第4話 買い物で写真撮影


 目が覚めると夢だったんじゃ無いかと思いながら寝たが、起きてみるとちゃんと現実だった。


 脂肪達は筋肉へと生まれ変わりを果たしており、顔のラインもマルッポヨッからシュッとしている。


「今日は頑張ろう」


 軽く朝ご飯を食べて、準備を済ませる。


「行ってきます」


 誰もいない家に挨拶をして鍵を閉めて駅近くのショッピングモールに向かう事にした。


「あそこならだいたいの物は揃うな」


 ショッピングモールに着いてからもそうだが、家を出てここまでくる間はやっぱりいつも通りの視線を感じる。


 体が筋肉質になったとしてもデブのオーラがまだ残ってるのかな?それとも臭い?


 昨日ちゃんとお風呂には入ったし、大丈夫なはず。


 そんな事を考えながら先に制服を買う事にした。


 店員さんは優しくて自分に合ったサイズを用意する事ができた。


 流石プロだな。


 こんな俺にも丁寧に接客してくれる。


「次は、普段着だな。どこか俺みたいなやつでも着れる服がある店ないかな」


 お店を探しながらブラブラしているとお兄さんとお姉さんが話しかけてきた。


「お兄さんお兄さん、筋肉すごいですね!」と言いながら俺の体をふむふむと見てきているお姉さん。


「パワー」と言いながら俺だって負けてないぞ、とアピールしてくるお兄さん。


「えっと、ありがとうございます?」


 なんて返事をしていいのか分からないからとりあえずありがとうと言っておく。


「このショッピングモールに最近マッスルショップが出来たんですけど、良かったら宣伝用に写真撮らせて貰えませんか?」


「パワー」


「宣伝、ですか?」


「はい、もちろんお礼もしますし。ちょっと店頭で写真使わせてもらえたらなって。お兄さんの筋肉の仕上がりは絶対人気でます!」


「ヤー」


 このお兄さん大丈夫かな?ずっとパワーとかヤーって言ってるけど。


「わかりました」


 そのお店なら俺に合う服も見つけられそうだし、お姉さん優しそうだから了承してお店に向かった。


 お店に着くと何着か服を渡されて、その服を着ながら写真を撮る事となった。


「はいお兄さん、そのダンベル持ちながらこっちに目線下さーい」


「は、はい」


 ぎこちない笑顔になってるのは自分でも分かるけどこれが俺の精一杯だ。


「次こっちですー」


 パシャリパシャリと写真を撮られていく。


 服を何回か着替えて「そのプロテインの袋持ちながら笑顔でー」「ムキっと筋肉アピールー」とお姉さんはノリノリで指示を出してくれる。


 最初は緊張してぎこちなかった笑顔もお姉さんのノリノリな指示が面白くて自然な笑顔になっていた事は知らない。


「笑顔が爽やかですねー、いい感じですよー!」


 何枚か写真を撮り終わって満足したお姉さんが「ふぅ、ありがとうございました」と言いながら近寄ってきた。


「いえ、こちらこそ。楽しかったです」


「そう言ってもらえてよかったです。今日着てもらった服はお礼としてそのまま差し上げますので貰っちゃって下さい」


「え、そんな流石に悪いですよ」


 何着もあるから流石に気が引ける。


「いいんですよ、その服着てもらったらそれが宣伝にもなりますしね」


 商魂逞しいですね、お姉さん。


「私たち夫婦でお店やってるので、また来て下さいね」


「パワー」


 お兄さん、最後までやってましたねそれ。


「分かりました。今日はありがとうございました」


「こちらこそー」


「ヤー」


 お兄さんとお姉さんとお別れして、目的の物も手に入ったからそのまま家に帰る事にした。


 家に着くと久しぶりに外に出た事の疲れや、今までの俺じゃ体験する事が出来なかった事の疲れもあり、ご飯を食べたりお風呂に入ったりとダラダラ過ごした。


      ◁◁


 俺と別れた後のお兄さんお姉さん夫婦はというと。


「さっきのお兄さんの筋肉すごかったな、久々にトレーニングの血が騒いだぜ」


「あはは、確かにすごかったわね。あそこまで鍛えあげるって相当よ、それに何か爽やかな香りがしたわね」


「確かにな!」


「よし!今日は店じまいだ!トレーニングするぞ!」


「こら!ダメに決まってるでしょ!トレーニングはお店が終わってからよ!」


 二人は夫婦漫才かのように絡みながら今日の事を話していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る