第6話

「それじゃあ早速本題に入ろう。で、聞きたいことがあるんだって?直人」


 3人揃ったところで、私は自ら「聞きたいこと」とやらを聞いた。


「えっと……に、ニコさん」


 先刻ヒカリが言ったことを律儀に実行する直人。呼び捨てとまではいかなかったようだが、名前呼びに進化した。


「昨日の放課後、ニコさんが1人で何か話してるのを見たんだ。何かあったの……?」


 今まで話していたときの、言葉の詰まりや間投詞が消えている。

 ただそれだけで、彼が真剣であることが伝わってくる。


 そしてこの件だが、隠す必要もないだろう。


「まぁ、何かあったっちゃ何かあるけど」

「えぇっ!?じゃあやっぱゆーれ…………」


 どうやらヒカリは、直人から事情を既に聞いていたようだ。目に見えて困惑している。

 幽霊なんて、流石にそんなことありえないだろう……と思ったけれど。

 道路標識が喋るのも、同じくらいありえないことであるということに、それから気づいた。


「別に霊感あるわけじゃないよ」

「じゃあ何があるの……?」と心底困惑したような顔をするヒカリ。


 流し見していた本を閉じて、2人の目を見て言う。


「……今から私がどれだけ変なことを話しても、1回、何も質問せずに聞いててくれる?」


 そうして私はあの標識について、なるべく詳しく話し始めた。


「ほー…………そーゆーことね……うんうん……なるほどね」

「信じがたいけど……嘘じゃあないんだろうね」


 ヒカリと直人がそれぞれ反応する。


「じゃあちょっと会ってみる?多分大丈夫だと思うけど。……あ、そうだ」


 帰り道のルートを想像しながら提案してみる。


「私の家結構遠いし、ヒカリと直人とは偶然にも同じ方向っぽいから、折角だしその後、夜ご飯食べてく?」


「やったー!ニコちゃんのお母さんのご飯おいしーんだよね〜」今までにもきたことがあるヒカリはにやにやしている。


「じゃあ、連絡とってみる」と直人。やっぱり律儀だ。


「んじゃー私も〜。まぁ大丈夫だろうけどね」


 結果、2人とも大丈夫だそうだ。

 私も母に連絡をとらなければ。


『今日、夜に友達2人連れてくけど大丈夫そう?』

『了解!おいしいの作って待ってるよ!』


 じゃあ、また放課後にと直人とヒカリと別れる。5、6時間目は選択授業があるから、また話すのは放課後だ。


 にしても、あの標識、ちゃんと喋ってくれるかな。

 そうじゃないと困るのだ。

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