第24話 中学受験と光
私、光は、この岬ヶ丘高校附属中学校に受験して、落ちたことがある。
私は、直人くんと同じ小学校で、同じ中学を受験して、私だけ落ちた。
……やっぱりちょっと恥ずかしいよね。すごくがんばったのに報われないというのは、とても悲しい。
当時の私は、やっぱり悔しかったし、私が受験するというのも周りが知っていたからこそ、市立へ行くのは大分抵抗があった。
でも私は、結局市立へ行って正解だったかもしれなかった。友達もいたし、嫌じゃなかった。
でも、一番悔しかったのは、きっと、補欠合格にも掠らなかったという、避けようがない事実だったんだと思う。
中学受験は、残酷なまでに、私のいる位置を突きつけたということだった。
だから、中学校で誰よりも努力して、誰よりも積極的にーーそうやって、少しずつ、心身共に擦り減らしてしまった。
疲れちゃったんだ。中学二年生の時は、中だるみがなんとか、最高学年になる身としてかんとか言われたけども。
一番荒れてた。厨二病みたいにもなってたし……いや、この話はやめておこ。黒歴史を掘り返す趣味はないので。
でも、小学校の時に落ちた中学に高校生の首席で入れたのは、すごく嬉しかった。
努力は報われるんだ、と初めて思えたのかも。
というか、これだけ憧れていた高校は、さほど学習過程が他より進んでいるというわけでもなく、高入生も中入生も混合のクラスだった。
正直拍子抜けしたけど、そのおかげでニコちゃんと会えたんだから、いいことだよね。
というかニコちゃんも高入生なのかな?中学校時代の話をほとんど聞かないし、ピアノがあれだけできるのに高校生まで埋もれていたとは思えない……。
でもどうやら、中学校からいるのは間違いないようで。
でもそこに踏み込むほど無神経に聞ける私ではないから、何も言わないけど。
ところでニコちゃんって本当に、最近すごく可愛くなったんだよね。
私は実は、高校二年生から海外に行くことになったのだけど。
というか、向こうーーアメリカだと九月に始まるから、また高校一年生の終わりから入る形になるのかな?
その話をニコちゃんにしたんだけど。
「……あ、そう……」
「何ーー? 反応薄いなぁ。何で?」
「いや……一緒にお昼ご飯食べる人がいなくなるから、ぼっち飯だなって」
「……かわいいなぁ」
思わず溢れてしまった。失敬失敬。
「なんて?」
「いや、ニコちゃんでも寂しいことあるんだなぁ〜〜と思ってぇえーー」
実際、極限寂しいのは私の方だけど。ニコちゃんと会えないのつらたん……。まぢむり……。
「…………」
恥ずかしい時は黙るニコちゃん。出会って初めは表情が見えなさすぎたけど、最近わかりやすくなった。
「寂しいなら直人くんと食べればいいんじゃないーー?」
「……な、何で直人」
「さぁ? なーーんーーでーーかーーなぁーー?」
「っ…………」
まぁ、バレーの試合の時の直人くん、普段とのギャップが半端ないからね。
惚れるのも納得ってわけよ。
わざわざ手も振ってくれたし、どうやら合唱コンクールの時もなんかあったみたいだし。
もしかして……。
この先を見届けられないのはちょっと悔しいなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私・笠島ニコは危なげなく高校二年生に進級した。
ヒカリは二年生になるとともに海外へ行ってしまったので、めでたく私はぼっちである。
……入学式を思い出すな。
まあ、正確には裕海と椎奈と直人が同じクラスなので、もうぼっちではないが。
しかし、三人にはそれぞれ仲のいい人がいるので、そう、どっちみちぼっち。
語感がいいが私は心穏やかではいられない。流石に高校二年生でこれは社交性が無さすぎるかもしれない。
困った……。
まあ、4月はほとんど、いつも通りテラスでぼっち飯を食べていたわけだけど。
ある時、誰かが話しかけてきた。
「……さん、………笠島さ……聞いてねぇな……おい、笠島!」
「…………はい?」
本を読んでいて全く気づかなかったが、誰かに名前を呼ばれていた。
「何で一人? そんなに友達少なくないでしょ?」
誰。こいつ。何だこの男子馴れ馴れしいなどっか行って欲しい……。
「……あ。ほら、喜多山喜多山」
「…………あーー」
名前を聞いて私はすぐに図書室に移動することを試みた。
しかし、呼び止めてきた。
「ちょちょちょ。俺が何のようもなくお前に話しかけるわけないだろ!? 話くらい聞いてくれても……」
「いや、めんどくさい。今すぐ図書室に行ってのんびりするから邪魔をするな」
あえて冷たく言ったのだが、喜多山はひかなかった。
「……なんか、お前に会いたい人がいるってよ?」
「は?」
誰だろう。喜多山の話だと後輩だそうだが……。
「……あ、笠島さん」
「笠島さんだーー」
人懐っこい二人の高校一年生の女子と、中学生……?の男子だった。
「髪、綺麗だねぇ」
「ねー」
二人が私を見て笑い合う。
「私たち、ピアノ弾いてるんですけど……笠島さんの噂を聞いて、見てくれないかなってーー」
あ、そっか。違う形で会いに来てくれたのかな。
そう思うことに、しておこう。
「ありがとう。勿論」
二人の弟と妹のような後輩に、五年前彼らそうしたように、はにかんだ。
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