第4話 説明

 凄くドキドキした、初めて自分の意思を口に出した。

皆が当たり前にやってることなのがこんなに難しいとは。

立ち上がり、手を握り締め声のする方を力いっぱい見つめていた。


「っと忘れてた、これからお前を送る世界の話をしよう」


 それは確かに聞いておきたい。

治安が悪かったらどうしよう、怖い人がいたらどうしよう。


「分かりました、お願いします。」


「うむ、まずは魔法がある。」


 え、魔法があるの。

友達がやっていたゲームみたいな感じで僕も魔法が使えるのかな。


「後はお前の世界と一緒だ。」


 どういうことだろう。日本みたいな所ってこと?


「少しおおざっぱだったな、悪いことをしたら捕まるし死刑もある。良いことをしたら周りから誉められるし評価もされる。

場所によっては人種差別や戦争もある。

宗教もあれば病院や学校もある。

 何が言いたいかと言うと、世界観が違っても人の本質は同じと言うことだ。」


 人の本質か。

僕はその本質がよく分からない。

でもこの人の話だと世界が違っても考え方は変わらないんだな。

僕でもやって行けるのだろうか。


「だからお前から動かないと何も変わらない。

待っているだけじゃダメだ。

何かを成すには自ら行動するしかない。」


 また俯いてしまった。

僕が一番苦手な事じゃないか。

でも、この人の言ってることは正しいのだと思う。


「そう落ち込むな。少しづつ歩んで行けば良い。

さて、お前に問うことがある。

 別の世界に送る前に我が新しい名付けをする決まりでな、悪いが従って貰う。」


 この人もそう言ってくれてるから僕は僕なりに歩んでいこう。

前の世界で受け身で何も出来なかった僕は次の世界ではそうなりたくない。


 名前か。前の名前は嫌いだった父が怒号のように呼ぶから、反射で誰に呼ばれても手が震えてしまう。

良い名前をくれるといいな。


 

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