第209話 報告
「そうだわ、ドラゴンもいるのでしょう?」
「まあ!」
「はい。ノワもドラゴンもココが保護して加護を授けてもらってます」
「もう、辺境伯一家ってなんでもありなのかしら? 想像もつかないわ」
「マリスティナ様、そういう領地なのです。ドラゴンは流石に出ませんが、魔物が出ます。こちらの物も魔物の糸から作った物です」
そうなんだよ。危険と隣り合わせなんだ。だから、みんな守りたくて鍛練するんだ。強くなるんだ。知恵を出すんだ。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「戻ってきたみたいッス」
隆がドアを開けると、メイドさんが立っていた。ああ、確かにうちのメイドのお姉さんだ。楽しそうに歌っていたのを覚えているぞ。あの時とはまるで印象が違う。流石だ。
「失礼致します。ロディ様」
「構わない。入って報告してくれ」
第2王子がそう言って部屋に入れる。
「で、追えたのか?」
「はい。部屋の前までは近衛兵がいたので行けませんでしたが、壁をすり抜けて入って行くのを確認しました」
近衛兵がいた。て、事は王か王妃の部屋だ。その手前と部屋の前には近衛兵が立っている。
「どっちだ?」
「王妃様のお部屋でした」
王妃かぁ……そうかぁ。まあ、予想通りというか……だな。
「兄さま……」
「ああ。父上とお祖父様に報告だ」
「はい」
「皆様、お渡しした下着やブラウス等を必ず身に付けて下さい。下着やリボンでしたら状態異常無効が、ドレスシャツやブラウスなら状態異常無効に加えて少しですが防御力もあります。必ず、忘れずに身に付けてください。私達は戻って父や祖父と相談致します」
「分かりましたわ」
「はい。今日から早速」
「ロディシス、頼んだよ。私は兄に報告しておこう」
「はい。皆様、どうか解呪したと気取られません様お気をつけ下さい」
そして、俺達はグスタフじーちゃんの邸に戻ってきた。
すると邸から賑やかな声がした。
「ワッハッハッハ! 俺様は万能だからな!」
ああ、奴だ。霧島だ。戻っているんだな。なら、父達もか。
「キリシマには驚かされたぞ! なんせ食ってしまうんだからな!」
じーちゃんだ。相変わらず声が大きい。
食べ物以外を食べてはいけません。普通はお腹を壊しますよ。
「戻っている様だね。丁度良い」
「はい、兄さま」
有力な手掛かりを掴んだからな。だが、どうするんだ? 俺達は近付けないぞ。
「ただいま戻りました」
「おお、ロディ! ココ!」
「ロディ、ココ、ご苦労だったね」
バルト兄だ。久しぶりじゃね? 何してたんだろう?
「俺も城にいたんだよ」
そうなのか? 会わなかったな。
「伯父様と一緒にいたんだ」
そうなんだ。そっか、母の兄も城勤めだった。え? 精神干渉は大丈夫なのか? ああ、例の下着を着けているか。
「で、ロディ。進展はあったのか?」
「はい、お祖父様」
ロディ兄が、今日の出来事を話して聞かせた。
第1王子妃と、第2王子の婚約者を解呪した事。
第2王子の婚約者が使った事のある部屋に魔法陣があった事。
そして、解呪した事で浮き出てきた黒いモヤモヤの後を追った事を説明した。
「何だとぉッ!?」
「とんでもない事だッ!」
「何から驚いて良いのか分からないな」
父、ユリシスじーちゃん、グスタフじーちゃんだ。テンションが違い過ぎる。
「王妃様の私室か……」
「お祖父様、入る事は無理ですか?」
「先に潜入したメイドが報告してきたが、陛下と王妃様の部屋にはベッドメイクでさえ入れないそうだ」
ああ、だからメイドのお姉さんは手にシーツを持っていたのか?
「お付きの侍女が全てしているそうだ」
「お祖父様、食事もですか?」
「ああ。今回メイドが最奥にまで潜入してくれたから分かった事だ。食事も侍女が給仕しているらしい」
「今まではそれさえも掴めなかったそうだ」
どうやってそんな最奥にまで潜入したんだろう。考えない事にしよう。我が家のメイドさん達はイケイケ……いや、有能だ。
「食事をされているという事はまだ安心と言えば安心なんだが」
バルト兄が言葉を選んでいる。今迄は生死さえ不明だったんだ。それを考えると、まあ安心なのか? だけど、あのモヤモヤが王妃の部屋に入って行ったんだ。
呪いや精神干渉をした本人がそこに居るという事だ。
「第1王子妃とご令嬢にも、ココが作ったもの一式をお渡ししてきました。しかし、婚約者のご令嬢まで精神干渉をされていました。城にいない人にも広がっている可能性があります」
あ、そうなんだよ。忘れてた。あの強烈な令嬢の事だ。
「お祖父さま、お城でハーレイ侯爵令嬢のオリヴィア・ハーレイ様とお会いしました。精神干渉されていたのです。ノワが解呪しましたが」
「ココ、それは本当か?」
「はい。無断で執務室のある区域にまで入っておられたのです」
「無断でなのか?」
「はい。本人も許可はもらっていないと言っていましたし、衛兵もそう話していました」
「ハァ〜、あの令嬢には困ったものだ」
ん? もしかして、グスタフじーちゃんはイジメの事を知っていたのか?
姉から聞いていたのかも。姉もあの令嬢には怒っているだろうし。
「ああ、エリアリアから何とかできないかと相談されて、私からハーレイ侯爵に文を書いた事がある」
ああ、やっぱり。それでも、直らなかったんだな。精神干渉されていたし。
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