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この日から、アノ人のことを思い出すことがまた増えた。ちょうど同時期、夫婦間でのすれ違いが増え始める。

いつからだろう、お互いのことをパパママと呼ぶようになったのは。

いつからだろう、いってきますのキスがなくなったのは。


家族としては不仲ではないし、子どもたちの親としては良きパートナー。でもどこかで満たされない気持ちとアノ人を懐古する瞬間が重なる。


それでも日常は過ぎる。パートといえど兼業主婦は忙しいのだ。


もうアノ人と別れてから10年近い。やり直したいとかあの頃に戻りたいとかそういう未練ではない。アノ人が今何してるかに執着しているわけでもない。ただただ忘れられない思い出で。たとえば亡くなった祖父母を忘れるはずがないように、亡くなった恋を忘れるのは難しいこともあるように思う。


そんな気持ちを秘めつつ平穏な日々を過ごしていると郵便受けにアイツからの結婚式の招待状が届く。


アイツの結婚を祝う気持ちよりも先に「アノ人も来るかも」とよぎってしまったことを申し訳なく思う。

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