が出ただけである。


「フハハ、これに関しては僕の方が上手いな」


僕がそう言った瞬間、アリスの口から種がマシンガンのように出てくる。

二回目の挑戦でもう種マシンガンを習得したのである。


それにしても大量に出てくる。一体どんなに食べたんだと思いスイカを見てみると、もうスイカは半分も残ってなかった。

まじか、僕まだ二切れしか食べてないぞ。どんな勢いで食べてるんだ。


そう思っている瞬間にもまたアリスは新たなスイカを食べ始めていた。


「んん、ん~んんんんん~~~ん」


アリスがスイカを食べながら僕に伝える。


「何言ってるか分かんねぇ」


僕がそう言うと、アリスは口の中に含んでいたスイカを飲み込むと、僕に向かって言った。


「もうこれは私の方が上手いね」


アリスは嬉しそうに、そして自慢げに笑った。


===


僕は重大なことに気づいてしまった。

いや、これは海に入る前に気づくべきだったのだが。


「僕たち...着替えなくね?」


「あ...」


そう、僕たちは着替えも持ってこずに、着た服のまま直接海に入ってしまったのである。

多分相当海を見てテンションが上がっていたのだろう。特にアリスが。あのアリスがこんなにはしゃいでいるのは初めてである。


「着替えどうするよ。どっかで買ってくか?」


「隼人に任せる」


その時、僕はある重大なことに気づいてしまった。


「服買ったら、帰る電車賃がねぇ」


そう電車賃がないのである。さっきスイカを買ったときにはもう僕とアリスの電車賃ぐらいしか残っていなかったのである。

後は少し飲み物を買えるぐらい。


つまり、電車に乗れないということである。


「どうするよ...歩いて帰るか?」


「でも歩いて帰るしかないんじゃない?」


「う~~ん」


僕は顎に手を当てて考える。

ここから歩いて帰るとなったらすごい距離だぞ。普通に三時間くらいかかる。

だが、歩いて帰る以外の考えを思いつかない。


「う~~ん。しゃーないか」


「歩いて帰るの?」


「うん。もうちょっと泳いでから帰るか」


まだ時刻は正午である。

十七時ぐらいに着いたらいいだろう。あと二時間ぐらいは遊ぶことにした。


「じゃ、泳ぐか」


「うん!」


アリスはまたしても僕の腕を引っ張って海にへと飛び込んだ。


===


「なぁ、三時間って舐めてたけどさ。もう足が棒になりそうなんだけど」


「まだ一時間ぐらいしか経ってないよぉ」


「体感もう三時間経ってるんだけど」


僕たちは海から家への帰路に就いていた。

海で濡れた服たちはもう乾きかけていた。

アリスの長い髪ももうほぼ乾いている。


「アリス~~、なんかテレポートとかできないの?」


「無茶言わないでよ...透明になるしか私能力ないよ」


「やっぱり無理か」


ダメもとで聞いてみたが、やはり無理だった。

ちらっとアリスの方を見てみると、アリスは全然疲れて無さそうだった。あんなに泳いだのに。


「なんでアリスはそんな平気そうなんだ?」


「まぁ私神の世界でも体力はあったほうだから」


そう言うと、アリスは両腕を肩まで上げてマッスルポーズをする。

だがその腕は細くて白い。


「おんぶしてあげようか?」


「して欲しいけど...出来るの?僕軽い方じゃないけど」


「出来るよ。余裕余裕」


そう言うとアリスはおんぶするポーズをする。

少し周りを見渡したが、あたりに人は少なかった。

アリスの言葉にあやかって僕はアリスの背中に飛びのった。


「よいしょ」


アリスは僕をおんぶしたまま立ち上がり、そのまま歩いていく。

僕はしっかりとアリスに掴まる。


「大丈夫?重くない?」


「重いけど隼人ぐらいの体重だったら全然家まで歩けるよ」


「まじで!?すげーな」


その時、僕はある事実に気づく。


「なぁなぁ、服乾いてるから普通に電車乗って帰った方が良いんじゃない?」


「あ」


普通に盲点だった。服が乾いたなら普通に乗って帰ればいいのである。


「確かに」


アリスが足を止めて呟く。


「電車で帰ろうか」


「うん」


僕はアリスの背中から降りて、僕たちは駅にへと向かった。

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