第6話 冒険者登録

 異世界の街並みは俺の世界とは違い簡単に言うなら海外感があった。


 中心に王城があり、そこから大通りが東門、西門、南門、北門までズドンと繋がっている。


 クリムの家は北側、比較的ゴチャゴチャしていない緑が多めの場所のようだ。開発はそこまで進んでおらず、自然そのままを残している。


 南門の方は水路が張り巡らされていて、そこだけ切り取れば水の都のようだ。名物の噴水など観光地としては良さそうだ。


 東門、西門は主に居住区で商店街などもある。人の動きはここが一番激しいそうだ。ギルドもここにあり、今俺達が向かっている場所。家やマンションのような建物、宿屋、いろいろあるが、綺麗に並んでいる。


「ここがギルドだ」


 ギルドを目の前にして俺は田舎から出てきた若者みたいな反応をしている。


 デカすぎるのだ。


 酒場みたいな感じで受付があって、クエストボードみたいなのがあって、ちょっと飲食スペースがあるくらいかと思っていたけど、そんなレベルでは無かった。


 クリムの後に続いてギルドの中に入る。


 入って正面には受け付けがたくさんあり、お姉さんやお兄さんが冒険者の人達を相手にお話ししているようだ。


「この時間はそんなに混んでないからスムーズに登録できるな」


「混んでる時間帯があるのか?」


「だいたい朝は混んでんだ、ダンジョンに向かう人もいるし、依頼を受ける人もいるって感じだな」


「なるほど」


「ほら、あそこあいてんぞ。行くぞコテツ」


 受け付けまで歩いて行っている間に周りのヒソヒソ声が少し聞こえてきた。


「孤高のクリムだ」


「美人だけど、誰も相手にしないらしいぜ」


 などと細っこいおっさんが話している。


 受け付けのお姉さんってだけあって綺麗な人だ。


 栗色の髪は肩まで伸びており、前髪は邪魔にならないような長さで揃えられている。


「こ、こんにちは!ルカニ・アーデルンが担当致します!きょ、今日はどうされましたか?」


 新人さんで緊張しているのか、結構噛んでいる。それに元気いっぱいだ。


「コテツの冒険者登録をしたいんだ」


「はい!そ、そちらの男性の方ですね?」


「よろしくお願いします」


「か、かしこまりました!ではこちらに必要事項のご、ご記入をお願いします!」


 名前や職業を書いて、ダンジョン内で死んでしまった場合の責任はギルドではとれませんので自己責任となります。


 など様々な事が規約のようなものが書いており、一通り目を通してチェックを入れていくって感じだ。


「はい、お願いします」


 チェックを入れ終えてお姉さんに用紙を渡す。


「か、確認しますね」


 ふんふん、とアーデルンさんが上から下までチェックをしていく。


 そんなに時間は掛からなかったけど、知らない場所って事や初めての事で緊張しており、長く感じた。


「はい、も、問題ありせん!コテツ・クマガイさん、重戦士の方ですね!初めての登録ですので、え、Fランクスタートとなります」


 名前はクリムに言われてこっちの世界に合わせた感じにしている。


 アーデルンさんが元気よく読み上げたおかげで周りの人に俺の職場が筒抜けになった。


 俺の職業を聞いたからなのか分からないけど、変な男がこっちに近寄ってきた。


「やあ、クリム・リンドルさん。Sランク冒険者である、あなたがそんな初心者の、しかも重戦士の人と一緒にいるなんてね。どうだろうか?僕と一緒にAランクのダンジョンにでも」


「うるせーなー、アタシはお前の事なんか知らないし、一緒にダンジョンも行かないっての。ヒョロヒョロに興味ないんだけど?消えてくんない?」


 うわあ、これはきつい。


「クリム、流石に言い過ぎじゃ・・・」


「ちゃんと言っておかないといつまでもしつこい時があるからな、思わせぶりな態度もダメだ」


「まあ、確かにな。クリム美人だし」


「なっ!恥ずかしい事言うなよコテツ!」


 照れながらも嬉しそうなクリムはバシバシと俺の肩をたたく。


 初めて会った時も鋭い目つきで誰だテメェ!みたいな感じだったしな。


「僕を知らない!?Aランク冒険者のこの僕をっ!」


「あ、あのあの!その方は最近Aランク冒険者になられた、ボーク・イケェメンさんです」


 ぼーくいけーめん、え?ぼくいけめん?


 すごい名前だな。


「どうでもいいや。それよりお姉さん、アタシらFランクダンジョンに行きたいんだけど」


「は、はい、分かりました。クマガイさんの冒険者カードをお作りしますので、しょ、少々お待ちください」


 とてとてと奥の方に行くアーデルンさん。


 残されたのは俺とクリム、そしてボクイケメン。


 全く相手にされて無いこの男は周りにクスクスと笑われている。


「後悔する事になるよ?それでもいいんだね?」


「うるさいなー、アタシはコテツと行くから」


 キッとこっちを下から睨みつけてくる身長差があるからどうしても下からになってしまう。


「こんなデカいだけのやつを選ぶなんてね。後悔させてやるからね」と言い残してどこかへ行った。


 そのタイミングで奥からアーデルンさんが戻ってきた。


「こ、こちらが、クマガイさんの冒険者カードになりますので、無くさないようにしてくださいね」


 アーデルンさんから冒険者カードを受け取りアイテムバッグにしまった。


「あ、あと、Fランクダンジョンに行く許可も出てますので、気をつけて行ってきてください!」


「ありがとな。よし、行くぞコテツ!」


「流石にちょっと緊張するな」


「なにビビってんだ、ダンジョン行って魔物倒して、自信つけりゃみんなもコテツの事を認めるって」


「まあ、クリムもいるし、頑張ろうかな」


「アタシに任しときな!よっしゃ、行くぞー!」


 こうして俺は初めてのダンジョンにクリムと向かった。

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