第46話 欲望と犠牲
「魔王様の魔法凄いね! あっという間に人類が壊滅間近だよ!」
「……そうだな、もう少しで全てが終わる…トウカ」
幼女の様な小さな姿をした魔族、ゼルファが各地の映像を魔王城に設置されたモニターで見ながらはしゃぐ。 王国や帝国は勿論、他の大国や近隣諸国も全てが戦火に包まれていく。
……此れで、俺達の戦いも遂に終わるんだな、トウカ。
俺はその場を少し離れ、城内の長い廊下を歩きだす。 その最中、横に並んで着いてくるアイゼルが口を開く。
「……魔王様は何故、そこまで彼女のことをお気になさるのですか?」
先ほどの小さな呟きを聞いていたらしい。 彼女は此方に目線を移し、俺の顔から心情を読み取ろうと静かにその黄色い瞳で此方をジッと見つめていた。
「……そうだな、最初は只の幼馴染だった。 だが、それが段々と俺の目的を邪魔する宿敵となり、何時しかその目標が段々と奴を倒すことに変わっていった」
「ちなみに、最初の目標とは何だったのですか?」
思ったよりも、遠慮なく言いたくない部分を聞いてくるな。 ……まあ、どうせ全てが終わるのだし、打ち明けるとしよう。
「…もう分かっているだろうが、俺は前世の記憶を持っている。 所謂、転生者という奴だ」
「…ええ、存じています」
まあ此奴は四天王だ。 魔王が転生者しか成れない事を知っていない方が不自然なぐらいだ。
「そんな俺の前世だが、普通の中学生だった。 少しばかり承認欲求に飢えていた普通の人間」
「……」
「その最初の目標は、俺が前世では満たせなかった下らない承認欲求を埋める事。 …ガキだったあの時の俺は、それを新たな世界で生きる支えとしていた」
「…成程、辛かったんですね」
…確かにあの時は不安だらけだったな。
「…そんなことは無いさ。 それに、今の俺の心は歓喜で満ちている」
…だってアイツのことを考えると、自然に口角が上がって笑顔になる。 俺はきっと今の様な展開を待ち望んでいたのだろう。
「…俺は満ちている、今までに感じたことのない程に…」
「ねぇ、目を開けてよッ!」
目の前の二人、並べられて瞼を閉じた級友に対して声を掛ける。 僕は冷たくなった彼らの手を握って叫ぶ。
「如何してこんなことに…アツヤぁ!」
目がぼやけて二人の姿がはっきり見えないや。 速く目を覚ましてよ、アスタ! カテリーナぁ!
「御免なさい……私が二人の近くに居ながら守ることが出来ずに……」
「…分からねぇ、如何しちまったんだアツヤ」
昨日までは一緒に居たのに、二人と食事もしたし授業だって受けたッ! なのに何で、急に動かなくなって!
「ねぇ…早く起きてよ…皆でアツヤを止めにいこうぉ?」
何でこんなことするの? 大事なクラスメイトや学園、友達までも滅茶苦茶にして…。
「こんなのって…あんまりだよぉ…」
…もう、嫌だよぉアツヤぁ。
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