第48話 そして格闘が始まった
全国大会『格闘』競技。
執事三人とメイド三人の合計六人でチームを構成し、うち一名が
そしてそのチーム同士が敵チームの主の被るちょんまげを奪い合うという、史実に基づく由緒ある競技である。
各県で参加するのは甲と乙の二チームずつ。
お互いの甲チーム対甲チームと乙チーム対乙チームの二試合を行い二勝すれば決着、一勝ずつの場合は二チーム混合による三試合目が行われる。
勝ったチームには勝利ポイントとして十ポイント、素晴らしい技には技術ポイントとして一~二ポイントが与えられ、その合計ポイントで勝敗を争う。
場合によっては勝負に勝ってポイントで負ける事があり得るこの競技は、勝ち方もまた重要となるのだ。
ノア達静岡代表のチーム編成は以下の通り。
甲チーム
一年生、
一年生、
二年生、
二年生、
三年生、
三年生、
乙チーム
一年生、
一年生、
二年生、
二年生、
三年生、
三年生、
そしてこちらが福岡代表のチーム編成。
甲チーム
三年生、
一年生、
一年生、
二年生、
二年生、
三年生、
乙チーム
三年生、
一年生、
一年生、
二年生、
二年生、
三年生、
『さあ始まりました、二回戦進出を賭けた『格闘』競技! まずはそれぞれの選手構成を見ていきましょう。一年から三年までの選手を満遍なく入れているのは大会のレギュレーション通りとして、その中で注視すべき点などありますか?』
『そうですね、主についてですが、静岡は甲乙どちらのチームも一年生、一方の福岡は三年生としています』
『確かにそうですね』
『また、福岡が甲乙どちらもメイドとしたのに対し、静岡は甲チームの主に執事を選んでいます』
『なるほどお、そこからどのような事が読み取れるのでしょうか』
『どちらも戦略あっての選択ですから、あくまで一般論からの推測となりますが、まず福岡についてはセオリー通りに攻撃力の勝る執事を攻め手に三人用意した攻撃型布陣、そして主に経験豊富な三年生を置く事で防御面にも配慮したのではないでしょうか』
『ほうほう、それは実に強力な布陣といえますね』
『片や静岡ですが、各チームに明確な色付けをしてきたと考えられます』
『ほほう、色付けですか』
『甲チームは主に一年生執事を用意しました。これはつまり、主に攻撃力もしくは防御力を求め、チーム一丸となって守りを固める防御型の布陣といえるでしょう』
『はい』
『そして乙チームですが、こちらは主が一年生メイドとなっています。これはつまり、攻撃力にすべてのリソースを振った、超攻撃型布陣と言えるでしょう』
『成程、そう聞くと確かにチームの特色が全く違うと言えますね。主を執事とするかメイドとするかでこれ程の大きな違いが出るとは思いませんでした。……と、さあどちらも甲チームの準備が整ったようです。そして開始のブザーが――』
ビーーーーーッ
『今鳴りました。試合開始です!』
「メイド魔法【元気苺】ですわ」
開始と同時にリアが発動したメイド魔法、これは――
ノア達一人一人の頭の上に、真っ赤な苺が現れ、そして弾ける。
そのピンクの輝きが身体の中に吸い込まれていくと、ノア達の身体に変化が訪れた。
「おーー、来た来たーー」
「パワーましましなんだよー」
「いと強し、いと速し、いとをかし」
『おおっといきなり飛び出しました! これは昨年の大会で静岡の大躍進の影の原動力となった【応援@保育】だあ!』
『いえちょっと待って下さい
『なな、なーんとお! 解説の
どよめくスタンド、そしてテレビの前のお茶の間。
だがそれもその筈、学生のうちにオリジナルメイド魔法を開発出来る者など、数える程しかいないからだ。
そもそもメイド魔法とは家事の魔法である。
その為メイド魔法は家事ごとに分類され体系化されており、学校ではその体系化された魔法を学び習得する。
そして卒業後、仕事の中で自分に合うよう組み合わせたり最適化したりと工夫を重ね、自分に合ったオリジナルメイド魔法としてゆくのだ。
リアの開発した【元気苺】は、掛けた相手にいつも以上の力を発揮させる【応援@保育】と疲れを癒す【休息@保育】を組み合わせ、更にリアのイメージする元気の象徴である苺を加える事で効果を倍増させた、リアオリジナルのメイド魔法。
恐るべき事にその効果は人間だけではなく、その契約精霊にまで及ぶ。
それによって何が起きるのかと言うと――
「あーもん、いっくよー」
クマの力を手に入れた少女の無双である。
素早い動きで
その隙にノアのちょんまげを狙った
「リリー、【モード
アイリの鞭が跳ね返す。そして弾き飛ばされた先にいたのは目を光らせたマキ。
「つっかまーえたっ」
「うわわわぁっ」
倒れたミヤの両足首を掴んでジャイアントスイング、そして敵チームの主であるちょんまげを被った
そして倒れ伏した敵チームに一人乗り込み、サクラのちょんまげを奪い取った。
『 …………しっ、試合終了! 甲チームの戦いは、静岡チームの勝利です!』
唖然としていた実況の過多味だったが、ハッと我に返り実況を再開した。
『失礼しました。あまりの展開に
同じようにあっけにとられていた解説のハルナであったが、そこはプロの解説者、自分の目に写ったこの試合をかみ砕いて説明する。
『はい、あれは揮雅選手の【元気苺】で勝負が決まっていましたね』
『と、いいますと?』
『今の牧島選手のパワーですが、おそらく彼女本来の力ではなく、増幅されたものかと思います』
『増幅……まさか【応援@保育】と同系統の?』
『ええ、推測ですが【元気苺】の元となったのが彼女の得意としていた【応援@保育】で、その効力は牧島選手だけでなく契約精霊にまで影響し、それによる相乗効果によって生み出されたのがあのパワー、という事ではないかと思います』
『なんと……』
再び声を失う実況席の二人。
そして試合会場では――
「出番なかったよー」
「まあそれも計画通りなんじゃない?」
「帰らん」
ほとんど二人で勝負をつけてしまったリアとマキが笑顔で、それ以外のメンバーが勝利の実感の欠片もない表情で乙チームと交代するのだった。
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