第5話 そろそろ名前で
「リンドルさん、おはようございます」
部屋を見渡してもリンドルさんがいないので、出掛けているのかな?
とりあえず挨拶してみたけど、返事が無いし。
服買いに行った次の日もダラダラしてしまったから、今日は久しぶりに異世界に来てみた。
リンドルさんの家はカナドラ王国の中心街から離れた所の丘にポツンと一軒家だ。
横にはリンドルさんが装備を作ったりしてる鍛冶場がある。
部屋にいないって事はきっとそっちだろう。
ガチャっとドアを開けて、鍛冶場の方に向かう。
少しずつ鍛冶場に近づいてくると、カンカンと鉄を叩くような音が聞こえ始めてきた。
やはりリンドルさんはこっちにいたようだ。
コンコンとノックをしても返事が返ってこないので、ゆっくりとドアを開けて「リンドルさーん?」と声をかけた。
中にはリンドルさんが汗を流しながら何かを作っている最中だった。
邪魔しちゃ悪いと思ったので、鍛冶場の隅の方に行き、リンドルさんの作業が終わるのをジッと見ながら待っていた。
不思議と退屈はしなかった。
「ふぅ」
リンドルさんが作業を終えたのか、一息ついている。
「リンドルさん、おはようございます」
今なら大丈夫かな、と思い話しかける。
「うお、ビックリしたー。なんだ虎鉄じゃん、久しぶりだな。もう来ないのかと思ったぞ」
「久しぶり。向こうでいろいろやる事があって、なかなか来れなかったんだよ」
「ま、元気そうで良かった。そうだ、これ見てくれよ」と言って並べてあった少し大きめの剣を持ってきた。
「うわー、すごいな」
これまた黒ベースの剣で、しっかりと魚を咥えた猫のマークが銀で彫られている。
「リンドルさんは黒が好きなんだ」
「アタシが魔力を注ぐと黒になるんだよな。ま、好きだからいいんだけど」
武器を作る時に魔力を注いで耐久性を上げたりちょっとした効果を付与したりするらしい。
黒色に銀の細工は結構綺麗だ。
「この剣と部屋にある盾は虎鉄にやるよ」
「え、俺にくれるの?」
「使ってくれ、その方がアタシも嬉しいしな」
ニヒヒと笑いながら剣を差し出してくる。
「ありがとう、リンドルさん」
「なあ、そろそろリンドルさんってやめない?クリムでいいぞ」
「じゃ、クリムありがとう。大事に使わせて貰うよ」
「後これもやるよ」
渡してきたのはアイテムバッグという別の空間に物をしまえる便利グッズらしい。
クリムのは肩から掛けるタイプだったけど、俺のは腰に巻くタイプだ。
小さいのに中にはクリムの部屋分くらいは軽く入る。
何でも冒険者として、クエストをこなしている時に倒した魔物からドロップしたアイテムで、余っているから俺にくれたらしい。
「よし!それじゃ、ギルドに行って冒険者として虎鉄も登録するぞ」
「俺も冒険者になれるのか?」
「なれるなれる、冒険者になって自信をつけて一緒にダンジョンに行ったりしような」
「ダンジョンか」
ちょっとワクワクしてくる反面ビクビクしてしまう、魔物と戦ったり俺に出来るのかどうか分からないし。
「大丈夫だって、アタシもついてるし。虎鉄にはアタシの力作の鎧に盾、それに剣もあるだろ?」
そうだ、クリムが俺のために作ってくれた装備もある。
クリムが一緒なら大丈夫な気がしてきた。
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