第243話 魔王!?
「なんだ? ココのねーちゃんなのか?」
「キリシマ、ねーちゃんと言うか今はにーちゃんだな」
「なんだそりゃ?」
「アン!」
あ、ノワがいつもの大きさに戻っている。
「ノワ、ありがとうな」
「アン!『俺も役にたったか?』」
「ああ。助かったよ」
「アンアン!」
やっぱノワは可愛いほうがいいよ。
「しかし、驚いた」
「な、こんな事があるんだな」
て、事は姉貴達も前世で死んだのか?
「ココ! サキ、リュウ! 無事か!?」
ディオシスじーちゃんと、ロディ兄がやって来た。
心配して来てくれたんだろう。
「ルティオ、クララス、来ていたのか?」
「はい、嫌な予感がしたので」
「来て良かったですよ」
おいおい、なんだよ。すっかり侯爵家のご子息してんじゃねーか。
そこは良いのか? 前世、女だったのにさ。違和感ないのかよ。まあ、男顔負けの強さだったけど。
「陛下はご無事か?」
俺は2人に事の始終を話した。そして、霧島が王を解毒し解呪した。
今この城にはクリスティー先生が作ってくれた、精神異常や状態異常を完全に解呪するシールドが張られている。
それでも、何人かの貴族は解呪が必要だったし近衛兵は操られていた。
その上、王と王妃だ。この2人は意識が無かったんだ。
「解毒もしたし解呪もした。でもいつ意識が戻るか分からないな。あの侍女は、意識が戻っても正気を取り戻さないかも知れねーな」
と、霧島が言った。それだけ深く干渉されていたのだろう。操られ、手先として動かされていたんだ。
「王と王妃は、まだ毒で意識を失っていたから逆にマシなんだ。侍女みたいに操られている方がヤバイんだ」
「そうか、とにかく皆無事で良かった」
「知らず知らずのうちに精神干渉を受けていた人達も、仕掛けていた奴がいなくなったから徐々に元に戻るだろうよ」
俺、ずっと魔力を温存してたんだけど。結局全然使ってないじゃん。霧島、ヒーローじゃん。
「ワッハッハッハ! 見たか、俺様の力をよ!」
本当にこんなノリじゃなきゃいいのに。一気に覚めるぜ。
「え、ココ。そうか?」
「そうよ」
でも助かったよ。霧島有難う。
「ココ、屋敷に戻ったら話そう」
前世、咲良だったルティオが俺に耳打ちしてきた。
本当だよ。聞きたい事が山ほどある。
姉2人も転生してたって事だよな?
「屋敷に戻ってからだ」
「はい」
会場に戻ってみると、もう落ち着いていた。
近衛兵達は、別室へ運び出されている。王子達はもちろん無事だ。色々あった晩餐会もお開きになり控室に戻ってきた。
「今日はもう帰ろう」
「そうですね」
「明日からまた忙しくなりそうだ」
グスタフじーちゃんと従兄2人は、後始末の事をもう考えて話し合っている。
「ディオシスお祖父さま、陛下や王妃様はどうなるのですか?」
「意識を戻されるまで、ちゃんと人がつくよ。近衛兵達にもだ」
「そうですか」
「操られていたんだ。彼等はお咎めなしになるだろうね」
良かった。あんな魔族に精神干渉されるなんて誰も予想できない。それに、抗えない。大きな魔力量の差があるんだ。
俺達は、グスタフじーちゃんの屋敷に戻ってきた。そして、談話室だ。メイドさんや咲がお茶を入れてくれている。
「ねえ、サキ。甘いものも欲しいわ」
「どんなのがいいですかぁ」
「ちょっと摘まむ程度でいいわ」
「はいぃ」
と、直ぐに豆大福が出てきた。俺、ちょっと摘まむ程度って言わなかったか?
「これぇ、最新のなんですぅ。美味しいですよぅ」
そうかよ、いただくよ。
「お、豆大福だ」
「美味そうだ」
従兄2人も齧り付いている。
「なあに? また新しいものなの?」
「はいぃ。美味しいですよぅ」
「あら、そう。いただくわ」
ばーちゃんは品よくデザートフォークで食べている。俺はやっぱ齧り付くよね。
「ココちゃん、女の子なのに」
「姉さま、美味しいですよ」
「そう?」
「はい。とっても」
ああ、平和だ。やっと安心できる。
豆大福だと、紅茶じゃなくて緑茶が欲しいね。
そこに念話が入った。クリスティー先生だ。
『ココ様、ご無事ですか!?』
「はい、先生。無事に片付きました」
『それは良かったでっす』
そして、またリモートだ。霧島が目から光線の様な白い光を出してクリスティー先生の姿を映し出す。
「なんですってッ!? 魔族ですか!?」
「はい、クリスティー先生」
「どんな姿をしていましたか?」
「えっと……大蛇なんですが上半身が人で角があって、腰のところに2つ骸骨がついていました」
「それは……」
クリスティー先生、何かを考えている。
「それが本当なら、このまま放っておく訳にはいきませんね」
「おうよ、クリスティー先生。これは抗議するべきだぞ」
「キリシマちゃん、そうですね」
抗議? 誰に何を言うんだ?
「その魔族に心当たりがあるのでっす。私の方から、魔王に苦情を入れておきましょう」
魔王だとッ!? ここにきて、そんなワードが出るとは思わなかったぞ。
「クリスティー先生!」
「はい、ココ様」
「魔王がいるのですか?」
「そうだ、私も魔王がいるなど初めて聞いた」
グスタフじーちゃんも驚いている。というか、皆びっくり顔だ。
「いますよ。今の魔王は紳士的で平和主義なのですよ。温和な魔族が、ヒューマンに化けて商人をしていたりしますね」
「なんとッ!?」
本当に、なんとッ!? だよ。それって皆知らないと思うぜ?
「陛下はご存知ですよ。ご報告してますからね」
クリスティー先生は、王とも面識があるのか!? もう意味が分かんねー。
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