第220話 大聖堂なのに
「あの……あなた方は?」
「ああ、辺境伯の家族です。王都に来たので挨拶に来ていたんだ」
「そうなのですか。教皇様はどうなるのでしょう?」
「寝かして差し上げてください。ココ」
「はい。今日1日は目が覚めないと思います。でも、大丈夫ですよ。貴方もふらつきませんか?」
「はい、私はもう大丈夫です」
良かった。霧島、有難う。
『何水臭い事言ってんだ。これしきどうって事ねーよ』
ハハハ、男前だな。
『あたぼうよ! 俺は頼りになるかっちょいいドラゴンだからな!』
ああ、それを言わなきゃいいのに。残念な奴だ。
『え、マジか?』
『マジよ』
隣の枢機卿はどうだ? まだ気を失ったままなのか?
じーちゃん達と隣の部屋へと移動する。
「あ、あの……一体何が?」
お付きの人に支えられてはいるが、枢機卿らしき人がソファーに移動しようとしていた。ゆっくりと深くソファーに座り、大きく息を吐いている。
「大丈夫ですか?」
「はい、一体何が? あなた方は?」
「私はディオシス・インペラートと申します」
「インペラート……辺境伯の……?」
「はい。私は前辺境伯の弟です。これは辺境伯の次男でロディシス、こっちは次女のココアリアです。貴方方は精神干渉を受けておられたのです」
「な、何……精神干渉ですか……!?」
「はい。まだふらつきますか? 先ほど、このココアリアが解呪したのです」
「まだ、少しふらつきますが……いや、頭はスッキリとしております」
「手遅れにならなくて良かったですよ」
「どうして、この様な……? 大聖堂でなんという事を……」
そうだな、気持ちは分かるぞ。まさか神聖な大聖堂で、精神干渉をされるなんて夢にも思わないだろう。じーちゃんが城と王都の一連の事を話して聞かせた。
そして、領地にいる司教様が連絡が取れないと心配されていると。
「城まで……何ということだ。そうなのですか……辺境伯様のご一家は魔法にも秀でておられるのですな」
「領地ではクリスティー殿に師事しております」
「なんと! あのエルフのクリスティー殿ですか!?」
「はい。代々お世話になっております」
「どこに居られるのかと思っておりましたが、辺境伯領に居られましたか!?」
「ハハハ。どうやら我が一家を気に入って下さっている様で」
また、クリスティー先生で驚かれたよ。やっぱ有名人なんだな。
「その、教皇様は?」
「同じ様に精神干渉をされておりました。しかし、それが深かったようです。今日1日は意識が戻らないだろうかと」
「そうですか……今まで何をしていたのか……頭の中に靄が掛かったようで……」
「精神干渉とはそのようなものらしいです」
「なんという事だ。大聖堂で精神干渉など、普通は出来る筈がない……どうして……!?」
枢機卿が自分の膝に肘をつき頭を抱えている。
何が切っ掛けだったのか、分からないよなぁ? しかも神聖な場である筈の大聖堂でだ。
「何か芝居でも見ているような感じだったのです。自分がしている事なのに、そうではないような……不思議な感覚でした。今はもうスッキリしております。有難うございます。しかし、他の者もその精神干渉をされていたのでしょうか?」
「他の皆様は軽かった様です。解呪は済んでおります。が、この大聖堂の至る所に精神干渉の魔法陣がありました」
「なんと……なんという事だ。大聖堂始まって以来の大失態です。私達は気付かなければならない立場だというのに……」
そんな事を言っても仕方がない。きっと敵は俺達よりも魔法に秀でている者なのだろう。
『ヒューマンは脆いからな。魔力量も多い方じゃない。ココみたいなのは特別だぜ』
そうなんだろうな。でも霧島がこんなに広範囲で解呪できると分かった。なら、城の解呪もそうすれば良いんじゃね? 楽勝じゃね?
「ココ、王都の人達もだ」
ああ、そうだった。王都の人達も解呪が必要な人達がいるんだ。大聖堂がこんな状態だったのだから、俺達が思っているより多いのかも知れない。
『ココ、クリスティー先生が魔法陣をくれるだろう。それをここにも設置すりゃあいいんだ』
『そっか。大聖堂で精神干渉に掛かった人達が多いでしょうしね」
『おうよ』
『キリシマ、偶には頭の良い事を言うのね』
『偶にはってなんだよー! 俺様は知性も高いドラゴンなんだぜ!』
ほら、また自分で言った。そこだよ、そこ。
『あ、そうか?』
『そうよ』
意外にも大聖堂で大規模な解呪をする事になったが、もう大丈夫そうだ。
『ココ、油断すんな。最後まで鑑定眼は使うんだぞ』
『ええ、分かったわ』
念のため、教皇と枢機卿の部屋を鑑定眼で確認し、帰りも大聖堂の中を鑑定眼で見て戻ってきた。だが、今日は大々的に解呪したからな。多分、敵にも勘付かれている事だろう。
この先どう出て来るのか。そりゃあ、黙ってはいないだろうな。
「ココォ! やっと戻ったか!」
父だ。今日はいるんだな。ガシィッと抱き締められ、背中をバシバシと叩かれる。相変わらず声がデカイ。そして、暑苦しい。
「アレクシス、大聖堂も解呪してきたんだ」
「なんとぉッ!?」
「ディオシス殿、別室で報告を頼みます」
またみんな揃って談話室だ。今日は姉のエリアリアとロディ兄の婚約者アンジェリカもいる。
それに、バルト兄の隣を陣取っているのは婚約者のキャリーナだ。全員集合だね。
面倒な気がする。
「お嬢、顔に出てるッス」
「そう?」
「はいぃ」
そりゃあ、仕方ない。だって面倒なんだもん。
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