第55話 解禁!
「そろそろ一年生の皆さんの力を解禁しないと厳しそうな気がしますわ」
「そうね、『総合』もレースのポイントがなかったら完敗だったし、『格闘』だって同じように強いって考えた方が良さそうね。ミサはどう思う?」
「いいんじゃないか? 出来ればあと一戦くらいは温存しときたかったけどな」
「私も賛成でありますよ」
『格闘』三戦目にして、とうとうノア達がベールを脱ぐ時が来た。
堅牢要塞かつ固定砲台のノア、攻防一体の炎と水を使うアカリ、そしてあり得ない量の魔力によりメイド魔法を魔改造するアイコとアズミ。
既にコッソリとその力を発揮してきたカナタを含めたこの五人が、全国大会のゲームチェンジャーとして認知される、この時が!
『さあ、まずは甲チームから。両チームのメンバーを紹介しましょう』
静岡
聖バスティアーナ学園一年生、
ロゼメアリー学園一年生、
聖バスティアーナ学園二年生、
ロゼメアリー学園二年生、
聖バスティアーナ学園三年生、
ロゼメアリー学園三年生、
愛知
アイリスアンヌ学園一年生、
ドゥルセサラド学園一年生、
アイリスアンヌ学園二年生、
ドゥルセサラド学園二年生、
アイリスアンヌ学園三年生、
ドゥルセサラド学園三年生、
『それでは奈留橋さん、この勝負の見所を教えて下さい』
『はい。ではまずは静岡チームから。お気付きの方も多いと思いますが一年生で主を務める水月選手ことアクアルナ選手、そして同じく一年生の
『ええと…………すみません、ちょっと記憶にありません』
『はい、そうなんです。彼女達はこれまで『何もしていない』んです。たまたま相手が攻め込めなかった結果としてなのか、それとも他に何か秘密があるのか……非常に気になります』
『ほほう、するととんでもない隠し玉だったりする可能性もある訳ですか』
『もちろんそうでない可能性もあります。言わば『シュークリームの猫』ですね』
『成程、確かにどちらともまだ分からないこの状況は『シュレーディンガーの猫』と言えますね』
『…………』
『では愛知チームはどうですか?』
「……こほん、愛知チームは攻守ともに非常にバランスが取れたチームです。執事はスピード・パワー共に兼ね備え、精霊の力を利用するのも上手です。そしてメイドは体術を徹底的に鍛え上げており、攻撃力こそ低いものの回避や防御が非常に優れています。そして何よりサブメンバーによる手厚いバフと回復。対戦する相手は、出場する六名プラス補助役メイド六名と戦っているように感じるでしょうね」
『それは聞くだけで恐ろしいですね。そんな愛知チームに対してこれまでのように静岡チームが四人で戦うのはいささか無謀と言えるでしょう。さあ、果たしてアクアルナ選手と恋沫選手は静岡の
『…………過多味さんは意地悪です』
ビーーーーーッ
ブザーと共に戦いが始まった。
バフを掛け終えた静岡・愛知の両方共が、相手に向かって前進を始めたのだ。
愛知チームはこれまで通り、そして静岡チームは初めての動き。
先程の実況と解説を聞いていた観客の期待が高まる。
そして――
「ノア、そろそろ【障壁】を展開」
「はいっ」
ノアの周囲を半透明の甲羅模様が覆った。
「全員ノアの射線を空けつつ突撃。アイコも行くわよ!」
「はいっ」
左右に展開しつつ高速で近づく五名に対して迎撃の構えを見せる愛知チーム。
その光景を後方から、そして上空の視点から見ていたノアが動く。
「ったひょらああああああ!」
相変わらず緊張感が抜け落ちそうな掛け声を上げ、その場で両拳を交互に突き出し始める。そしてそこから次々飛び出す拳弾!
今までよりも速く、大きく、数多く、そして重く。
相手チームに半透明の拳がまるで豪雨のように次々と叩きつけられた。
「ぐっ!?」
「きゃあ!!」
予想外の攻撃によって完全に態勢の崩れた相手に、突撃してきた静岡の執事とメイド達が襲い掛かる。
そして左右からの同時攻撃で相手を集中豪雨の中心地へと押し込んでいった。
左右から押し込められノアの拳を避ける場所を失った愛知の選手達は、身を固めてこの激しい暴風雨を耐えるしかない。
その隙に【特売奪取@買物】を発動させたアイコが一瞬で背後に回り込み、そして特売品――ではなく
ビーーーーーッ
『しっ試合終了! なななんと、静岡チームまさかの圧勝! し、しかし……一体何が起きたというのか……』
『私は見ました。アクアルナ選手です。カメタイプの【障壁】を張ったアクアルナ選手が、意味不明な遠隔攻撃、しかも途轍もない数の……そう、まるで弾幕のように高速連射したんです』
『はい、確かに大量の何かが相手チームに飛んでいました』
『そして私は見ました――いえ、見えませんでした。恋沫選手が突然その場から姿を消したかと思うと、次の瞬間には相手チームの背後に回り込み、そして主のちょんまげを手にしていたんです』
『つまりアクアルナ選手と恋沫選手は……静岡の――』
『
会場の興奮が冷めやらぬ中、次は乙チームの戦いが始まる。
静岡
ロゼメアリー学園一年生、
聖バスティアーナ学園一年生、
ロゼメアリー学園二年生、
聖バスティアーナ学園二年生、
ロゼメアリー学園三年生、
聖バスティアーナ学園三年生、
愛知
アイリスアンヌ学園一年生、
ドゥルセサラド学園一年生、
アイリスアンヌ学園二年生、
ドゥルセサラド学園二年生、
アイリスアンヌ学園三年生、
ドゥルセサラド学園三年生、
『さあ、こうなると断然注目すべきは
『非常に気になります』
ビーーーーーッ
「全員とっつげきーーー」
ミサの号令で一斉に突っ込む静岡乙チーム。
その頭の上に苺が浮かび、そして彼女達に力を与える。
戦いを終えたリアからの【元気苺】だ。
出鼻を挫かれた愛知乙チームは戸惑い、一瞬その場に立ち尽くす。
そんな彼女達の周りを揺らめく細い水のリボンが取り囲んだ。
「えっ何これ? 水?」
その不思議な光景に目を奪われた次の瞬間、今度はその水が爆発を起こした。
ボムッ!!
「「「「「きゃあっ!!」」」」」
「我が糧となれ【ヴァッサークヴェレ】」
「メイド魔法【高圧放水@掃除】!」
アカリが生み出した水の塊を水源に、アズミがポンプ車並みの放水をぶちかました。
その水量と勢いはどんどん増してゆき、愛知乙チームは試合場の外まで押し流されていった。
水流に揉まれて脱げてしまったちょんまげと共に。
ビーーーーーッ
『試合終了! 乙チームもまた、とんでもないものを我々に見せてくれました!』
『はい。最初の突撃はフェイントで、動きを止めた相手をイグネア・アニュラス選手が爆発する水で押し止め、
『はは……何という事だ。これはもう静岡チームの勝利は決定的でしょう』
その後、過多味の言った通り静岡の勝利が宣言される。
そして過多味と奈留橋は、事情を知る静岡応援団の何名かと共にお高めの個室レストランの中へと消えていった。
取材、そして必要経費の名のもとに……
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