霊視探偵 碧海 の事件簿 ~女子大生失踪事件!と怪しい彼女~
桔梗 浬
はじまり
はじまりは都市伝説と相場が決まってる
俺たちの周りでは、いろいろな情報が飛び交っている。遠くはなれた地域での出来事や、真実と思えるほど出来の良いフェイクニュースなど、それだけでお腹いっぱいだ。
その膨大な情報から人は何を求め、何を見極めていくのか……。
そんな中、ここ最近SNSをザワつかせる不可思議な出来事が起きていた。それは奇妙な都市伝説として、真しやかに囁かれている。
その記事は、「某有名公園で幽霊が現れる!」というモノである。
お昼時にもなると、記事にあるその公園は近くの会社員や暇を持て余している大人たち、子ども連れのママたちで賑わう場所なのだが、夜は全く違う顔を覗かせている。
昼間は涼しげな木陰を作る木々たちも、夜は月の光やオフィスの光すらも遮断し、かなり薄気味が悪い。終電も終わった真夜中に、こんなところを歩くのは駅前のタクシー目当てに通り抜けを試みる酔っぱらいか、スリルを味わいたいカップルくらいだ。
そんな夜遅い時間に、話題の幽霊は現れるという。
ザワザワ……。
風が吹く夜、木々のざわめきと共にそれは始まる。
「……ママ~? ねぇ~ママ~?」
暗く寂しい夜の公園に響く子どもの声。怯えたような小さな声で母親を求める声が聞こえる。こんな時間に子どもが出歩いているなんて信じられない。
声がする方角を探しても、子どもの姿は見当たらないと言うのだ。
あるカップルが、夜の公園で自撮りを楽しんでいた時この声が録音され、SNSに公開された。
この記事は瞬く間に拡散され、物議を醸し出している。
『誰かが後から録音したフェイクじゃね?』
『マジ怖えー((( ;゚Д゚)))』
『これ、側に誰かいるんじゃない?』
『友人が言ってたんだけど、この声を聞いた人は3日後に死んじゃうんだって…』
『その都市伝説知ってる!』
『ビデオじゃないんだし、ウソくせぇ~』
『最初に動画あげた人ってもういなくなったって聞いたよ』
確かにこの動画をアップしたカップルは、その後SNSの世界から姿を消した。
リアルで何かが起きたのか……別なアカウントに姿を変えたのか……、真相はわからない。
* * *
俺は時間潰しに見ていたネットニュースに、心を奪われていた。
この公園、俺が毎日通ってる場所じゃん。記事には某有名公園って書いてあったけど、写真を見れば一目瞭然。この噴水の形もまさにそのものだった。
「あそこにもいるのか……」
俺は約束の時間ギリギリに到着するのを狙って、部屋でスマホをいじっていた。今日もその公園を通るはずで、できればそんな現象に出会いたくはない。
なんて思いながら、爺ちゃんが生前お守りとして愛用していた数珠をブレスレットにしたアクセサリーを身につける。いわゆる魔除けだ。
公園の男の子。俺の心に小さな魚のホネ程度に引っ掛かったゴシップを脇にどけ、これから観る映画のことに意識を集中させる。
今日はクラスで一番人気の女子、円香ちゃんからのお誘いだ。少しだけ期待している自分がいる。今度こそ俺は男になる!
「爺ちゃん、行ってくる!」
俺は気合いを入れて爺ちゃんの写真に声をかけた。
服装もバッチリ決めたし、シューズもお気に入りのナイキを準備した。パンツも見られてもいい新品のおしゃれボクサーパンツを選んだ!
よしっ! 気合い十分。
俺は自分の頬を二度叩き、気合いを注入する。
この気合いが吉とでるか凶とでるか。
「行ってきます」
この時には男の子のことなんて、俺の頭からすっかり抜け落ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます