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ある日、学生時代の同級生であり今でも定期的に遊んでいるシンユウから「失恋した」と連絡が来る。
相当傷心している様子だから予定をつけて、話を聞きに行くことにする。きっとアラサーの失恋は傷が深い。
当日、お酒を交えながら少しやつれた顔色の悪いシンユウに寄り添う。悲しみで泣き、怒りで声を荒げる。そんな様子を見ていると自分がアノ人と別れたばかりの時を思い出す。
ずっと引きずっていたなんて話をしたことはなかったからシンユウからは「早々結婚して幸せなアナタにはわからない」なんて言葉も浴びせられた。
でも…分かるよ、分かるし、このときにどんな励ましの言葉も響かないことも知っている。
だから話を聞くことに徹した。
失恋の慰めの定型文、誰の言葉がわからないけど
「一番好きな人とは結婚できない」とか
「運命の人は二人いる」とか
結果的には納得できる部分もあるけど残酷な言葉だな、と。
ただ一つ分かることは本気でした恋ほど、失恋が辛いのだ。
アノ人の前にも後にも何人かと付き合って別れたけれど、失恋の話で思いを重ねるのはアノ人との思い出ばかりだった。
でもこうやってアノ人のことを思い出すのは久しぶりでもあった。
気が付けば酸いも甘いも鮮明な記憶は減り、曖昧な良い思い出ばかりが蘇る。人間って都合の良い生き物だ。
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