第13話

 早めに学校に行くと、まずヒカリが話しかけてくる。


「おはよーニコちゃん。どう?弾けそう?」


 元々の元凶であるヒカリはより気にしているようで、そわそわしているのが伝わってくる。


 「大体は、ね。まぁまだ突っかかるところあるけど、それを無視すれば……」


 後半は殆ど独り言になった。まだ未完成なんだけど。


「おっしゃ!」


 というか、気にするくらいなら最初から言うのを止めとておけば良かったのに……。


「じゃあ、放課後時間ある?お披露目お披露目!」

「は?」


 思わず間抜けな声が出てしまった。


「な、何をするの?」


 ヒカリが、んふふー、とにやにやしている。お披露目ってまさか。


————


 そして放課後。あたしヒカリは、ニコちゃんと歩きながら音楽室へと向かっていた。


「披露するなんて聞いてない」


 ぶつくさ言いながらも着いてきてくれるところ、ニコちゃんはやさしい。

 すると、少しの静寂を置いて、ニコちゃんが話し始めた。


「…先客がいるみたいだね」

「えっ?」


 耳を澄ますと、かすかにピアノの音が聞こえないでもない、けど……。

 そうしているうちに、ニコちゃんはノックをしてドアを開ける。


「こんにちは」

「……」


 ピアノを弾いていた誰かが、驚いたのか演奏を止めた。


 「……」と、ニコちゃんが何故か頭を抱える。

 「……」と、謎の演奏者は黙り込む。

 いや二人ともなんか喋りなさいよ。


「貴方が弖城祐海……か」

「……そう……なんで……わかったの……」


 厳しい静寂が漂う。

 二人がちら……とこちらを見た。

 も、もしや、私のせいだと思われてるっ!?

 し、椎奈ちゃんと喜多山くんに言われただけなのにっ!!


「ぇ、え、えーっと……」


 とその時。バァンっ!と扉が開いた。


「おまたせーっ!ご対面中ですかー!!」

「「「……」」」


 ほら、私じゃないじゃん。全ての元凶、この人。


「……私、帰る……」


 と、ニコちゃんが回れ右しようとする。


 「わーっ!!帰らないで!!」

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