5/23 8:17

 「おはよう!今日の試合時間同じだけど、見れたら応援するから、私のことも見つけたら応援してね!」

 日曜の朝、誰もいない信号の前で文面を見る。いつもだったら、こういう信号は無視するが、そんな気分にもならずに律儀に青信号を待つ。

 自宅から競技場までは徒歩で約10分。今日の10分は異様に短く感じたが、その理由は彩希の高校のジャージ姿の男子を到着間際に見てしまったからであろう。

 市内で行われている大会なのだから、会うのは当然だが、警戒したことによるストレスが自分の高校のテント位置に向かう足を重くさせる。

 俺が通っている高校は、偏差値が県内トップの学校である。中学の時から惰性で勉強してたおかげで自宅にも程よく近いとこに合格できた。こんなことを言うと、高橋らによく軽くたたかれるが、事実はしょうがない。

 先輩や同級生と軽くあいさつを交わし、荷物を置く。

「おはー。走れそ?」

 リュックを下ろしながら、ちょうど俺の後に来た、宗也先輩が話しかけてきた。

 宗也先輩は俺と同じハードルをやっていて、ゲームの趣味とかかなり合う。そのため、入部したばかりだが仲は良い。

 「あざっす。まあいけんじゃないすかね。」

 「やる気ないなー」

 「先輩もそんなテンション高くはないじゃないすか」 

 どうでもいい会話の後、顧問の先生が来て、軽くミーティングを行う。

 彩希も自分も傷つけないようなLINEの返信をその間に考えると、歯茎にため息が引っかかった。

 「おはよ、互いに自分のベストパフォーマンスできるようがんばろ。」

 すぐについた既読には気づかないふりをした自分に、少しだけ拍手を送りたくなった。

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想難者 白井 芽理 @siraimeri

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