第51話 格闘の結果は
「出ましたわね、クマ軍団」
そう呟く
青森チームは、出場する執事の契約精霊が全てクマタイプで揃えている。
それだけでもパワー重視なのは見て取れるが、実はそれは執事だけではない。
メイドもまた、【剛力@引越】を得意とする者で揃えているのだ。
間違いなくこの青森チームが今大会ナンバーワンのパワーを誇るチームであろう。
その青森チームの編成はこうだ。
甲チーム
一年生、
一年生、
一年生、
三年生、
三年生、
三年生、
乙チーム
一年生、
二年生、
二年生、
二年生、
二年生、
三年生、
甲チームは一年生と三年生で構成、そして乙チームは二年生が主体となっている。
出来るだけ同学年で揃えた方が普段からコミュニケーションがとりやすく、結果連携がスムーズになるとの判断により、かなり早い段階からこの構成でのチーム分けを行っていたのだ。
「みんな、切り替えてくべ。あずましくな」
「「「「「あ!!」」」」」
『さあいよいよ静岡と青森の戦いは『格闘』に突入します。一回戦を見る限り、力の青森対技の静岡といったところでしょうか。如何ですか
『ええ、その通りだと思います。そして一回戦では見せなかった青森の得意フォーメーションが、今回は見られるのではないでしょうか』
『得意フォーメーション、ですか?』
『ええ。青森チームの得意フォーメーション、それは――ああっ、あれがそうです』
奈留橋の視線の先には、試合場に上った青森の甲チームの姿があった。
『あれは……全員で主を囲んでいるのでしょうか?』
『はい。主を中心に全員で相手に向かっていく、彼女達が『穴熊』と呼ぶフォーメーションです』
『なんと、主も含め全員で一塊となって戦うのですか。でもそれだと相手に攻撃の主導権を握られてしまいませんか?』
何処となく不思議そうな表情で、
『実はそうでもないんです。何しろ相手の標的は主ですから、あの塊に対峙するしかない訳です。しかも青森チームは一つの塊となって、相手チームの主に向かって進んで行くんですよ?』
『成程。相手もまた自分達の主を守りながら戦わざるを得なくなると』
『ええ。そうして相手チームを自分達の得意とするパワー勝負に引き摺り込むという訳です』
奈留橋の解説に今度は納得の表情を浮かべ、過多味は興奮の声を上げた。
『これは恐るべきフォーメーションです! 静岡チームは青森チーム以上のパワーをもって戦うしかないと言う事でしょうか!? さあ、開始のブザーと共に今! 双方の甲チームの戦いが開始されました!』
前方に三人の執事と後方に二人のメイドが主を取り囲む『穴熊』フォーメーションのまま青森チームが主のノア目指して進んでくる。
「うはー、こっちに来たよー」
「ノアとアイコはこの場に待機ね。リア、バフお願い」
「分かりましたわ。メイド魔法【元気苺】」
ノア達全員の頭上に赤い苺が現れ、それぞれの能力を底上げする。
更に――
「バフなら我も掛けにけり。メイド魔法【丈夫@保育】【丈夫@保育】【丈夫@保育】【丈夫@保育】【丈夫@保育】【丈夫@保育】」
「じゃあ行くわよマキ。いい、ノアとアイコは絶対出てきちゃダメだからね!」
「振りとかじゃないからねー」
「ねえアイちゃん、私の見間違いかな? 牧島先輩はクマタイプだから分かるとして、何だかアイリ先輩もクマタイプ相手にパワーで押してない?」
「見間違いじゃないと思うな。だって私にもそう見えるから」
あーもんの力を使う
だが、相手の執事三人による連携は非常に強力で、二人とも中々決定的なチャンスを作る事が出来ない。
「アイちゃん、やっぱり私も手伝った方がいいのかな」
「うーん、負けそうになるまでダメって言われてるし」
そんな会話を交わすノア達だったが、その間に状況は変化する。
「マキ、一旦下がってから
「ああ、あの戦法だね。分かったよー」
そして二人は一旦後ろに飛び退き、マキが一人で身を固めて相手に突撃した。
相手に激突するかと思われたその時、マキのすぐ目の前にあーもんが姿を現して相手の頭上目掛け飛んでゆく。まるで投げ付けられたクマのように。
「「「なっ!?」」」
全員の視線が上空のあーもんに集中したその時、
「リリー、【モード
蔦となったリリーが地面を這って彼女らの足元をすり抜け、
「わいは!?」
青森チームの主であるサリナの体中に巻き付き、彼女達の中から引っこ抜いた。
「どんだば!?」
全身を蔦でぐるぐる巻きにされたサリナはそのままアイリの元まで引き摺られてゆき、
「ごめんなさいね?」
身動きの取れないままアイリにちょんまげを剥ぎ取られた。
『試合終了! 最後は頭脳プレイ、上方向に視線を向けさせた隙に地表すれすれから相手主を直接攻撃したー!!』
『素晴らしい戦いでした。鉄壁の青森チームが一度は静岡の猛攻を跳ね返し、ですがそれは静岡の次の攻撃への布石でした。これはちょっと防ぐのは不可能ではないでしょうか』
甲チームの戦いは静岡の勝利で終わり、そして次は乙チームの戦い。
青森チームは主である
「さあ、このまま勝負をつけるぞ」
「攻略方法は甲チームが見せてくれたでありますからな」
「ええ、一気に行くわ」
ビーーーーーッ
試合開始のブザーと同時に両チームとも動き出す。
「メイド魔法【福引@買物】×四」
「真神、お願い」
(ウォォォォォーーン!)
「白雪、【八艘跳び包囲陣】」
『穴熊』をぐるりと囲むように展開する【八艘跳び包囲陣】、そしてその中を白狼達が駆け巡る!
狼達が何処から襲い掛かって来るかとその動きに集中する青森チームだったが、真神と白狼達はそんな彼女達を翻弄するかのように、時には跳び掛かる素振りを見せ、時には突然向きを変え、ただひたすら動き続ける。
「そろそろ行くよサザナミ」
「はいっ」
「モモカ、援護よろしく」
「了解であります」
モモカが陣の外側を走りながら、中にいる青森の選手達を【狙撃】して回る。
これにより青森の選手達は狼に加えモモカにも注意を払う必要が出てしまった。
そんな彼女達にはミサとサザナミの動きに目を向ける余裕などない。
一気に陣の中に飛び込んだ二人は敵の真上に高々とジャンプし、そこに移動してきた足場を蹴って一気に上からヨモギに襲い掛かった……
『試合終了! 静岡チーム、青森の
『これは先程の試合と同じ展開でしたね。相手の視線を地上に釘付けにして、上空から一気に襲い掛かる。上下の使い方こそ逆ですが、戦術としては同じと言えるでしょう。静岡チーム、お見事でした』
その後、大会本部によるポイント集計が行われたが、想定していた通りポイント差が覆る事は無く、静岡チームの三回戦進出が決定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます