第15話

 文化祭は苦手だ。

 私の学校の文化祭は三日間で、三日間全てに教室の出し物がある。部活があるともっと大変らしいのだが、幸い私は帰宅部。その日の自分の担当が終わればフリー。

 一つ問題があるとすれば、直人もヒカリもみんな部活に入っているので……。

 端的に言えば、ぼっち。することがなくなるのである。


 まあ、ヒカリや直人のところへ行けばいいだけの話。暇ではないだろう。


 そうして一日目の受付を終えた私は、まずヒカリのパソコン部へ向かった。

 「あ! ニコちゃんいらっしゃーい。受付終わったの?」

 と明るく出迎えてくれるヒカリ。

 「うん。終わったから暇人になった」と軽く答える。

 「あはは。パソコン部もあんまり人来なくて暇人だよ……あ、ところで」

 「……ところで?」

 「今直人くん来てるんだよ〜。因みにパソコン部はね、タイピング競争と自作ゲーム体験! どっちやる?」

 自作ゲームって、すごいな。これは、素直に。

 「暇だからどっちもやろうかな」

 「よっしゃ!」


 そこにおぼつかない感じでタイピングをしている直人がいた。

 「あ……ニコさんもきたんだ。僕あんまりタイピング慣れてなくて……」と本当に困ったような顔をしている。

 「んふふ。直人くん今のところ最下位だよ……がんばってー」とニヤニヤしながら茶化している。

 「ぁあ……」と頭を抱える直人。

 「さあさ。ニコちゃんどうぞ!本気でやってねっ」

 「う、うん」

 勧められて椅子に座る。

 「……そういえばニコさんってピアノ……」という直人の呟きが私には聞こえた。

 「制限時間は1分っ! よーいすたーと!」


 1分後、私はその日で1番いい点数を叩き出した。


 「おほー。流石ニコちゃん。ピアノ得意なだけあるねっ。パソコン部入らない?」

 「いや……あんまり部活は……」

勧誘されてしまった。

 その後、ヒカリが作ったという自作ゲームを直人と見て感嘆した。

 「ゲームってどうやって作るの……?」と私が聞くと、

 「え?いやこうやってかたかた……」とパソコンのキーボードを叩く仕草をしてみせる。

 「それはそうだけど……どうやってプログラミングしてるの?」

 「んー……慣れちゃったからもう何とも言えないね」と曖昧な返答。


 その後直人と別れる訳には行かなかったので、二人でしばらく周っていた。

 そんなに特筆すべきでもないのでカット。

 ダーツや謎解きなどに行ったことくらいだろうか。思ったより直人は負けず嫌いなようで、ダーツの時は特に悔しそうだった。


 二日目はヒカリと一緒に直人のバレーボール部に行った。ゴールに挑戦する体験だったので、とんだ運動音痴の私はうまく行かなかった。

 椎奈と喜多山の卓球部のところにも行ったが、これも同様。うまく行かなかった。

 喜多山が私のぽんこつぶりを見て笑っていたのを椎奈に叩かれていた。ざまあない。


 三日目は一般公開のみで、生徒全員が教室の出し物をする。

 思ったよりぼっちではなかったのでまあよしとしよう。一人でも暇つぶしはできるが、やっぱり誰かといた方が安心するものだし。


 さあ、そんなこんなで文化祭は終了。

あっという間に合唱コンクールはやってくるのだった。

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