第51話 解放と経過
「此れで貴方の罪は清算されました。 この一年間、お疲れ様でした」
そう言って時の女神である彼女は、俺に微笑んだ。
「別に只雑用をこなしただけだ。 だから、そんな大げさに労わらなくてもいい」
「…いえ、此れは私が少しでも罪悪感を無くす為です。 貴方に世界を元に戻す対価として、魔力とこの大事な一年間を奪ってしまいましたから」
俺はその言葉に、思わず笑ってしまう。
「別にどちらも大して気にしてない。 …元々俺には、人を傷つける力なんて無かった方が良かったんだ」
俺が自分を守る為に力を求めたのが原因で、あんな惨状を巻き起こしたんだ。
「まあ、元の世界に戻ります。 今まで有難うございました」
「…ええ、お元気で」
瞼を開く。
そこは、草木や夏の野花が咲いた自然豊かな場所だった。 昼の眩しい太陽がそれらと俺を暑い日差しで照らし、思わずそこから離れようと空間魔法を使おうとする。
「…そうだった、もう使えないんだ」
俺は数十秒同じ道を歩き、その鬱蒼とした茂みから出る。 すると、目の前には自販機があった。
というか、学園の中庭のど真ん中だった。
「此処って、王国一の学園だけあって中庭も中々に大きいんだよな」
俺は思わず、久しぶりの学園に対してそんな感想を零しながら歩く。 中庭を出て、直接繋がっている学園の廊下を渡る。
「しかし、一年で内装も大分変ったな」
「……あれって、半年前の制服?」
廊下には目に見える範囲だけで数体のお掃除ロボットが駆け巡っており、既に俺以外の生徒は新しい制服にバージョンアップしたようだ。
「…取り敢えず、師匠に帰ったことを伝えよう」
「まさか魔法が失敗して一年間失踪するとは……トウカさん達の口添えが無ければ学園を退学になっていたかもしれませんでしたよ」
「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
俺は彼に腰を大きく曲げて、深く謝罪した。 如何やら、俺は魔法が失敗して一年間の失踪&魔力の消失をしてしまったという設定らしい。
「…正直、貴方をこの学園のEクラスに残すのでさえ大変でしたよ。 君が最後に残した空間魔法への深い理解を示した論文、それがなければ直ぐに排斥されていたでしょう」
『魔力は無いが、彼には魔法などの研究者として深い知識がある』 最後にはそう判断されて、温情としてEクラスでの在籍を許されたらしい。
「…ともかく、無事に帰って来て良かった。 顔の憑きものも落ちたみたいですしね」
「憑き物?」
「ええ、スッキリした顔をしていますよ」
確かに、俺は本当の自分の願いに気づいてから気持ちが少し晴れたかもしれない。
「…俺、夢を見つけましたから」
「……そうですか、頑張ってください」
魔力も無くなって空間魔法も使えなくなってしまったけど、何時かトウカを守れるような新しい力を手に入れる。
…そして、彼女の口から言わせてやるんだ。
『
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