10

悔しいやら悲しいやら虚しいやら…プライベートの思考は負の感情に支配されつつも忙しく月日は過ぎる。涙を流す日は流石に減った。でもアノ人のことを一時も思い出さない日は殆ど無なかった。


そんな中、日本中で大騒ぎになる自然災害が起こる。


幸いワタシが住んでいる地域では壊滅的な被害はなかったものの、後のワイドショーで話題になる程度の被災はあった。


家族や友達と安否を確認する連絡を取り合った。

離れて暮らす親戚や遠方の友達が久しぶりに連絡をくれたりもした。

何年も前に別れた元カレの中には連絡をくれた人もいた。でもアノ人からの連絡はなかった。ワタシもしなかった。する勇気がなかった、する義理もなかった、そんなことは分かっているのに、心の何処かでこれをきっかけに連絡来ないかな…してもいいかな…なんて不純な気持ちを少なからず抱いていた。


災害の影響で慌ただしく非日常の日々が過ぎる。


日本中でたくさんの死者が出た。


そんなニュースを見ながらだんだんと少しずつ平穏を取り戻す中で、ワタシは「アノ人はこの災害で死んだ」と思い込んで生きることを決める。


心の中ではそんなことないとは思っている、99%生存しているだろう。そんなことはわかってる。


これは気持ちの整理がつかない失恋に区切りをつける不謹慎な1つの暗示に過ぎない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る