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3人と1匹を乗せた馬車は、ようやく王宮へ着いた。早く会場にやって来て社交に勤しむ貴族は、ティナーリア達のようにギリギリに来ることはないだろう。
人目に慣れていないティナーリアを考慮しての事だ。
会場の入口に着くなり、警備に当たっていた第三騎士団の隊員に呼ばれ、アレックスはその場から離れてしまった。
エナも先程、父である子爵に挨拶に行っていて今はいない。
「ねぇソル、中にお父様達がいると分かってても、ここに1人で入る勇気は私には無いわ。どうしよう・・・」
(アレクが探しに来るまで中庭にいればいい。
シルフもいるんだすぐに場所は分かるだろ)
「そっか。そうだね、中庭で待ってよう。久しぶりだねソル、ちゃんと覚えてる?昔はよくお父様達を中庭で過ごして待ってたわね」
(当たり前だろ、ほら早く行くぞ。)
ふんっと鼻を鳴らしながらも、しっぽを揺らしながら先に歩き始めてしまったのを急いで追いかけた。
さすが王宮の中庭といえよう。中心に立派な噴水があり、花壇には季節の花が綺麗に咲いている。ベンチに腰掛け、足元にソルが座る。
「すごいわ、ほんとに誰もいないのね」
(他国の王族とかも来てるんだろ。みんな顔売るのに必死なんだろ。)
「私はだめね、人目が怖いからって逃げてばっかりよ。何も無いわ。」
(何を言う、精霊王の愛し子だぞ。お前たち兄妹がいるから、能無し王族でもこの国は安泰なんだぞ)
「それは言い過ぎよ。でも・・・」
(あぁー!ティナだー!)
(何してるのー、遊ぼー)
(クッキーちょうだい)
(僕の育てた花みて〜)
遮って明るい声で口々に寄ってきたのは精霊達だ。
「あら、みんなもこんな所で遊んでいたのね。ごめんなさい、今はクッキー持っていないのよ。」
明るい精霊達と楽しくおしゃべりしていると、アレックスの守護精霊シルフが呼びにきた。
(ティナ〜アレクが探してるわよ、会場の入口で待ってるって)
「まぁ、ほんとに、シルフありがとう!ソル行こう」
(ティナまたね〜)
精霊達に手を振ってアレクの待つ場所へ向かう。
ティナーリアが中庭にきた時から今庭を出ていく所を、歓喜と感涙の眼差しで見ていた人物がいた。
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