第2話 リンドルの鎧

【装備しますか? YES /NO】


 少し迷ったがYESに指を近づけてタッチした。


 またステータスウィンドウが現れた。

【リンドルの鎧装備完了

 重戦士に転職完了

 ステータス更新】


 装備完了のステータスウィンドウと共に強烈な睡魔に襲われた。


 睡魔に負けて寝てしまった俺が次に目を覚ました時にはまだステータスウィンドウが表示されたままだった。


 〜熊谷虎鉄/レベル1

 職業/学生

 体力/5

 攻撃力/3

 防御力/12

 魔力/0

 知力/5

 運/2

 パッシブスキル

 なし      

 スキル

 なし       〜


   ↓


 〜熊谷虎鉄/レベル1

 職業/重戦士

 体力/80

 攻撃力/50

 防御力/120

 魔力/70

 知力/50

 運/50

 パッシブスキル

 [自身の防御力より低い攻撃、魔法無効]

 [レベルアップ時、防御力への成長補正S]

 スキル

 [挑発]

 [鉄壁]

 [鑑定]           〜


「重戦士すごいな、タンク系って事かな」


 今装備している鎧は俺のために作られていたかの様にサイズがピッタリだ。


 ステータスが変わったからか、重力に負けていたブヨっとした体がグッと持ち上がっており、筋肉質になっている、お腹も以前よりギュッと締まっている。


 顔をペタペタと触ると顎のラインが出ている。


「俺・・・どうなった?」


 イマイチ状況が飲み込めずにいた俺はある事を思い出す。


「そういえば鑑定ってスキルがあったな」


 とりあえず鎧に目を向けて「鑑定」と言うと例のごとく目の前に説明が表示された。


【リンドルの鎧

 熊の様に大きな人で防御力が100以上ある重戦士のみ装備可能で装備者にサイズは合わされる魔法がかかっている。

 リンドルが作製した鎧。

 製作者リンドルは熊の様に大きな男が好きだとか】


「最後の説明はいらなくないか?」


 かっこいいなー、と鎧着た自分に酔っているとガチャっとドアが開き、手にハンマーも持ち、赤くて長い髪、身長が高く、鋭い目つきをしているが綺麗な顔立ちの女性が立っていた。


 肩からカバンを掛けており、上はサラシの様な物、下は少しダボッとしたズボンを履いている。


 俺の身長が180cmだからこの人は170cmより少し高いくらいだな。


「お前だれだ!人ん家でなにしてんだ!」


「す、すいません。俺にも何が何だか分からなくて、気づいたらここにいたんです。それで、綺麗な鎧に目がいって、つい・・・」


「ふーん、お前分かってんじゃん!やっぱり鎧って言ったら全身覆う様にデカくないとな。アタシはクリム・リンドルって名前だ。鍛冶屋やってて、冒険者もしてんだ。よろしくな」


 さっきまでの鋭い目つきは無くなり急に饒舌になる。


 鎧が綺麗と言われてよほど嬉しかったのか。


 鍛冶屋、冒険者、どんどんファンタジーワードが出てきて少しワクワクする。


 リンドルさんはハンマーを肩から掛けていたカバンにしまい、手を差し出してきた。


「俺は熊谷虎鉄っていいます。えーと、重戦士です」とさっき見たステータスの職業を言いながら差し出された手を数秒見て握手を交わした。


 すぐに手を握れなかったのは、さんざん臭いだのいじめられてきたから、手を握っていいものか躊躇したからだ。


「クマガイコテツ?」


「あー、コテツが名前です」


「なるほどな、クマガイが家名って事か。いい名前じゃん虎鉄。それにしても重戦士なんてかなり珍しいな」


「ありがとうございます、リンドルさん。あんまり重戦士の人はいないんですか?」


「この国じゃ、スタイリッシュが流行ってるからな。細っこい体が人気なんだ」


「な、なるほど」


「よく見たらいい体格してるな。しかもその鎧を装備出来るなんて」


 赤い髪の女性が近づいてきてマジマジと俺を見てくる。


「この鎧、勝手に着ちゃってごめんなさい」


 勝手に装備してしまっている鎧を脱ごうとあたふたしていると「いいっていいって、その鎧を装備出来るって事は資格があるって事だ」と言ってバンバンと俺の肩を叩く。


「資格、ですか?」


「アタシが作る装備はヒョロヒョロには装備出来ないからな。熊の様にデカくてマッチョの人専用装備だ」


「俺は元々ただのデブなんですけどね」


「デブってのは体を支えるために筋肉モリモじゃん」


 俺の世界とはちょっと価値観が違うのかな?


「というか、ここはどこなんですか?」


「ん?カナドラ王国じゃん。何言ってんだ?というか敬語じゃなくていいぞ」


「分かった。それで、カナドラ王国って?そこの壺に頭突っ込んだら知らない場所にいて驚いてるっていうか」


「壺?お前壺から出てきたのか?」


「は、はい」


「って事はばーちゃんが言ってた事は本当だったのか」


 顎に手を持っていって考えるポーズをしているリンドルさんを見ていると「あー、昔ばーちゃんがこの壺は異世界と繋がってるって言っててな。ちょっと思い出してたんだ」と言ってきた。


「ならお父さんが言ってた事は本当だったんだ」


「虎鉄も親父さんに同じ事言われてたのか」


 この後はリンドルさんがいろんな武器や防具を作ったりしてる話を聞いたり、俺が自分の世界でいじめられている話をしたりして、久しぶりに楽しい時間を過ごせた。


 いじめられている話をするのは辛かったけど、リンドルさんには聞いてほしかった。

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