第4話

 あたしは江川光!元気いっぱいの女子高生!

 普段喋るのはニコちゃんだけど、まだ来てないから、今筒井クンと話してるんだ。

 その会話を略しながらお伝えしま〜す。

 どうぞよろしく!


 「江川さん、ちょっと聞きたいことが……」


 筒井クンから話を切り出した。ちょっと物珍しい感覚があるね。


 「筒井クンほどの優等生があたしに何の質問があるの〜?」


 「えっと……笠島さんのことなんだけど」


 ほほぉぉ〜ん……なるほどね。

 まぁ、ニコちゃんには黙っときますか。こう言うのは下手に第三者が手出しすることじゃないからね。ふふふ。


 「おうおう。なんでも聞いて〜」


 心の中でニヤつきながら、できるだけ柔らかい笑顔で応えた。


 「あの、僕ってちょっとだけ、笠島さんと家の方向が被ってて、昨日見かけたんだけど」


 なるほどね。一緒に帰ったりできたら『イイ』だろうなあ。


「笠島さんが、誰もいないのに、どこかに向かって独り言を言ってて……」


 ええ?ひとりごと?


 ニコチャンが?


 あのニコチャンが????

 

 「ニコちゃんが独り言……?」


 思わずそう呟いてしまった。


 「そういう性格じゃないって勝手に思ってるんだけど……江川さん、何かわからない?」


 あたしもニコちゃんがそんなことしてるとは信じ難い。心当たりを記憶の中から探ってみるが、まったく見つからない。


 「残念ながらわからないなぁ〜。ごめんね、でも機会があれば聞いてみる」

 「ありがとう」とはにかみながら、筒井クンは去っていった。


 うーん、独り言ねぇ。

 ニコちゃんは真面目タイプだし、何かあったのかなぁ?


 そう考えていると、突然横から聞き慣れた声が聞こえた。


 「おはようヒカリ」

 「……ひゃーっ!?!?」


 こっ、こんなタイミングよく!?


 「っおぅおっオハヨウニコチャン……」


 予想だにしなかった出来事に、オーバーなほどテンパってしまった。

 見ると、予想通りニコちゃんがかなり驚いてる……いや、ドン引いてる。ああぁ。


「なんか考え事してた?驚かせたね。ごめんね」

「いや、あ、ゎ、ううん」


 ニコちゃんはこういうところでちゃんと謝るのが偉いよね……私も見習わなくっちゃ……と、今はそうじゃなく。


「ニコちゃん!聞きたいことあるの!昼休みどっか3人で話せないかな!?」


 3人と思わず言ってしまった……ごめん、筒井クンっ!


 案の定、後ろの席のまとう雰囲気がびくっとしたような気がする。

 ほんとごめん。


 「……3人?」ニコちゃんが怪訝そうな顔をする。

 「そそそそう!えっと、えっと、ほらっ!筒井くん!」


 と、後ろにいた筒井くんががたっ!と机を鳴らして立ち上がり、だだだだーっ!とこちらへ飛んできた。


 「……聞きたいことか……いいよ」

 「やった〜ありがとね〜」


 そうしてニコちゃんは自分の席に戻って本を読み始めた。


 「ごめんね筒井くん…勝手に約束しちゃって」

 「い、いえ、むしろありがとうございます。そっちの方が気まずくないですし」


 確かに、そっか。


 「そうだねぇ。よし、じゃあまたお昼休みに〜」


 お昼休みの予定が確定した。一体どうなることやら。

 そうこうしているうちに朝学活のチャイムが鳴り始め、数人が駆け込んでくる。


 さてと…………


 ミステリー風に言うと『果たしてニコの謎の独り言は一体何なのか……?』

 昼休み、乞うご期待!


 「こらー江川。よそ見してニヤニヤしてないで早く立てー」

 「うぇえっ!?」


 気づけば号令がなされていて、私以外のみんながこっちを見ていた。


 「ひゃ、ひゃい…………」

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