第208話 追いかけっこ
「それにしては、セシリア様の精神干渉が弱くないですかぁ? セシリア様が1番軽かったのでしょうぅ?」
咲の言う通りだな。あれだけの魔法陣の上にいたのに、1番影響が少ないってどうしてだ?
もっと深く精神干渉されていても、おかしくはないぞ。
「もしかして、セシリア様は魔力が多い方ですか?」
「ロディ、そうなんだ。セシリアはエリアリア嬢の様な剣は駄目だが、魔法ならエリアリア嬢と引き分ける位なんだ」
おや、第2王子が自慢しているぞ。ちょっと可愛い。本当に仲が良いんだ。
本人はなんだ? て、顔をしているが。
「多分ですが、魔法に対する耐性も高いのでしょう。ですが、用心しないといけません。ココ、あれを」
「はい、兄さま」
またまた俺はドドンとブラからリボンまで一式を2人分出した。もちろん、亜空間からだ。
「えッ!? ココアリア様、まさか空間収納をお持ちですか?」
「はい。亜空間です」
「まあ! 素晴らしいですわ!」
「驚いたわ。初めて見たわ」
おや? セシリア嬢は魔法に興味があるのかな?
「マジックバッグもありますよ」
「「マジックバッグ!?」」
「マジックバッグだってッ!?」
え? 王子まで3人一緒に食いついた?
「ココ、だから内密という言葉を勉強しなさい」
え? 駄目だったか? もういいじゃん。今更だよ。
「セシリア様、興味がありますか?」
「ええ。でも私は魔力量が足らないのです。先ほど、魔力量が多いのかもと仰ってましたが、魔力量自体はそれほど多い訳ではないのです」
「そうなのか? しかし、エリアリア嬢と引き分けていたな?」
「はい。多分、魔力操作の方だと思います」
なるほど、使い方が上手なんだ。だって姉は力任せだから。セシリア嬢は魔力操作を勉強している内に耐性もついたのだろう。
姉は余計な魔力まで使うから燃費が悪いんだ。だから、剣に付与する位が丁度良い。
「ココも力任せなところはあるね」
「え? 兄さま、そうですか?」
「ロディ様、ココさまぁ、立ってないでお茶をどうぞぉ」
咲がお茶とお茶菓子を出してくれた。これはあれだね。フィナンシェだね。美味そうだ。
「はいぃ。とっても美味しいですよぅ」
て、何で知っているんだよ! 食べたのかよ!
その頃、隆は黒いモヤモヤを追っていた。
第2王子の部屋を出て廊下を進む。真っしぐらに何処かを目指している。城の奥へと進むモヤモヤを追いかけていた。
途中の渡り廊下では、フワフワと先に行かれ見逃すかと思われた。その時、黒いモヤモヤが行った先からメイドとして潜入しているお姉さんが顔を出した。
サムズアップして任せろと言っている様だ。それでも隆は走って追いかける。ノワは関係なく先を走る。尻尾をピョンと立てて飛ぶ様に走っていく。
隆はメイドのお姉さんが居たであろう部屋を目指す。
すると、お姉さんはその部屋を出て走る。メイド服の裾を翻し、廊下を一直線に足音もたてずに走って追いかけていた。
それを追いかける様に隆とノワも走る。
長い階段に出た。そのまま垂直に黒いモヤモヤは上がっていく。こっちはそんな訳には行かない。ここで見逃してしまうのか?
すると階段の上からヒョコッと別のメイドさんが顔を出した。そして手に持った羽ハタキをフリフリしながらモヤモヤを追いかけて行く。掃除中だったのか?
隆は階段を駆け上がりまだ追いかける。前を走るメイドさんを追いかけて走る。ノワはとっくにメイドさんに追いついている。
だが、走った先に近衛兵がいた。そこから先は王族の私室だ。これ以上は進めない。ノワも入れない。メイドさんに抱っこされ止められた。
ここまでかと、諦めかけた時だ。
近衛兵が立つ先の部屋からまた別のメイドさんがヒョコッと顔を出した。
ハイッ、任せて! と言わんばかりに手を挙げ、また黒いモヤモヤを追いかけて行った。手には綺麗に折り畳まれたシーツらしき物を抱えている。何をしていたんだ? シーツ交換でもする途中だったのか?
うちのメイドさん達は一体どこまで潜入しているんだろう? 知るのが怖くなってきた。
追いかけていた、隆とノワが戻ってきた。
「で? そのメイドが知らせてくれるのか?」
「はいッス。第2王子殿下の執務室で、ロディ様が報告を待っていると伝えてあります」
「辺境伯の手の者ですの?」
「はい。私共のメイドです」
「まあ! 本当にメイドなのね!?」
「辺境伯のメイドさんや、従者の方は一体どれだけの能力をお持ちなのでしょう」
マリスティナ様やセシリア嬢が不思議そうだ。だってうちはみんな鍛練するからな。それだけじゃない。魔法だって皆そこそこ使えるんだぜ。
「サキも強いのでしょう?」
「この2人、サキとリュウは姉弟なのですが、うちで1番オールマイティです」
「まあ!」
「歌も歌えるのでしょう? 凄いわね」
おいおい。そんな話までしていたのかよ。
確かに、咲と隆はなんでもできる。歌だってプロ顔負けだ。
「このリボンもこちらに来る途中でココと3人で編んだものです」
「そんな事まで……」
クリスティナ様がリボンを手に染み染みと言った。
「このリボン、とっても素敵」
「そうですわね、光沢といい、質感といい。王都でも売っていませんね」
そうだろう、そうだろう。もっと褒めてくれても良いんだよ。
俺達の自信作だ。あの糸で編んであるから状態異常無効もあるぞ。
「素晴らしいわ。イザークス殿下が自慢されていたのも分かるわね」
イザークス殿下、内密にと言っていたのに自慢していたんだ。その気持ちも分かるけど。
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