第3話 自身の力
目の前にある広場から死臭が漂ってきた。
(この奥にいる……)
そう感じた時、手の震えが止まらなくなる。
「怖いですか?」
「怖いですよ」
怖いに決まっている。広場に入ったら、ほぼ確実に死ぬのが分かっているのだから。だけど、逃げるなんて選択肢をするわけにはいかない。
もし俺が逃げてしまえば、シェルさんを見殺しにすることが明白。そんなことできるわけがない。
(結局、二度目も碌な人生じゃなかったな)
実家から追放されて、死ぬと分かっている戦いに挑まなくてはいけない。
そう考えていると、手に温かい温もりを感じた。
「え?」
手に視線を向けると、シェルさんが手を握っていた。
「ごめんなさい。私の所為でこのような状況になってしまって」
その言葉を聞いた時、俺の行動が間違っていなかったと実感した。
「気にしないでください。俺が決めたことですので」
最後の最後でこの人のために戦える。そう考えただけで二度目の人生も悪くはなかったのではないかと感じられた。
「じゃあ行きますか」
「はい」
シェルさんと共に広場に足を踏み入れると、まがまがしいオーラを纏った魔族が立っていた。
「やっときましたか。待ちくたびれましたよ」
「……」
「それにしても、まだ殺しそびれた奴がいたなんて思いませんでした」
魔族は俺に視線を向ける。その瞬間、体中が震え始める。
(ビビるな)
「まあいいでしょう。私の存在を知ったものは全員殺さなければいけませんし、早めに終わらせますか」
魔族がそういった瞬間、俺たちに向かって
すると、魔族は呆然とした表情で俺の方を見てきた。
「は?」
(あれ、なぜ守れたんだ?)
応用魔法である
そう思っていると、魔族は
(なぜ、防ぎきれるんだ?)
すると、魔族が俺に問いかけてくる。
「お前は何者なんだ?」
「魔導師」
「人族の魔導師でこんなあっさりと防げるものがいるわけがない!!」
魔族は大声を上げながら、無数の魔法を放ってきた。それを認識した瞬間、
その時、隣に立っているシェルさんが魔族に攻撃魔法を放って損傷を与える。
「やっぱり、あなたは、天才ですね」
「え?」
「幼少期の頃、ダイラルさんが天才魔導師だと言われていたのは知っています」
「ですが、それは昔の話です」
そう。昔はただただ魔法を勉強するのが好きだったから、天才とうたわれるほどの力を手に入れられた。
だけど、そんなのただの気まぐれ。あの時は、前世に存在しない魔法に興味がわいたからなだけ。
それに加えて、初級魔法の練習がすんなりと身についたから。だけど、現状は応用魔法も使えない落ちこぼれ。
だからこそ、実家からは追放され、弟からは蔑むよな視線を送られたんだ。
「違います。今もあなたは天才です。現に
「それは……」
そんなの俺にもわからない。
「時間も無いので率直に言いますね。ダイラルさんの強さは、初級魔法を最速かつ高精度で使うことが出来るところです」
「!!」
その言葉に目を見開く。
その瞬間、ボルが俺たちに魔法を放ってくるが、
「では、倒しに行きましょう。剣を持っているってことは前衛で戦えるってことですよね?」
「少々は……」
「前衛は任せます。私は援護いたします」
「はい」
そして、俺は鞘から剣を抜いた。
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