ドッキリ

「どこに入れてたっけなぁ」


そう呟きながら、いろんなガラクタが入っている段ボールをあさる。一体これは何を繋ぐ端子なんだと思えるような形状の端子、小学校の時に作った図画工作の作品、探してたお気に入りのシャーペンいろんなものの中に目当てのものも入っていた。


「よし、あったあった」


未来に起こることを想像すると、少し笑えてきた。


「これを付けてと」


そして僕はそろ~と音を立てないようにアリスが寝ているクローゼットの前にまで近づく。そして音を立てないようにクローゼットを開ける。


中で寝ているアリスは僕がクローゼットを開けたことに気づかず、まだ眠っていた。

小さな寝息が聞こえてくる。


向こうを向いて寝ていたアリスが寝返りを打ち、こちらの方を向く。

ばれたか?と一瞬思ったが、アリスの目は閉じられたままだった。


アリスが自然と目覚めるまで暇だ。かといって何かすることもないのでじっとアリスの顔を見つめる。

すー、すーとリズムよくアリスの寝息が聞こえてくる。


寝ていて動かないと、人形と間違えてしまうんじゃないかというぐらいにきれいで可愛い。

まじまじとみたことは無かったが、人生で見たことある女性の中で一番キレイである。


うっすらとピンクの唇、長くて白いまつ毛、腰の前まで伸びた髪、小さい顔。全てがアリスのきれいさを際立たせているようだった。


こんなにじろじろ見られたらいやかな?と思い目線を上に逸らしてクローゼットの屋根を見る。真っ黒が屋根が広がっているだけだ。


「うーーん」


その時、アリスの声が聞こえアリスを見ると起きたようでグーと伸びをしている。目はまだ瞑っていて僕には気づいていない。


そして目を開けた瞬間、驚きの表情を上げて仰け反り、後ろの壁に頭を打ち付けた。


「イッタァ」


「大丈夫?」


僕は顔に付けていたものを取り外し、アリスを見る。


「うん、まぁね」


アリスは頭をさすりながら起き上がる。

そしてぷくっと頬を膨らませながら僕の方を睨みつける。


「急に何さ。ビックリした」


アリスの視線は僕の顔から僕の持っているものにへと移った。


「ああこれ?」


僕は手に持っていた鬼のお面をアリスに見せる。

しかも節分の時に子供に対して鬼役として被るような可愛い感じのお面ではなく、ガチの怖い鬼のお面である。


「しまってたのを急に思い出したから、アリスにドッキリ仕掛けてみようと思って。どう?ビックリした?」


「そりゃビックリするよ」


「良い反応してくれて満足満足」


そう言いながら僕はお面を元あった場所に戻した。


「よっしゃ!今日は何するよ」


===


近くに人の気配を感じて、僕は目を覚ます。

大きな伸びをしてから僕が目を開けると、そこには鬼が居た。


「うわ!」


驚きのあまり勢いよく飛びあがって鬼とぶつかる。いや...鬼ではなく、鬼の仮面をかぶったアリスにぶつかってしまった。


「「イタッ!!!!」」


二人の声が重なって、二人ともベッドに転がった。

アリスの声を聞いて、僕がドッキリを仕掛けられたことに気づく。


数秒の時間を置いてアリスが起き上がってくる。

馬乗りの体勢だ。アリスがやってきた時の状況を思い出す。


「びっくりした?」


「ハハ、人生で二番目にね」


「フフ、じゃあこれでおあいこだね」


二人で笑いあう。


アリスは鬼の仮面を取ってベッドのそばに置いた。

アリスの額にも、僕の額にも赤い痕が付いていた。


最近、アリスの僕に対する態度がだんだんと変わってきたように感じる。

心を許してくれているというのが一番正しいのだろうか。素の表情を見せてくれているように感じる。


最初と比べて、とても進歩したようで嬉しい。

アリスと楽しく過ごす日々はとても楽しい。


ずっと続いてほしいとそう思う。


そんなことを、アリスの顔を見ながら考えてしまった。



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