第48話 思い出と決戦


 私は気分転換の為に海の上を飛んでいると、何故か無人島の上に一人の子供が座っていた。


 「君はこんな所で何をしているのかな?」


 「…飛行中に魔力が切れて落ちた」


 「フッ…」


 私は思わず、小さい頃の自分を思い出して笑ってしまった。


 「笑うなよ爺さん!」


 「すまんのう。お詫びと言っては何だが、君に飛行魔法よりももっと凄い魔法を教えよう」



 「──もう、こんな風に落ちることが無くなる魔法を」


 私がアツヤの師匠になる事を決めたのは、小さい頃の自分と似ていたという小さな事が切っ掛けだった。 今まで弟子を取る事が無かった私が、聞いた人が鼻で笑うような、そんな馬鹿げた理由でアツヤを弟子に取った。


 …まさか、授けた力がこんな形で使われるとは思っていなかったが、私は彼の師匠になったことを後悔していない。


 だからこそ、彼の蛮行を師匠の私が止めなけ────






 「御免なさい、師匠」


 俺は体から溢れだす黄金の炎を抑え、全てが無くなった無人島の上で転移魔法を発動した。








 「漸く帰って来たか魔王!」


 そこには胸を貫かれて倒れているゼルファ、全身傷だらけで片腕まで折られてしまっている剣神の姿があった。


 「……ゼルファは死んだのか」


 俺は彼女の死体を見ながら、何も言わずに神速のスピードで此方に迫りくる剣神に向かって先ほど出したばかりの炎をもう一度出す。


 「原初の大火インフェルノ


 「────」


 俺は彼を倒れているゼルファごと火で覆う。 それは先ほどと同じく、生命だけを元ある場所に還した。






 それから数時間、俺は同じ様に此処へ向かってきた軍勢を殺した。


 「アツヤ、止めに来たよ!」


 すると、漸く彼らが現れた。 暫く見なかった裏切り者の四天王達を連れて。


 「悪いな、アツヤ」


 「魔王様に言われました、貴方を止めてほしいと…」


 「別に最初から裏切る事は分かっていた、問題ない」


 魔族の四天王、残りの二人であったオーガスとアイゼルがそう言って人類の側に立つ。


 「聖女であるソフィアは勿論、メイベルとアレックスも来たのか」


 そこには迷いを隠しきれていない表情のメイベルと、覚悟を決めた様子の二人。 それと、後ろには数えきれない程の人間。


 「一番大事な人を忘れてない?」


 最後に、そう言って彼女は、俺の幼馴染であるトウカは此方の目元を力強い目付きで睨みつけていた。


 「…はっきり言って、お前以外眼中に無いよ」

 

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