異世界で重戦士になった俺、現実世界でも重戦士パワーで大逆転!

ろかりーかいと

第1話 プロローグ

 街の中心部から離れたところにある華記九気かきくけ高校という学校がある。


 そこはまあまあの学力で特にこれといった特徴があるわけでもない、まあまあの高校だ。


 いたって普通の学生服、普通のスクールバッグ。


 その普通の学生服に泥をつけて、スクールバックにはパンのゴミ、お菓子のゴミを詰められていじめられているのが熊谷虎鉄くまがいこてつ、これが俺。


「あー、くっせえくっせえ」


 臭いと言い、仲間三人組の一人にスクールバックの中にゴミを入れさせる指示を出している態度のでかい男が佐藤勝太郎さとうかつたろうだ。


 何かした訳でも無いのにいつもいつも俺をいじめてくる。


 身長は俺より小さいのに態度は本当にでかい。


 俺は特に言い返したり抵抗する事はせずに大人しくしている。


 こうする事が一番早く解放される手段だからだ。


 変に言い返したり、抵抗したりすると相手が喜んでしまい、この時間がさらに長くなってしまう。


「このデブ、今日もだんまりだな。やられるがまま、言われるがままの腰抜けデブ」


 勝太郎の仲間達も同調して「デブ」「くせぇ」「そうだそうだ」などと言っている。


(あー、早く終わらないかなー)


 ダイエットをした事もあるけど、痩せる事が出来なかったし、汗もよくかくから汗臭くなってしまう。


「ちっ、つまんねぇなデブ」と言いながら俺の膝辺りをゲシッと蹴ってくる勝太郎。


 仲間三人組も「デブ」「くせぇ」「そうだそうだ」と言って睨んでくる。


 そして、スクールバックをこちらに投げつけて「もう学校にくんじゃねぇぞ、臭すぎてみんなが迷惑してんだよ。そろそろ気付けよデブ」と言い、仲間達笑いながら帰って行った。


 今日は蹴り八発で解放された。


「はあ」


 ため息がでる。


 制服についた泥を落として、スクールバックに入れられたが、投げられた拍子に散らばったゴミを拾い集めてスクールバックに入れる。


 ゴミなんか落として帰ってもいいのだが、流石にそんな事は出来ない。


 友達もいない、やりたい事もない、ダイエットも成功しない、何もないな俺。


 校舎裏で定期的いじめられて、教室ではひっそりとすごし、たまに教室でもいじめられる。


 惨めな自分を認識してしまうと泣きそうになるがぐっと涙を堪えて帰る。


     ▷▷


 家に着くと誰かがいるわけでもないが「ただいま」と言い入っていく。


 何もやる気が起きないのでスクールバックは玄関にドサっと置き、ダラダラとリビングに歩いて行く。


 冷蔵庫を開いてお茶を取り出して飲み、コップを置いて部屋に行こうとしたところ、ピンポーンとインターホンが鳴った。


 ガチャりとドアを開けて誰が来たのか確認すると宅配の業者さんだった。


「熊谷虎鉄さんですか?」


「あ、はい」


「お届け物でーす。こちらにハンコお願いします」


 出された紙にハンコをポンと押して荷物を受け取る。


「重いので気をつけてくださいね」


「ありがとうございます」


 なかなかの大きさがある、段ボールを受け取る。


 業者さんは重いのでと言っていたが、体が大きいのと結構力もあるので重さはそんなに感じなかった。


 玄関にドサっと置いて、玄関の鍵を閉める。


「またお父さんからか、仕事で海外に行くらからよく変なもの送ってくるんだよな」


 ベリベリっとガムテープを剥がして段ボールの中の物を確認する。


 手紙が入っていた。


『よう虎鉄、また仕事先で変な物見つけたから送っておくぞ。現地の人に聞いた話だと運が良ければ別の世界に行けるとかなんとか。俺も頭突っ込んだりしてみたけど、なにもなかった。虎鉄、試しに頭突っ込んでみろよ(΄◉◞౪◟◉`)』


 なんだこの最後の顔文字。


 息子に何やらそうとしてるんだ、まったく。


「まあ、俺の人生何にも無いから別の世界にでも行けたら面白いかもな」


 段ボールをハサミでカットして壺を取り出しやすくする。


「結構大きいな」


 取り出した壺を見るとなかなかの大きさだった。


「頭を突っ込んでみる、か」


 まさかな、と思いながらゆっくりと壺に顔を近づけていく。


 ちょうど壺を覗き込んだくらいでバカバカしいなと思いいっきに頭を突っ込んだ。


「何も起きないじゃん」


 そう思って頭を出そうとした瞬間ピカッと急に眩しくなり目を閉じる。


 目がチカチカしていてなかなか目を開ける事が出来ない。


「うぅ、何が起こった」


 目が段々と回復してきて、目を開くと見知らぬ部屋、真ん中に机があってイスも一つ、部屋の角にはベッドがあり、俺の後ろには壺、部屋の隅っこにはデカい鎧とデカい盾が飾られていた。


 ベースが黒で統一されている鎧と盾には魚を咥えた猫のマークある。


 そのマークは鎧には右肩にあって大きな盾には真ん中に銀色で施されていた。


 薄暗い部屋なのにその鎧と盾は輝いて見えて、無意識にゆっくりと近づいて行ってしまっていた。


「すごいな」


 今いる場所の確認、自分に何が起こったかなど考えるよりも鎧と盾が気になって仕方ない。


 鎧に触れるとゲームで同じみの画面が目の前に表示された。


【装備しますか? YES/NO】

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