第221話 脳筋2トップ

 そんな俺達が談話室に入って行くと。姉のエリアリアが直ぐに寄ってきて抱き締められた。


「ココちゃん、無茶ばかりしてッ!」

「姉さま、大丈夫です」

「大丈夫じゃないわよ! それにニコルクス殿下に色々差し上げたそうじゃないッ!」


 え? もう知ってんのか?


「学園でね、さっそく自慢されたわよ! ココちゃんに色々貰ったってね。ココちゃんはあたしの妹なのに何を自慢してるのかしら! そんなの自慢になんないと思わない!?」


 はいはい、仲良くしてくれよ。あんまり、いじらないでやってほしいな。悪い奴じゃないんだからさ。


「あたしより弱いのにぃッ」

「これ、エリアリア。そんな事を言うもんじゃない」

「だってお祖父さま、自慢するんですよッ!」

「どうせ、お前が先に自慢したのだろう?」

「違いますぅ。こんなに便利な物が、うちの領地にはあるんですって教えて差し上げたのよ!」

「エリアリア、それを自慢と言うのだよ」

「だって、お祖父さまぁッ!」


 ほら、面倒じゃん、なかなか本題に入れないし。


「エリア、座りなさい。お話ができないわ」

「アンジェだって悔しがっていたじゃない」

「エリアちゃん、今はそれよりもココちゃん達の報告を聞きましょう」

「もう、リーナ様まで。分かったわよぅ」


 やっとだ。アンジェリカ嬢、キャリーナ嬢、ありがとう。

 それから、ディオシスじーちゃんとロディ兄が大聖堂での出来事を報告した。


「なんだとぉーッ!?」

「大聖堂がかぁッ!?」


 これは相変わらず声の大きい父とユリシスじーちゃんだ。脳筋集団の2トップだね。


「ディオシス殿、これは予想以上ですな」

「そう思います」


 同じ血が流れている弟なのに、落ち着いているディオシスじーちゃん。それと、いつも冷静なグスタフじーちゃん。この2人の方が兄弟に思える。

 いつの間にか城だけでなく、大聖堂まで把握されていたんだ。俺達はそれに気づきもしなかった。

 今日、俺達が解呪した事で敵は勘付いているだろう事も話した。


「父上、お祖父様、対策を練り直さなければなりません。もう敵は気付いているでしょう」

「バルト! そう思うかッ!?」

「はい、これだけ大々的に解呪したのです。気付かない方がおかしいですよ」

「バルトの言う通りだな」

「ねえお祖父様、騎士団の解呪は済んでいるのでしょう? じゃあ、近衛の解呪はどうなのですか?」


 と、エリアリア姉が聞く。


「それだがな……」

「エリア、近衛に接触できんのだ」

「そうなのですか?」

「ああ」


 珍しく、普通の声量で答える父。騎士団だけでなく、近衛兵にも接触しようと色々試みていたらしい。だが、どれも上手くいかなかったらしい。


「騎士団はまだいい。無理矢理にでも入り込める。だが、近衛兵はそうはいかん。騎士団の様に城の外に出る事がないからな。接触できんのだ」


 それにしても全く駄目だったのか?


「おそらく、近衛兵は全滅だと思って良いでしょう。でなければ、こんなに接触できない訳がありません」


 バルト兄の見解だった。そりゃそうだろう。近衛兵は王を護衛する事が目的だ。城の奥にいる王を守るんだ。同じ様に精神干渉されていてもおかしくはない。


「なら、第1王子や第2王子を守る近衛兵もいるのですか?」

「ココはまだ習っていなかったね。王子殿下や王女殿下をお守りするのは騎士団なんだよ。近衛兵というのは出自も貴族と限られている。精鋭揃いなのだが見目も吟味されるんだ。だから少数なんだよ」


 なるほど。だから、第1王子と第2王子を解呪する時に近衛兵はいなかったのか。


「それよりキリシマ。今日の事をクリスティー先生に報告してくれるか?」

「お、んぐ、おう。分かったぞ」


 むせてるよ。自分は関係ないだろうと、お茶菓子のロールケーキに齧り付いていたからだよ。

 ほら、口の周りが生クリームでベトベトじゃねーか。ほら、拭いてやるよ。


「おう、ココ。わりーな」


 子供じゃん。俺の弟か?


「何言ってんだ! 俺の方が長く生きてるっての!」


 はいはい、早く報告しな。


「お、おう」


 そんな俺達をみて、エリアリア姉とアンジェリカ嬢がクスクスと笑っている。


「ココちゃんが大人に見えちゃうわ」

「本当に以心伝心なのね」


 いや、そんな良いもんじゃねーよ。こいつがずっと勝手に人の心を読んでいるんだ。


「それにしても、キリシマのその能力だ。もっと早く分かっていれば……」


 あ、じーちゃんそれは禁句だよ。


「まあ、思いつかなかったと言えばそうなのですが」

「まさか、あんなに広範囲で解呪できるとは……ドラゴンとは恐ろしいものだ」


 だから、それを踏まえて良い考えはないか? 頭脳担当のグスタフじーちゃんにディオシスじーちゃん、それにロディ兄だ。


「クリスティー先生が作ってくださる魔法陣は大聖堂にも必要でしょうか?」

「今のところはもう大丈夫なのだろう? ココ」

「はい。設置してあった、精神干渉の魔法陣は全部消しました。でも、またいつ設置されるか分からないと思います。だって相手が何をどうやって、魔法陣を設置したのか全く分かっていないのですから」

「ココの言う通りだね」


 本当に、一体誰がどうやって魔法陣を大聖堂に持ち込んだのか? 全く想像がつかない。

 そんな事を話している内に、キリシマがクリスティー先生に報告を終えた様だ。

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